ストロンチウム光格子時計
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/07 05:33 UTC 版)
「原子時計」の記事における「ストロンチウム光格子時計」の解説
レーザー光の干渉定在波によって作られた光格子の中に、ストロンチウム原子約100万個をラム・ディッケ束縛により閉じこめる(原子間相互作用を排除することにより、単一原子時計100万台と等価)。光格子に閉じ込めるために原子を数μKまでレーザー冷却する。ラム・ディッケ束縛によりドップラーシフトおよび反跳シフトの影響を排除できる。さらに、光格子を構成するレーザーの波長を適切に選定する(魔法波長(~800 nm)あるいは魔法周波数(~375 THz)と称する)ことにより、ストロンチウム原子の時計遷移の基底状態および励起状態における光格子レーザーに起因するエネルギー準位のシフト(光シフトと称する。その量は時計遷移の基底状態、励起状態の両者において、光格子レーザー周波数 320〜420 THz に対し遷移周波数換算 −100〜−200 kHz 程度)の差をほぼゼロとすることが出来るため、光シフトの影響が極めて少ない(魔法周波数を9桁の精度で決めてプロトコルとして共有し、18桁の計時精度を実現する)。2001年東京大学の香取秀俊(2011より理化学研究所主任研究員兼務)によって提唱され、2003年に基礎実験に成功し、2005年に開発に成功した。セシウム原子時計を超える原子時計として期待されている。「周波数コム」(光周波数コム。レーザー光を利用して光の周波数を精密に測定する仕組み)を使い、より高い周波数(マイクロ波ではなく光波)の使用により安定度を上げる。 理論的にはセシウム原子時計の1000倍の「300億年に1秒」の精度がある。2009年現在16桁の精度が実現している(429228004229873.7 Hz)。2006年10月の国際度量衡委員会で、「秒」の二次表現(秒の新しい定義の候補)として採択された。 2013年、香取はストロンチウム原子分光(中空フォトニック結晶ファイバ中)に成功した。共鳴周波数幅は 7.8 kHz であった。 2015年2月、香取、高本将男らは、ストロンチウム光格子時計2台を比較することにより、10−18前半の精度を確認したと発表した。
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