アイフィンガーガエルとは? わかりやすく解説

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アイフィンガーガエル

和名:アイフィンガーガエル
学名Chirixalus eiffingeri
    カエル目
分布石垣島西表島分布する
 
写真(上):アイフィンガーガエル成体
写真(下):アイフィンガーガエル卵
説明
台湾にも生息。完全な樹上性種類で,産卵樹木の幹にある水のたまった穴の中にする。体色褐色のことが多いが,時に緑色になる。また,ごつごつした樹幹にいる時は体表ざらざらしていることがある樹洞水たまり中で,幼生は雌が産卵する無精卵食するという。区別点:ニホンカジカガエルリュウキュウカジカガエル)に比べ,目が大きく後肢が短い。鳴き声美声で,高い声で,ピリッ,と一声ずつ鳴くことが多い。
アイフィンガーガエル成体

アイフィンガーガエル卵


アイフィンガーガエル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/03 12:30 UTC 版)

アイフィンガーガエル
アイフィンガーガエル Kurixalus eiffingeri
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 両生綱 Amphibia
: 無尾目 Anura
亜目 : カエル亜目 Neobatrachia
: アオガエル科 Rhacophoridae
亜科 : アオガエル亜科
Rhacophorinae
: アイフィンガーガエル属
Kurixalus
: アイフィンガーガエル
K. eiffingeri
学名
Kurixalus eiffingeri
(Boettger, 1895)[2]
シノニム
  • Rana eiffingeri
    Boettger, 1895
  • Rhacophorus iriomotensis
    Okada & Matsui, 1964
和名
アイフィンガーガエル[3]
ホネナガキガエル
英名
Eiffinger's tree frog[2]

アイフィンガーガエル (Kurixalus eiffingeri) は、アオガエル科アイフィンガーガエル属に分類されるカエル。別名ホネナガキガエル。日本で唯一子育てをするカエルである。

名前の由来

属名のKurixalusは「倉本氏の跳ねるもの」を意味し、琉球産両生類を研究した倉本満に由来する。種小名は「アイフィンゲル氏の」を意味し、ドイツ人の昆虫学者ゲオルグ・アイフィンゲルに献名したもの。タイプ標本はドイツのゼンケンベルク自然博物館に保管されている[4]

分布

日本では琉球列島八重山諸島石垣島西表島)にのみ知られ、国外では台湾に分布する[5]。なお、何故かタイプ産地は奄美大島沖縄島とされてきた。

石垣島では近年生息地の減少によってその個体数が急速に減っていると言われる[6]

形態

体長は、雄が3-3.5センチメートル、雌が4センチメートル。皮膚の表面には粒状の突起が入る。体色は灰褐色や褐色だが、緑がかる個体もいる。背面には暗色の斑紋が入る。四肢の背面に黒褐色の横向きの帯状斑があり、特に前肢の腕部に2本、後肢大腿部の2~3本、及び脛部の3本が明確となっている[7]。腹面は黄色味を帯びた白で、胴体の後方ではこれが腹部の側面まで広がり、その周辺部では多数の暗褐色の斑紋がある[7]

前足の指先には吸盤が発達しており、特に第3,第4指のものが大きい[8]。また水かきはほとんど発達しない[8]

幼生は成長すると32mmほどになる[9]。幼生は目の左右間の幅が狭く、頭部の後方背面にあること、それに口器が頭部の腹面でなく前面にあるのが特徴的である。変態時の体長は8~12mm程度。幼生の歯は退化的である[10]

分類

以前はホネナガキガエル属Chirixalusに分類されていたが、1999年に本種のみで構成されるアイフィンガーガエル属Kurixalusが設立された[11]。のちに東南アジア産の近縁種がこの属に分類されている[12]

生態

海岸近くから山地森林やその周辺に生息する[13]。樹上棲。夜行性で、日中は樹洞内や薄暗い場所ではその周辺で静止しており、日没後に活動し、小型の昆虫などを食べる[6]。雄は喉の鳴のうを膨らませてピッ、ピッ、ピッ、と鳴く[14]

食性は動物食で、昆虫類節足動物等を食べる。幼生は母親が産んだ無精卵のみを食べる[15]

繁殖形態は卵生。樹洞クワズイモの葉の根元等に溜まった水に少数の卵を産む。母親は産卵場所を巡回し、幼生に無精卵を与える。産卵数は10–50個[10]。樹洞の水たまりで繁殖するカエルは日本では本種のみである[6]

繁殖はほぼ周年にわたって行われ、雄が樹上で鳴いて雌を呼び、雌は上記のような水たまりの水面より上の壁に10~15個ずつ産卵をする[9]。この時水面より上に産卵するのはすでに水中に幼生がおり、それらが卵食性であるのでそれを避けるためと考えられる。産卵後には雄が卵塊を腹部で覆って湿気を与えると思われる。雌が幼生に未受精卵を与える際には幼生は雌の肛門付近をつついて刺激して産卵を求める。幼生の口が前端にあり、歯が退化しているのはこの習性と関連していると考えられる[10]。幼生は1ヶ月程度で変態する[6]

Ito & Okada(2024)は本種の幼生がオタマジャクシでいる間にをしないことを明らかにした[16]。本種の幼生は他のカエルに比べて明らかに水中へのアンモニアの放出量が少なく、それと反対に腸内には非常に高濃度のアンモニアを保有すること、また幼生自身のアンモニア耐性がとても高いことを明らかにした。これらはこの種の幼生がごく狭くて閉じられた水環境に生息することへの適応と考えられる。カエルにおいてこのような適応が発見されたのは本種が初めてであるという。

樹上の小さな水場で生育されることから幼生の天敵は少ないと考えられているが、水たまりを訪れたサキシママダラに捕食される例もある[17]

人との関わり

本種は森林に生活するものであるが、森林に接した人家の庭木などを生活の場にすることもある[18]。分布域のある地域ではこのカエルが庭に来ると不吉の前兆だとして、家族総出で探し、見つかったカエルは海に流すという習慣があったとの話がある。

出典

  1. ^ IUCN SSC Amphibian Specialist Group. 2022. Kurixalus eiffingeri. The IUCN Red List of Threatened Species 2022: e.T186873381A63850732. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2022-1.RLTS.T186873381A63850732.en. Accessed on 08 November 2024.
  2. ^ a b Kurixalus eiffingeri. In: Frost, Darrel R. 2024. Amphibian Species of the World: an Online Reference. Version 6.2 (Accessed on 08 November 2024). Electronic Database accessible at https://amphibiansoftheworld.amnh.org/index.php. American Museum of Natural History, New York, USA. https://doi.org/10.5531/db.vz.0001.
  3. ^ 日本爬虫両棲類学会 (2024) 日本産爬虫両生類標準和名リスト(2024年3月11日版). https://herpetology.jp/wamei/ (2024年11月8日アクセス).
  4. ^ 『日本産カエル大鑑』文一総合出版、2018年8月31日、214頁。 
  5. ^ 以下も日本爬虫両生類学会編(2021) p.78
  6. ^ a b c d 高田、大谷(2011) p.211.
  7. ^ a b 日本爬虫両生類学会編(2021) p.78
  8. ^ a b 松井、前田(2018) p.214
  9. ^ a b 以下も松井、前田(2018) p.214
  10. ^ a b c 日本爬虫両生類学会編(2021) p.79
  11. ^ 松井正文「最近の日本産両生類の学名の変更について」『爬虫両棲類学会報』第2006巻 2号、日本爬虫両棲類学会、2006年、120-131頁。
  12. ^ 松井正文「2007年以降に記載ないし,分類変更された日本産両生類について」『爬虫両棲類学会報』第2013巻 2号、日本爬虫両棲類学会、2013年、141-155頁。
  13. ^ 内山他(2002) p.152
  14. ^ 関(2018) p.196
  15. ^ 上田博晤「アイフィンガーガエルの幼生の食性」『動物学雑誌』第88巻 4号、東京動物學會、1979年、660頁。
  16. ^ 以下もIto & Okada(2024)、及び名古屋大学研究成果発信サイト[1]
  17. ^ 岩井紀子・佐藤拓「サキシママダラによるアイフィンガーガエル幼生の捕食例」『爬虫両棲類学会報』第2018巻 2号、日本爬虫両棲類学会、2018年、171–172頁。
  18. ^ 以下も内山他(2002) p.152

参考文献

  • 千石正一監修 長坂拓也編 『爬虫類・両生類800種図鑑 第3版』、ピーシーズ、2002年、309頁。
  • 『小学館の図鑑NEO 両生・はちゅう類』、小学館、2004年、53頁。
  • 海老沼剛 『爬虫・両生類ビジュアルガイド カエル1 ユーラシア大陸、アフリカ大陸とマダガスカル、オーストラリアと周辺の島々のカエル』、誠文堂新光社、2006年、54頁。
  • 松井正文、前田憲男、『日本産カエル大鑑』、(2018)、文一総合出版
  • 日本爬虫両生類学会編、『新 日本両生爬虫類図鑑』、(2021)、サンライズ出版
  • 内山りゅう他、『日本の両生爬虫類』、(2002)、平凡社
  • 高田榮一、大谷勉、『原色爬虫類両生類検索図鑑』、(2011)、北隆館
  • 関慎太郎、『野外観察のための日本産両生類図鑑』第2版、(2018)、緑書房
  • Bun Ito & Yasukazu Okada, 2024. Phytotelmata-dwelling frog larvae might exhibit no defecation: A unique adaptation to a closed aquatic environment. Ecology https://doi.org/10.1002/ecy.4428



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