シェルスーツ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/12 07:32 UTC 版)
生地に防水性の布地を用い、身体に対し比較的ルーズフィットに仕立てたスーツである。生地自体の保温性はほとんどなく、別途スキーウェア状のインナーウェアを着用して必要な保温性を確保する。インナーウェアの選択次第で、アイスダイビング等の極寒環境から、水温が高い場合まで対応できる。ルーズフィットのため、水中での運動性はネオプレンスーツと比較するとやや劣ると言う説もあるが、陸上での運動性は一般に優れる。また、生地の伸縮性は必須ではないため、強度や耐久性に優れた素材を使用でき、さらに水圧による保温性や浮力の変化がない利点がある。ネオプレンスーツとの最大の違いは、重量と容積である。価格はネオプレンとさほど変わらず、むしろ流通量が少ない分、メーカー在庫等も少なく、納期に時間がかかる場合がある。 また、この保温用インナーウェアは、ドライスーツ専用の製品だけでなく、日常にある普段着から選ぶこともできる。その場合、一般的には、着用時に密封によってスーツと体表の間の空間の湿度が100%となるため、汗を吸わないポリエステルのフリースやウールのセーター、吸湿速乾性に優れる各種化学繊維で作られたスポーツウェアの長袖シャツや長タイツ等を複数枚重ね着することが推奨されている。汗を吸収する綿衣類を中心にインナーウェアを準備した場合、綿が汗を吸うことによって薄手のスーツを通じて海中の低温が容易に体表に届いてしまうようになるため、保温効果に劣るとされるからだが、各人の好みによってはこの限りではない。加えて、これらのインナーウェアは、フードやボタン、クリップ、ジッパー、留め金などの潜水時にスーツ内で破損の原因に成り得る装飾がないものが望ましい。 ネオプレンスーツ、シェルスーツそれぞれの利点を活かした、ネオプレンスーツの下半身と、シェルスーツの上半身を組み合わせた製品もある(現在では無い)。日本では、スクーバダイビング用としてはネオプレンスーツが圧倒的に多く使われているが、欧米、特に米国ではシェルスーツが使用される場合も多い。スクーバダイビング以外の用途には、ネオプレンスーツが使われる場合とシェルスーツが使われる場合がある。例えばサーフィンではネオプレンスーツが主として使われ、セーリングや水上オートバイ、ウェイクボード、水面レスキュー活動などではシェルスーツが使われる場合が多い。水上での活動に使われる場合、水圧の影響がないため潜水用スーツよりも簡易な構造で十分な浸水防止が可能であり、潜水用としてはセミドライスーツとして扱われる程度の構造のものもドライスーツとして扱われている。
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