イリノイへの移住、そして「殺人の城」
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「H・H・ホームズ」の記事における「イリノイへの移住、そして「殺人の城」」の解説
ホームズは1886年8月にシカゴへ到着し、エングルウッド(英語版)に程近い、サウス・ウォレス・アベニューと西63番ストリートの南西角にある、エリザベス・S・ホルトンの薬局にやってきた。ホルトンはホームズに仕事を与え、ホームズの側も勤勉な従業員としてこれに応え、最終的に店を買い取った。この際、ホルトンの夫である老人が妻と共に姿を消したとする書籍も複数存在するが、実際のドクター・ホルトンは、ホームズより少し年上で同じくミシガン大学を卒業した人物であり、ホームズのエングルウッド生活から、彼の処刑後である20世紀まで存命していたと記録が残っている。このためホームズがホルトン夫妻を殺害したという噂は全くの作り話である。 ホームズは薬局の向かいにあった空き地を買い取って、1887年から2階建ての雑居ビルを建て始め、まず2階に薬局の新店舗を含む小売店を開設した。ホームズは建築業者・鉄鋼業のエトナ・アイアン・アンド・スティール(英: Aetna Iron and Steel)への支払を拒み、1888年には訴訟に発展した。1892年には3階が増築され、ホームズは出資者や業者たちに、翌年に迫ったシカゴ万国博覧会期間中にホテルとして用いる予定だと話していたが、ホテル部分が完成することはなかった。建築業者だったトビー・ファーニチュアや、シュルツ・アンド・ヒルシュ・マットレスは、ホームズが支払いもしていない自分たちの商品を、隠し部屋や建物中の廊下に隠していることに気付いた。業者による調査は地元でニュースになり、宝石業者がこの記事を見せたことで、ビル全体をホテルとして使おうとしていた出資者たちは次々に手を引いた。1893年8月13日の夜には3階部分で火事が発生したが、従業員や長期在住者など数人がビル内にいただけで済んだ。少なくとも4社が、ホームズに対し支払の義務が無いとしてビルに関する保険条項の訴訟を起こした。 ディアボーン・ストリート(英: Dearborn Street)のケミカル・バンク(英語版)で働いていた頃、ホームズは前科者の大工で自作の石炭入れを展示していたベンジャミン・ピツェル(英: Benjamin Pitezel)と出会い、親しい仲になった。ホームズはピツェルを自分の犯罪の右腕として使っており、後に地方検事は、「ピツェルはホームズの道具だ……やつの家畜だ」と表現している。 この頃ホームズが手に掛けたひとりが、彼の愛人だったジュリア・スミス(英: Julia Smythe)だった。彼女の夫だったネッド・コナー(英: Ned Conner)は、ホームズのビルに転居して、彼の薬局の宝石コーナーで働いていた。ホームズはスミスとの交際を始め、コナーはこれに気付いた後、スミスと彼女の娘だったパール(英: Pearl)を残し、仕事を辞めて転居した。スミスはパールの養育権を得てホテルに残り、ホームズとの情事を続けた。スミスと娘のパールは1891年のクリスマスに忽然と姿を消し、ホームズはスミスが妊娠中絶で亡くなったのだと詰られたが、2人に何が起こったか裏付ける証拠は無い。同様にホームズの愛人だったエメリン・シグランド(英: Emeline Cigrande)も、1892年5月から働き始め、この年のクリスマスに失踪している。 1893年初頭、ミニー・ウィリアムズ(英: Minnie Williams)と名乗る元女優がシカゴへ移り住んできた。ホームズは彼女に職業紹介所で出会ったことがあると主張したが、数年前にボストンで知り合いになっていたのだと噂が流れた。彼は自分のホテルで個人的な速記人になってくれないかと持ちかけ、彼女の側もこれを了承した。ホームズはウィリアムズを説得し、彼女がテキサス州フォートワースで所有する不動産を、「アレクサンダー・ボンド」(英: Alexander Bond、ホームズの変名)と名乗る男に譲渡するという証書を得た。1889年4月、ウィリアムズは不動産譲渡証書を制作し、ホームズはこれの公証人となった(ホームズは後に、ピツェルに「ベントン・T・ライマン」との変名を与え、この証書を彼に売り渡している)。翌月、ホームズとウィリアムズは、互いに夫婦だと称してリンカーン・パークのアパートメントを借りた。このアパートにはミニーの姉妹であるナニーが訪れており、ナニーは7月に、おばへ「ブラザー・ハリー」(英: Brother Harry、義理の兄弟ハリーの意味)とヨーロッパ旅行に行く計画があると書き送った。しかしながら、ミニーもナニーも、1893年7月5日以来忽然と失踪している。
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