なぜファン・ディスクが破断したか
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 06:45 UTC 版)
「ユナイテッド航空232便不時着事故」の記事における「なぜファン・ディスクが破断したか」の解説
発見されたのは大きな破片が2つで、それで問題のファン・ディスクのほぼ全体を占めていた。それぞれにファン・ブレードもついていた。破断の原因調査のため、回収された破片は検査された。破片を組み合わせた結果、円周方向と半径方向に走る割れ目ができ、ディスクの外輪部の約3分の1が分離していた。 どこから破断が始まったかを調べるため、破面解析が行われた。割れ目は円周方向、半径方向とも典型的な過大応力により生じたと分かった。そしてこれらの亀裂は、事故前からディスク内に存在していた疲労亀裂から進展したことが判明した。金属学的調査の結果、材料内部に小さい空洞(キャビティ)が存在し、そこから疲労亀裂が始まっていた。キャビティは、ディスク表面から約0.86インチ(約2.2センチ)入ったところで、大きさは軸方向に0.055インチ(約1.4ミリ)、半径方向に0.015インチ(約0.4ミリ)だった。 破面解析、金属組織解析、そして分析化学的解析の結果、キャビティの周辺に窒化物「ハードアルファ」の混入(介在物欠陥)があったことが明らかになった。ハードアルファは非常に硬く脆いのが特徴で、これがチタン合金鍛造材内部に存在すると、早期の疲労損傷を引き起こす。 ファン・ディスクの製造工程は、大きく3ステップに分けられる。まず、チタン合金の鋳塊製造、次に鍛造、そして最終機械加工である。ハードアルファは、チタン合金の鋳塊製造時に形成されたものだった。NTSBは、キャビティが存在した部分ももともとはハードアルファが占めていたと推定した。そして複数の可能性を調査検討したうえで、キャビティが発生したのは、最終機械加工から表面処理などのためのショットピーニング工程までの間のどこかだと判断した。 エンジンが最大推力を発生させたとき、キャビティを起点に亀裂が生じ、荷重がかかるたびに亀裂は成長した。疲労亀裂が進展した領域では、かかる荷重が変動するたびにビーチマークと呼ばれる縞模様が残ることがある。この事故では、その縞模様の数はファン・ディスクの離着陸回数とほぼ等しかった。このことは、ファン・ディスクの使用開始の早い段階から疲労亀裂が発生していたことを示している。
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