イスラム銀行におけるムダーラバの活用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/07/06 21:50 UTC 版)
「ムダーラバ」の記事における「イスラム銀行におけるムダーラバの活用」の解説
クルアーンにおける「リバーを貪ってはならない」との規定を完全に順守しようと思えば、敬虔なムスリムは西洋型の銀行に預金するわけにはいかず、無利子銀行の利用できない地域においてはタンス預金以外の手段が講じ得ないことになる。そのため、無利子金融機関が存在しなかった時代においては、「利子を受け取らない」と銀行に告げて、利息分の口座への繰り入れをやめてもらうか、あるいは口座に入って来た利子を即座に降ろして、喜捨(ザカート、サダカ)に供するようにしていた(また現代でも、配当を必要としない金持は、銀行に資本を提供するという意味も込めて、信仰と喜捨の精神によって、無配当の口座に多額の預金をしている)という。ムダーラバ契約を活用した無利子銀行・金融会社の登場によって、そういった“敬虔な”ムスリムは、(少なくとも建前の上では)安全に、かつクルアーンに反せずに配当益という利潤によって、預金を増やせるようになった。 もっとも、ムダーラバ契約のみでは、複雑化する西洋型を中心とする現在の経済・金融には対応できない。それに、個人の小口預金者には、このような契約を結ぶことは不可能である。というのも、ムダーラバ方式は、少々の損失なら痛手を受けないような大資本家(大金持ち)にとっては「リスクも大きいが、成功したときの利益が大きい(ハイリスク・ハイリターンな)」ため有効な方策となり得るが、一般市民にとっては、なけなしの財産を失う可能性があるため迂闊に手を出せない。このため、一般預金者の利益を守る工夫が必要となる。また、1950年代にパキスタンで試みられた例は失敗に終わっている。単に信仰に適合した金融機関であるというだけでは経営が成り立たないのである。 そこで、銀行の介在する「二重のムダーラバ関係」が締結されることになる。第1の契約で預金者(ムダーリブ)が銀行(ダーリブ)の「投資事業」に対して出資する。第2の契約は、上述したように銀行(ムダーリブ)が事業家・企業(ダーリブ)に対して出資する、という構造となる。つまり、銀行が、預金者と事業家の仲立ちをするシステムと言える。日本において近似する考え方としては、預金相当額は(名目上、債券以外の)投資信託の購入であり、利息相当額は収益分配金と考えるとわかりやすい。
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