『植物の書』
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/15 10:55 UTC 版)
「アブー・ハニーファ・ディーナワリー」の記事における「『植物の書』」の解説
ディーナワリーの Kitāb al-Nabāt, 『植物の書』全6巻は中世イスラーム圏の植物学の嚆矢となった作品であるが、ほとんどの巻が散逸した。わずかに第3巻と第5巻のみが現代に伝わっており、第6巻の一部が後世の人の引用に基づいて再建できるにすぎない。残された部分からは、アラビア文字で sin から ya までの文字から始まる名前の植物、637 種の生育や花、果実についての記載が確認できる。 ディーナワリー以前にもイスラーム教徒が書いた植物学の著作は存在したが、そのほとんどすべてが散逸している。ディーナワリーは、シャイバーニー(英語版) (d.820)、イブン・アゥラービー(英語版) (d.844)、バーヒリー(アラビア語版) (d.845)、イブン・スィッキート(アラビア語版) (d.857) の書いた植物学に関する著作を長々と引用しており、そのおかげで、これら著作の内容が完全に失われることは避けられた。 『植物の書』の内容は、天文、農学、本草学、冶金学、地誌学にまで及んでいる。同書には天文・気象にかかわる学問の農業への応用について記述する部分もある。その部分は、空模様、惑星と星座、太陽と月、季節と降雨を表す月相、anwā‘ と呼ばれる、天空にあって降雨と関係すると考えられた天体について解説し、さらに、風、雷、稲光、雪、洪水、谷、川、湖、井戸など水の獲得に関係すると考えられたものに関する気象的現象について記述する。 『植物の書』には農業を語る文脈で地球についても開設する部分がある。ディーナワリーは地球を石と砂からなると考え、土壌の違いにより育ちやすい植物や作物の品質の違いについて述べ、よい土壌の条件についても述べている。
※この「『植物の書』」の解説は、「アブー・ハニーファ・ディーナワリー」の解説の一部です。
「『植物の書』」を含む「アブー・ハニーファ・ディーナワリー」の記事については、「アブー・ハニーファ・ディーナワリー」の概要を参照ください。
- 『植物の書』のページへのリンク