ツークツワンクとは? わかりやすく解説

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ツークツワンク

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/21 16:00 UTC 版)

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ツークツワンク(Zugzwang)とは、主にチェスにおいて相手から直接の狙いはないにも関わらず、自ら状況が悪化する手を指さざるを得ない状況のことを言う。言い換えると「可能ならパスしたい(しかしルールにより禁じられている)局面」である。「強制被動」と訳されることもある。

本来チェス用語であるが、後にゲーム理論の用語ともなった。ゲーム理論の用語としては、「自分が手番であることでゲーム結果が悪化する」場合のみを指す。チェスではさらに「自分が手番であることで負けが早くなる」場合も含むことも多い。その他、実際の戦争や経済闘争において「動きたくないが動かざるを得ない状況」を指して比喩的に使われることもある。

原義

  • ツークツワンク(Zugzwang)とは、 ドイツ語で「動きの強制」「差し迫った状況」を意味する。
  • 国際音声記号では「[ˈtsuːktsvaŋ]」となる。原音に近くなるように、「ツークツヴァンク」と書かれる場合もある。

基本

ツークツワンクを理解するには、まず「手番」つまり「現在白・黒どちらの番か?」という事を念頭に置かなければならない。また、「どんな局面でも先手の方が有利」という考えも改める必要がある。

チェスの局面の大多数を占めるのは、手番であることが有利な局面(下表のAタイプ)である。チェスは先にチェックメイトした側が勝ちなので、通常は「先手が不利」という状況は考えにくい。

ところが終盤戦では、BタイプやCタイプが発生する事がある。BとCを合わせて「ツークツワンク」と呼び、Cタイプを特に「相互ツークツワンク」と呼ぶ。中盤でのツークツワンクの例もある(後述)が、盤上に駒が多いと手待ちの可能性が増えるため、非常にまれなケースとなっている。

  手番と状況 チェス用語 [1]
Aタイプ 白黒双方とも、手番であることが有利になる (特にない。チェスの局面のほとんどがこれ。)
Bタイプ 一方だけが、手番であることで不利になる(他方は手待ちができる) ツークツワンク
Cタイプ 白黒双方とも、手番であることで不利になる(どちらも手待ちができない) 相互(両)ツークツワンク

一方だけのツークツワンク

図1
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55
44
33
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abcdefgh
黒負け。

図1において黒番なら1...Kg8またはKh8とキングを動かすしかなく、2.Kxg6で基本的な白勝ちの形になる。ただし黒はもしパスできるなら負けない。つまり、黒はツークツワンクの状態になっている。

白番なら1.Kf7と手待ちをすることでほぼ同じ状況を保つことができ、やはり1...Kh8 2.Kxg6で白勝ち。白はツークツワンクではない。

相互ツークツワンク

相互ツークツワンク1
abcdefgh
8
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66
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33
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abcdefgh
白番ならドロー、黒番なら黒負け。
相互ツークツワンク2
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8
8
77
66
55
44
33
22
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abcdefgh
白番ならドロー、黒番なら黒負け。
相互ツークツワンク3
abcdefgh
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66
55
44
33
22
11
abcdefgh
白番なら白負け、黒番なら黒負け。
  • 相互ツークツワンクとは、白黒ともに有効な手待ちがなく、ツークツワンクの状態になっていることを言う。英語では「reciprocal zugzwang」または「mutual zugzwang」と言う。
  • 相互ツークツワンクでは、その局面の「手番」でゲームの結果(ドローも含む)が左右される。下記のようなポーン・エンディングで登場する事が多い。

下記以外にも変化手順はあるが、本稿はエンドゲーム(終盤戦)の解説ではない。ここではメインラインだけを紹介する。

相互1:
白番:
1.Ke6 ドロー(ステイルメイト
黒番:
1...Kf7 2.Kd7 以下、ポーンをプロモーションさせて白勝ち。
相互2:
白番:
1.Kd5 Kd7 2.c5 Kc7 3.c6 Kc8! 4.Kd6 Kd8! ドロー
黒番:
1...Kd7 2.Kb6 Kc8 3.Kc6 Kd8  以下、4.c5でも4.Kb7でも白勝ち。
相互3:
白番:
1.Kf6 Kxe4 黒勝ち
黒番:
1...Ke3 2.Kxe5 白勝ち

中盤でのツークツワンク

中盤でのツークツワンクも、まったく存在しないわけではない。しかし非常に起こりにくく、また起こった場合は複雑な局面になる。下図は「Alexander Alekhine vs Aron Nimzowitsch, San Remo 1930」のゲームより。

図2
abcdefgh
8
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55
44
33
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11
abcdefgh
 現在白番
図3
abcdefgh
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8
77
66
55
44
33
22
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abcdefgh
 4.h4! で ツークツワンクに

図2から、

1.Ba4! b5 2.Bxb5 Ke8 3.Ba4 Kd8 4.h4! (図3

c6の黒ナイトに白の攻撃が集中。また、c7のルークもd7のクイーンも間接的に狙われている。それでも黒は必死に防御していた。しかし図3では、どの駒を黒が動かしても状況は悪化してしまう。最後の頼みはキングサイドのポーンだったが、それも封じられている。黒はここでリザインした。

さらにゆるやかな用法

以上のように、相手から直接の狙いがない(つまりパスが可能なら負けない)ことがツークツワンクの条件であるが、さらにゆるやかな用法として、相手に狙いがあっても、手番であることで負けが早くなる場合にも使われることがある。

注釈

[脚注の使い方]
  1. ^ Bタイプを「squeeze」、Cタイプだけを「zugzwang」と呼ぶ著者もいる。

関連項目

  • 手待ち
  • セキ (囲碁)囲碁における手を出した側が損をする石の形態。ただし、セキは部分的な問題でゲームの勝敗に直接関わるものではない。終局後はセキの部分は計算しない。
  • 取らず三目:同じく囲碁において手を出した側が損をする石の形態。古いルール(日本棋院囲碁規約)では双方が着手した場合の平均得点とされた。現在のルール(日本囲碁規約)では終局してしまうとセキと扱われるため、打てばセキよりは得点が高くなる側が終局までに着手するようになった。

参考文献

  • 「Winning Chess Strategies」 Yasser Seirawan著 ISBN 1857443853
  • Ward, Chris (1996), Endgame Play, Batsford, pp. 98–102, ISBN 978-0-7134-7920-1 
  • Kaufman, Larry (September 2009), “Middlegame Zugzwang and a Previously Unknown Bobby Fischer Game”, Chess Life 2009 (9): 35–37 



ツークツワンク

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/27 04:38 UTC 版)

Fate/Apocrypha」の記事における「ツークツワンク」の解説

ユグドミレニアに属するダーニック直隷暗殺者部隊聖杯大戦外部からの介入捜査し場合によってはそれの排除役割とする。エインスカヤという魔術師家系連なる魔術師10人で構成され一つ魔術回路を、司令塔となる「王(キング)」と呼ばれる人物と、それ以外の「ポーン」と呼ばれる9人の魔術師分割して所持している。個人魔術師としての力量高くないが、その戦歴から戦闘技術は高い。玲暗殺決行するものの黒のアサシンによって尽く返り討ちにあい、唯一残った「王」も玲奇策によって殺害された。

※この「ツークツワンク」の解説は、「Fate/Apocrypha」の解説の一部です。
「ツークツワンク」を含む「Fate/Apocrypha」の記事については、「Fate/Apocrypha」の概要を参照ください。

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