コペルニクスの実体論的方法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 15:58 UTC 版)
「ニコラウス・コペルニクス」の記事における「コペルニクスの実体論的方法」の解説
板倉はコペルニクスが矛盾を客観的に認めて、毎日の経験を元にした常識的な機械論的な考え方に反対できた理由として、彼の実体論的方法論をあげている。前述したようにコペルニクスが『アルマゲスト』の研究をした動機は「エカントを実在のものと認められなかった」ためであった。コペルニクスの目的が宇宙の真実の構造を明らかにすることにあったなら、天動説と地動説のどちらが決定的に正しいかを問題にせざるを得ない。現代の目から見ると天動説も地動説も原点の取り方の相違に過ぎないので、簡単か複雑か以外に優劣が付かないように思えるが、コペルニクスは幾何学的な作図の問題以上のものを発見している。コペルニクスは「地球がすべての回転の中心ではないことは、惑星の見かけの不等の運動および地球からの距離の変化によって証明されている。」と述べている。惑星の明るさが変化することは古代ギリシャ人の時代から知られていた。しかし天動説はもっぱら天体の運行を詳しく計算しようとして、星の方位のみに注目して周転円を積み重ねていった。ところがひとたび宇宙の構造が問題になると、「天体間の距離の問題」は極めて重要なものとなってくる。 コペルニクスは「惑星は夕方昇ってくるとき、すなわち太陽と衝にあって、地球が太陽と惑星の間にあるとき、いつも地球に最も近いのは確かである。反対に夕方沈むとき、すなわち惑星が太陽の近くにあるとき、いいかえると我々が太陽を惑星と地球の間に見るとき最も遠い。このことはそれらの回転の中心がむしろ太陽と関係している」ことや「金星と水星が太陽から一定角度以上離れることがないということを充分に証明している」と述べている。天動説でもこれらの観測事実を何とか説明していたが、コペルニクスの弟子のレティクスは「火星の明るさの変化はどんな周転円を取っても説明するのに不十分」と記した。 コペルニクスは幾何学的作図に満足できず、宇宙の真の構造を究めようとして地動説を立てて、天動説の誤っていることを明瞭にすることができた。その結果、コペルニクスの理論では惑星間の距離が観測結果によって具体的に考察され、観測によって惑星間の距離を測定することが可能となり、惑星間の距離と太陽からの順序を決めることができた。
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