なぜ亀裂が見逃されたか
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/16 02:53 UTC 版)
「アロハ航空243便事故」の記事における「なぜ亀裂が見逃されたか」の解説
アロハ航空は、所有機に対してADに従って指定されたラップ・ジョイントの点検を実施した。しかし、それが確実に実施されたのかは疑わしかった。アロハ航空の整備担当者は渦電流検査を実施したと証言したが、検査記録は残っていなかった。 さらに、このADの指示にも問題があった。亀裂が発見された場合の対処指示が不明確で、複数通りに解釈できるものだった。ADの本来の意図は、亀裂のあったパネルのリベット列全体を交換することだった。しかし、アロハ航空は亀裂が見つかった孔のみリベットを交換すればよいと解釈して修理した。外板を外した際に胴体が変形しないよう保持しつつ、一つ一つリベットを打ち直すのは非常に労力を要する作業だった。 実際に事故機では、ADで指定されたラップ・ジョイントの一部が修理されていた。ところが、事故機の破片を調査したところ、修理されずに残っていた疲労亀裂がラップ・ジョイントから多数発見された。 なぜ、亀裂が見逃されたのか。事故調査委員会は、大きく二つの要因を指摘している。 一点目は作業が非常に単調であったことである。例えばADで指示された検査の場合、検査員は命綱をつけて胴体上部に上り、塗装された胴体表面にある約1,300か所のリベットを照明の明かりで一つ一つ丁寧に目視確認する必要があった。これは非常に退屈な作業であった。そして、亀裂が見つかればパネル1枚あたり約360か所のリベットを渦電流検査する必要があった。事故調査報告書は、このような作業には人間の肉体的、生理的、心理的限界があるのは明白だと述べている。 二点目は、人体の概日リズムの影響である。航空会社の検査は大抵夜間や早朝に行われるが、これは人間のパフォーマンスを下げることが知られている。 事故調査報告書は、作業時間の長さや退屈さ、孤独な作業環境、睡眠不足や不規則なスケジュール、そして概日リズムの影響をもっと考慮する必要があったと指摘し、微細な欠陥を見つけるために多数の反復作業を作業者に強いる非破壊検査のあり方は改善が必要だとした。
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