アジア系アメリカ人運動
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「トシオ・モリ」の記事における「アジア系アメリカ人運動」の解説
だが、モリはこの後20年以上にわたって忘れられた作家となっていた。再評価のきっかけは、1974年に劇作家のフランク・チン(英語版)、詩人のローソン・フサオ・イナダ(英語版)、作家・大学教員のショーン・ウォン(英語版)、アジア系アメリカ文学研究者のジェフリー・ポール・チャン(英語版)が編纂した『アイイー! ― アジア系アメリカ作家作品選集(英語版)』である。1970年代初頭は60年代の黒人公民権運動のうねりが他のマイノリティにも波及し、上述の日系人収容者に対する補償請求運動と併せて、アジア系アメリカ人運動が起こった時代であり、こうした運動から生まれたアジア系アメリカ文学の記念碑的アンソロジーが『アイイー!』である。本書には、モリの「すばらしいドーナツを作る女」(『カリフォルニア州ヨコハマ町』所収)のほか、ヒサエ・ヤマモトの短編「ヨネコの地震」、ワカコ・ヤマウチの短編「そして心は踊る」、ジョン・オカダの『ノー・ノー・ボーイ』の抜粋、モトコ・イコの「金時計」が収められた。ヤマウチの「そして心は踊る」が最初に発表されたのは1940年代後半、ヤマモトの「ヨネコの地震」は1951年、オカダの『ノー・ノー・ボーイ』は1957年で、いずれも日系移民の生活や強制収容を題材としているが、これまでほとんど注目されることがなかった。日系アメリカ文学を代表するこれらの作家が高い評価を受けたのは、『アイイー!』刊行後のことである。1991年には同じ編纂者による続編『ビッグ・アイイー! ― 中国系・日系アメリカ文学アンソロジー』が刊行され、モリ、ヤマウチ、ヤマモト、オカダの作品のほか、モニカ・ソネ(英語版)、ミルトン・ムラヤマ(英語版)、ヒロシ・カシワギ(英語版)、ジョイ・コガワ(日系カナダ人作家)、八島太郎、ミノル・ヤスイなどさらに多くの日系作家の、小説だけでなく随筆、詩、俳句、短歌なども収められることになった。こうした動きを受けて日本でも1970年代後半に日系アメリカ文学の研究が始まり、英語による文学の翻訳が出版された。『カリフォルニア州ヨコハマ町』の邦訳が刊行されたのは1978年であり、1992年に新装版が出された。1978年には長編小説『広島から来た女』、翌79年には『排外主義者ほか短編集』が出版された(いずれも未訳)。短編集の序文はヒサエ・ヤマモトが書いている。
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