スター活性
スター活性
至適でない条件下において、制限酵素の基質特異性が変化したり特異性がゆるんだりすることがある。この変化した特異性における反応性をスター活性(star activity)と呼ぶ。「スター」の由来は文献12。
スター活性を誘起する条件
高いグリセロール濃度
5%(v/v)以上のグリセロール濃度によってスター活性が誘起されることがある。 制限酵素の保存溶液は、凍結、変性、凝集を防ぐためにかなり高濃度(50%)のグリセロール溶液である。そのため、反応液量は制限酵素原液の10倍以上であることが望ましい。
高濃度の制限酵素
低いイオン強度
高いpH
有機溶媒の存在
Mgイオンでない金属イオン
(制限酵素に付属するバッファーの場合は問題ない。) TypeIIの制限酵素は切断反応の補因子としてMgイオンが必要だが、Mgイオン以外の金属イオン(Mn2+, Cu2+, Co2+, Zn2+)が配位した場合にスター活性が誘起されることがある。
スター活性を防ぐには
制限酵素付属のバッファーを使う場合
自作バッファーを使う場合
References
- Alteration of the specificity of restriction endonucleases in the presence of organic solvents.
Malyguine E, Vannier P, Yot P
Gene8p163-77(1980 Jan)

CC Attribution-Noncommercial-Share Alike 3.0 Unported
スター活性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/02/22 08:17 UTC 版)
スター活性(英: star activity)とは、制限酵素によるDNAの切断反応において、反応条件が至適でない場合に酵素本来の特異的部位以外でDNAを切断する活性のことである。「スター」とはアスタリスクのことで、初めてこの種の活性を報告したPoliskyらが、EcoRIの特異性が緩んだ活性をEcoRI*と表記したことに由来している[1]。
EcoRI 5'---G AATTC---3' 3'---CTTAA G---5' |
EcoRI* 5'---N AATTN---3' 3'---NTTAA N---5' |
スター活性の要因としては低イオン強度(25 mM以下)、高pH(8.0以上)、酵素が基質DNAに対して過剰(DNA 1 µgあたり100U以上)、Mg2+以外の2価カチオンの存在、エタノールなどの有機溶媒の存在、そしてグリセロール濃度が高い(5%以上)ことなどが挙げられる[2]。制限酵素は通常50%グリセロールを含む溶液として販売されているため、実用上問題となるのはグリセロール濃度であることが多い。特に複数の制限酵素を同時に作用させる場合に問題となりやすい。
スター活性の現れやすさは制限酵素によって様々であり、ApaI、DpnI、NdeIのように現れにくいものや、BamHI、EcoRI、PstIのように現れやすいものがある[2]。遺伝子改変により野生型酵素と比べてスター活性を低減した制限酵素も上市されている。
参考文献
- ^ Polisky, B. et al. (1975). “Specificity of substrate recognition by the EcoRI restriction endonuclease”. PNAS 72 (9): 3310-3314 .
- ^ a b Wei, H. et al. (2008). “The Fidelity Index provides a systematic quantitation of star activity of DNA restriction endonucleases”. Nucleic Acids Res. 36 (9): e50 .
スター活性と同じ種類の言葉
スターに関連する言葉 | スター(すたー、スタ) スター活性 スター級 |
- スター活性のページへのリンク