オスカー10号(AMSAT-OSCAR-10/PHASE-III-B)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/11/11 10:00 UTC 版)
「PHASE-III衛星」の記事における「オスカー10号(AMSAT-OSCAR-10/PHASE-III-B)」の解説
オスカー10号はアリアンロケットの打上げ失敗で海中に没したPHASE-III-A衛星の代替機として製作され、1983年にアリアンロケット第6号機で打ち上げられた。しかし、衛星がロケットの三段目と分離した直後にロケットの推力が低下せず追突された。このため軌道変更時の制御が正常に行われず、最終軌道は予定したよりも高い近地点と小さい軌道傾斜角を持つことになった。これは、衝突直後衛星の姿勢が約90度変わってしまい、太陽光の入射角の関係で衛星温度が低下したため、液体燃料を送り出すヘリウムガスタンクあるいは配管系統が劣化したことにより、近地点を下げようとした2度目の燃焼が行えなかったためである。 軌道は最終形ではなかったものの、高高度・広帯域の衛星の登場は世界のアマチュア衛星愛好家から歓迎され、多くの交信がオスカー10号を通じて行われ、アマチュア宇宙通信の普及に大きく貢献したのである。 しかし近地点の高い軌道により衛星がヴァン・アレン帯中を通過する時間が増えたため、電子回路が計画より早くダメージを受けた。特に打ち上げ後3年半くらいでマイクロコンピュータ制御回路の主メモリの恒久破損が進み制御プログラムの実行が困難になった。 打ち上げから約20年を経た現在は、制御系の喪失に加えバッテリ(二次電池)が劣化したため、太陽電池への太陽光の入射角が良好な時にBモードトランスポンダが動作するのみである。 衛星の諸元 基本的にはPHASE-III-Aとほぼ同じサイズと機能だが、トランスポンダが2組に増え、アポジモーターが液体式になった。 打ち上げ日時:1983年6月16日11:59UTC 射場:フランス領ギアナ・クールー宇宙センター ロケット:アリアン6号機(L-6) 主ペイロード:ECS-1(Europian Communication Satellite) 予定軌道:近地点高度1500km、遠地点高度36000km、軌道傾斜角57度〜64度 最終軌道:近地点高度3950km、遠地点高度35500km、軌道傾斜角25.8度 アポジモーター:MBB社製液体モーター(UDMH+N2O4) 大きさ:三角星型で直径1.6m×高さ0.4m。質量130kg トランスポンダ:以下の二組Bモード:70cm→2m、帯域150kHz、50Wビーコン:145.810MHz(GB)/145.987MHz(EB) Lモード:23cm→70cm、帯域800kHz、35Wビーコン:436.04MHz(GB)/436.02MHz(EB) GB=General Beacon(CW/RTTY/PSK)、EB=Engineering Beacon(PSK) アンテナ:以下の三組2m帯:3x2素子位相給電モノポール(ゲイン7dBi) 70cm帯:3x位相給電ダイポール(ゲイン11dBi) 23cm:ヘリックス(ゲイン13dBi)
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