ウランの粗精錬
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/28 14:43 UTC 版)
主なウラン鉱石 (uranium ore) は、次の通り。 閃ウラン鉱 (uraninite) - UO2 ピッチブレンド(pitchblende、瀝青ウラン鉱) - 塊状の閃ウラン鉱 コフィン石 (coffinite) - U(SiO4)1-x(OH)4x デービド鉱 (davidite) カルノー石 (carnotite) - K2(UO2)2V2O8・3H2O 燐灰ウラン石 (autunite) - Ca(UO2)2(PO4)2・10-12H2O 人形石 (ningyoite) - CaU(PO4)2・1-2H2O フランセビル石 (francevillite) ツヤムン石 (tyuyamunite) ブランネル石 (brannerite) - (U,Ca,Ce)(Ti,Fe)2O6 これら採掘されたウラン鉱石は、細かく砕いた後、硫酸で溶解して六価のウランの浸出液とする(ただし、鉱石が石灰岩を多く含むなど硫酸では効率が悪い場合は、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムを用いることもある)。また、適用は鉱山の地質構造に依存するが、ウラン鉱石が存在する地層中に上記の抽出液を直接注入してウランが溶け込んだ浸出液を汲み出す、溶媒抽出法と呼ばれる採掘方法も実用化されている。浸出液は溶媒抽出、イオン交換、または沈殿法のような化学的手法(湿式精錬)で不純物を取り除いた(選鉱)後、ウラン含有率を60%位まで高めたウラン精鉱になる。粗製錬工場の最終製品がこのウラン精鉱でありイエローケーキとも呼ばれるが、イエローケーキは実際には単一の物質ではなく、重ウラン酸ナトリウム、重ウラン酸アンモニウム、含水四酸化ウランなど、製錬工程の違いにより、工場によって成分が異なっている。 浸出液に苛性ソーダを加えるプロセスならば、重ウラン酸ナトリウム (Na2U2O7) が沈殿する。また、アンモニアを加えると重ウラン酸アンモン ((NH4)2U2O7) が沈殿する。 2UO2(SO4) + 6NaOH → Na2U2O7 + 2Na2SO4 + 3H2O 2UO2(SO4) + 6NH4OH → (NH4)2U2O7 + 2(NH4)2SO4 + 3H2O UO2(SO4) + H2O2 + 2H2O → UO4・2(H2O) + H2SO4 これらの沈殿を脱水してフレーク状にしたものがイエローケーキである。上記の通り、イエローケーキ中のウランは必ずしも六価ではないし、工程の温度条件等により必ずしも黄色ではなく、オレンジ~緑~茶褐色まで幅がある。現在イエローケーキと呼ばれているのは、歴史的に最初の精錬工程で作られたウラン精鉱が鮮やかな黄色だったためである。 イエローケーキはドラム缶に詰められて転換工場へ出荷される。ウラン鉱石はイエローケーキの状態で取引される。国際取引ではイエローケーキに含まれるウランを八酸化三ウラン (U3O8) に換算して、1ポンド当りの価格で売買が行われる。 世界の粗製錬工場のほとんどは鉱山に併設されており、日本国内には工場が無い(日本国内では、かつてウラン鉱からイエローケーキの精錬が行われていたが、1970年代に中間過程としてのイエローケーキを経ずに四フッ化ウランを直接製造する方式が確立されている)。
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