スミートンの改良したニューコメン機関
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 23:52 UTC 版)
「トーマス・ニューコメン」の記事における「スミートンの改良したニューコメン機関」の解説
優秀な技術者であったジョン・スミーの生家は、コウリーが機関を建造運転したオースソープの近郊にあった。ニューコメン機関を見て育った彼は、その後、土木工学、機械工学の広い分野で活躍し、水車や風車の大幅な性能改善などを行った。 ニューコメン機関についても、イングランド各地で稼動していた機関の寸法や性能を調査し、また自らもオースソープの自宅近くに実験用模型機関を建造するなどして実験し、機関の寸法と出力の関係、最適な寸法比等を系統的に調べ、その結果を詳細な表にまとめた 。 彼はそれをもとに、1772年にノーサンバーランド州ニューカースル近郊のロング・ベントン (Long Benton) 炭鉱に巨大な機関を建造し、1775年にコーンウォール州チェイス・ウォーター (Chase Water) 鉱山にさらに巨大な機関を建造した。後者の機関を図に示す。 この機関は、性能および大きさの点で最大のニューコメン機関であり、シリンダ径72インチ(1.83m)、行程長9フィート(2.74m)で、毎分9行程で動作した。ビーム長さは27.3フィート(8.33m)であった。ポンプは、直径16.75インチ(0.425m)でリフト102フィート(31.1m)のものを直列3段に用いて、306フィート(93.3m)の深さの立坑から毎分123.9立法フィート(3.51 m3)の水を排出した。補助ポンプ駆動分も含めて、ピストンにかかる荷重は31140lb(14130 kg)であり、動力は76.5HPであった。ボイラは同じサイズのものを3缶並列に用いていた。 機関建屋は36フィート(11m)×20フィート(6.1m)で、ビームの支柱壁(下部厚さ10インチ、上部厚さ5インチ)を含めて、すべての壁面は花崗岩ブロックを用いて作られていた。彼は、ピストンの下面を木で覆って放熱を防いだり、冷水噴射量の精密な制御を行い、部分負荷性能向上も含めて、ありとあらゆる改良を行った。 スミートンをはじめ、多くの発明家や科学者がニューコメン機関を改良し建造したが、ジェームズ・ワットが1769年に分離凝縮器の改良を行うまで、原理的な変更は行われず、基本的な部分は当初のニューコメンのアイデアのまま3/4世紀間使われ続けた。
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