イスラム銀行預金者にとってのムダーラバ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/07/06 21:50 UTC 版)
「ムダーラバ」の記事における「イスラム銀行預金者にとってのムダーラバ」の解説
一般的なイスラム社会の無利子銀行には、配当益(利潤)のつかない「当座勘定口座」と、配当益がついてくる「投資勘定口座」の2種類がある。投資勘定口座に預金した場合、銀行がムダーラバやムシャーラカ、イジャーラによって利益を上げれば、その一部は預金者に配当という形で還元されるため、預金すれば資産が増える。現象面のみに注目すれば、利子配当をもたらす有利子銀行と似た結果がもたらされると言える。こうしたシステムが確立した現在、無利子銀行の預金口座には、ムスリムたちの預金が集まっている。 前述のように、無利子銀行には無配当の口座と有配当の口座が存在する。サウジアラビアの例では、当初は前者の方が多かったが、1983年をピークに減少に転じた。他方1985年統計では、有配当口座の残高総計は20年間で21倍に増加している。この実例から、実際には少なくともサウジアラビアのムスリムの間では、実生活者として、イスラムの慣行に反しない範囲の配当が望まれていることが分かる。このように、言葉どおり「信仰のゆえに」預金する敬虔なムスリムがいる一方で、「配当がある」という世俗的利益のために預金しているムスリムも相当数いると思われる。もちろんこのような世俗的思考においても、イスラムの規範に合致する範囲をこえるべきではない、という意識がある。 このようなムスリムたちの意識を背景に考えると、ムダーラバと無利子金融におけるひとつの画期は、1971年にエジプトで設立されたナセル社会銀行(Nasser Social Bank)であったといえる。ナセル社会銀行は、それ以前になかった要素として、国庫からの補助金を導入した。預金者の信仰心や、「正しいムダーラバ」の概念だけでは、経営は維持できない。運用益がマイナスとなり、元本割れとなっては、市民からの預金も集まらないのである。国庫補助金や、無配当口座を開設する大口預金者たちの存在によって、業績を維持しやすくなったことも、現代イスラム社会における無利子銀行が軌道に乗っている理由の一つと言えよう。
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