未受精卵の利用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/05 02:09 UTC 版)
単為生殖でない動物の場合、一般的には未受精卵は偶然に生じるものであって、役に立たないものである。しかし、それが利用されている例がある。 動物では未受精卵が孵化した幼生の餌になる例が知られる。これはたまたまそうなるのではなく、習性として親がそのように仕向けるものである。たとえば八重山諸島に分布するアオガエル科のアイフィンガーガエルは樹洞の水たまりに産卵するが、孵化した幼生に対して母親は未受精卵を生産し、これを水中に産んで幼生の餌とする。 クモ類は卵を集めて糸でくるみ、卵嚢にする。孵化した幼生はすぐにはここから出てこず、一回の脱皮を行った後に出てくる。その時にいまだに発生が進んでいない卵を食って出てくる例が知られている。このような例は日本でも古くは関口晃一(1943)がアシダカグモで観察しているほか、チリグモ、イエオニグモ、コガネグモなどで観察されており、かなり広い範囲で起こっているらしい。ただし、同一卵嚢中でもすべての幼生が卵を食べる訳ではないらしい。ごく一部に見られる種から、ほとんどの幼生が卵を食べる例まで幅のある観察例がある。メキシコのイエタナグモでは卵を食う幼生の率がとても低いのに対して、近縁のフランス産の種ではほとんどすべての幼生が卵を食っているとの報告例があり、恐らくフランスの種が秋に産卵することから、この場合には孵化時の餌の少なさを補う意味があるとの説もある。 池田博明は、一般にクモにおいては後の産卵ほど受精率が下がるのとこの行動とを結び付け、後の産卵では受精数が減る分だけ幼生が未受精卵を食べる率が上がるから、初期の産卵で小卵多産戦略を、後の産卵では大卵少産戦略を取る、との可能性を挙げている。ただし、クモでは明らかに受精卵を幼生が食べる例も知られ、例えばメガネヤチグモでは先に孵化した幼生が未孵化の卵塊を食ってしまう。
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