サゴヤシ栽培
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/06 05:09 UTC 版)
東南アジア諸国は、降水量、降水の分布、土壌、地形などにより佐々木高明によると8つ、高谷好市によると7つの耕作区に分かれる。これはデンプン質源となる作物が、陸稲、水稲、水田、サゴヤシ、雑穀、イモなど、どの農法・作物に依存しているかによった分類である。 ブルネイの位置するボルネオ島の約半分の土地はセレベス島やモルッカ諸島と併せて「サゴ区」に分類されている。これは炭水化物摂取量のうち、サゴヤシ Metroxylon sago の占める割合が数割に達していることを意味する。 サゴヤシは、例えば日本の南部で見られる裸子植物のソテツに外見が類似し、同様に幹からデンプンが採取できるが、被子植物のヤシ科の植物である。植えてから16年、条件の良い場合は10年経過すると開花と結実に備えて、直径60cm、高さ15mの「幹」を形成し、ここにほぼ100%のデンプンを大量に蓄え、このすべてを繁殖につぎ込み、種子を残して枯死する。これを開花前のデンプン量が最大になった時点で伐採し、地域によっても異なるが長さ60cmごとに切断する。幹の「皮」は数cmしかなく、内部は繊維質によって保持されたデンプン質の髄からなる。これを手斧でほぐしながら水で洗い流し、網などを通して繊維質を取り除き、最後に沈殿させる。このようにして1本あたり、水を含んだ重量ではあるが150kgものデンプン質が得られる。 サゴヤシ農法の利点は、作業手順を見れば分かる通り、最も労働力がかからずに大量のデンプンを生産できる農法であるとされていることである。泥炭土壌で栽培でき、栽培によって土壌が劣化することもない。熱帯雨林沿岸部に最も適した作物だと言える。ソテツなどとは異なり、組織に毒性のある物質も含まれていないため執拗に水さらしをせずにすむ。 サゴヤシの問題点は、ほぼ100%のデンプン質しか得られないことであり、米のように良質のアミノ酸組成のタンパク質を含まず、味も淡白であるため、それを補う副食を必要とする。その一方で、デンプン採取に使う水に由来するといわれるがサゴデンプンには鉄分が多く含まれ、これを主食とする住民には鉄欠乏性の貧血が少ないことも報告されている。
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