『椿説弓張月』にみる利勇
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『椿説弓張月』に登場する「利勇」という人物は、琉球の国相・「利射(りしゃ)」の甥で、琉球国天孫氏25代の王「尚寧王」から政権を奪った。彼は、そのいとこで「尚寧王」の妃・「中婦君(ちゅうふきみ)」と共に国政を執ったが、「曚雲(もううん)」という妖僧に「尚寧王」と「中婦君」は殺害され、「利勇」は南風原へ逃亡、「陶松寿(とうまつじゅ)」を軍師にして「曚雲」討伐の機会をうかがっていた。しかし、「陶松寿」と琉球に渡った「為朝」らは、殺された「毛国鼎(もうこくてい)」の子供である「鶴・亀」兄弟に父の敵として、「利勇」を討たせた。 曲亭馬琴作の『椿説弓張月』は、特に、1765年(明和2年)に出版された徐葆光著『中山伝信録』の和刻本と、それを読みやすく抜き出して書き直した森島中良の『琉球談』(1790年〔寛政2年〕)の2つから、登場人物のモデルを多く採用している。前述した『椿説弓張月』に登場する「利勇」は、天孫氏25代を滅亡させた利勇がモデルであるが、作中における最大の敵は彼ではなく、馬琴が作り上げた「曚雲」である。琉球の血を排除した「舜天丸(すてまる)」が王位に就き、また、為朝が「曚雲」を倒した後に「帰郷(作中では霊に迎えられ雲の中へ消失)」するという『中山世鑑』と異なる設定をしているのは、『椿説弓張月』が大和による琉球征服を主題にしているからである。
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