ガーラット式の利点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/12 14:13 UTC 版)
「ガーラット式機関車」の記事における「ガーラット式の利点」の解説
構造上ボイラー下が空間となるため、固定台枠式やガーラット式以外の関節式機関車に比べ、缶胴部や火室設計の自由度が高く、特にナローゲージでも重心をあげずに大きな火室やボイラーと動輪が干渉しないようにできるという点が重宝され、極端な例として東アフリカ鉄道59形では軌間1000㎜に対しボイラーの最大直径が2284㎜と、軌間の倍以上もある太いボイラーを積んだうえで動輪直径1372mmを達成している。 標準軌以上であっても、ボイラーは同じ容積でも太く短い方が表面積が小さくなるので無駄な放熱が減るほか、加熱面積が同じなら煙管の長さが短く数を増やせるので通風がよくなり、煙が抜ける際に抵抗になる過熱管をより多く入れられるため過熱蒸気の温度上昇を見込めるという強みがあるうえ、火室も完全燃焼のためには深い(上下方向に大きい)方がよいため、これらの要素は大きなメリットになる。また、ボイラーを太くすると煙室も太くできるが、これも煙突全体の長さを長く取れて通風を良好にできる強みがある。 他にも関節式であるため、当然同じ長さのホイールベースを持つ固定台枠式より急曲線に強くなる(動輪を増やせるので重量も分散でき線路への負担を減らせる)が、関節式同士の機関車と比べてもマレー式(単式マレー含む)に対しては後部の動輪も首を振ることや、ボイラー前部のオーバーハングがほぼ無く、なおかつ重いボイラー回りの部位がカーブで内側に寄るため遠心力が抑えられるのでさらに急曲線に強いというメリットがある。 こうした要素により、ドイツのメッツェルチン(Erich Metzeltin)による「理論上我が国の鉄道を走れる最大最強の蒸気機関車はどういうものになるか?」という思考実験では「ガーラット式機関車(1F+1D1)+ブースター付きテンダー(1D)×2」の、「運転整備重量525t(動輪上重量450t)、最大出力8000馬力、引張力60900㎏(35km/h時)」という回答が導き出された なお、理論上はボイラーに邪魔されずに大動輪の高速機関車を作れるはずであるが、実際には高速向けのガーラット式機関車は作られることはなく、世界最速記録はフランスのパリ・リヨン・地中海鉄道(PLM)が、当時フランス領であったアルジェリア北部の路線用に作らせた231-132.AT形(動輪直径1800㎜)がパリ~カレーを試運転中に出した132㎞/hである。
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