ゴルトンの理論
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1860年代から1870年代にかけて、フランシス・ゴルトンは従兄弟のチャールズ・ダーウィンの『種の起源』におけるヒトと動物の進化に関する新たな理論と、アドルフ・ケトレーの「社会物理学」から影響を受け、統計学的アプローチに基づき、進化論を独自に解釈した。ゴルトンは“自然選択のメカニズムはいかにして人間の文明によって潜在的に妨げられているか”という文脈において、ダーウィンの研究を解釈し、「多くの人間社会は経済的に恵まれない人々と弱者の保護に努めてきた。それゆえにそれらの社会は、弱者をこの世から廃絶するはずの自然選択と齟齬を来してきた」と論じた。 ゴルトンは、これらの社会政策を変えることによってのみ、社会は「月並みな状態への逆戻り」(統計学において彼が最初に作った造語である)から救出することが可能であると考えた。この語は、現在では一般に「平均への回帰」という用語に置き換わっている。ゴルトンは、1865年の論文「遺伝・才能・性格」において、初めて自説を開陳し、1869年の『遺伝的天才』において、「天才」と「才能」は人間において遺伝するとした。また、「人間は動物に対して様々な形質を際立たせるために人為選択の手段を用いることが可能であり、そのようなモデルを人間に対して応用するなら、同様の結果を期待することが出来る」として、次のように述べた。 人間の生まれつきの才能は、あらゆる生物界の形質と身体的特徴がそうであるのと全く同じ制約を受けて、遺伝によってもたらされる。こうした様々な制約にも拘らず、注意深い選択交配により、速く走ったり何か他の特別の才能を持つ犬や馬を永続的に繁殖させることが現実には簡単に行われている。従って、数世代に亘って賢明な結婚を重ねることで、人類についても高い才能を作り出しうることは疑いない。--ゴルトン『遺伝的天才』1869年、序文 ゴルトンは、社会は既に知的に劣った者の出生率が知性に優れた者に勝る状態(すなわちダーウィンの用語で言うところの「カタストロフィー」の状態)にあるとして、逆淘汰の状況に進んでいると主張した。ゴルトン自身は如何なる形での選別方法も提示することはなかったが、もし人々が子孫を残すことの重大性を認識することで社会的規範が多少なりとも変わるならば、いつの日にか解決方法が見つかるであろう、と願った。
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