『メイジズ・アンド・モンスターズ』
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「ダンジョンズ&ドラゴンズに関する論争」の記事における「『メイジズ・アンド・モンスターズ』」の解説
TRPGという趣味が普及し始めた矢先に、16歳の少年ジェームズ・ダラス・エグバート3世(英語版)が失踪したという1979年の事件がTRPGとの関連を疑われた。エグバートはミシガン州立大学のキャンパスの地下にある蒸気パイプの通ったトンネル(共同溝)で自殺を図ったが未遂に終わり、友人宅に一月ほど隠れていた。 マスコミを巻き込んだエグバート捜索が開始され、両親は私立探偵ウィリアム・ディアに息子を探し出すよう依頼した。ディアはこの時D&Dに関して何も知らなかったが、エグバートは蒸気トンネルの中でライブRPGをプレイしていて迷ったのではないか、という推測をマスコミに語った。この説は事実として大きく報道され、同様の「蒸気トンネル事件」についての噂が長期にわたって流布する原因となった。エグバートは後に拳銃自殺を遂げたが、度重なる自殺の試みはD&Dとは何ら関係がなく、うつ病と極度のストレスによるものであった。 小説家ローナ・ジャフィは1981年に『メイジズ・アンド・モンスターズ』(Mazes and Monsters)を刊行した。エグバート事件の誇張された報道をわずかに改変して小説にしたものだった。TRPGがほとんど理解されていなかった時期でもあり、プレイ中に精神症状を発現して現実との接点を失うおそれがあるという筋立ては、一部にはすんなりと受け入れられた。同書は1982年にトム・ハンクス主演でテレビ映画化された(邦題『トム・ハンクスの大迷宮』)。同作の小説版と映画版が宣伝されたことで、TRPGに関する一般社会の不安は高まった。1983年には、カナダの映画『スカルダガリー』(Skullduggery)が、若者を殺人鬼へと変えるために悪魔が用いる道具としてD&Dに似たTRPGを登場させた。 ディアは1984年の著書『ザ・ダンジョン・マスター』(The Dungeon Master)で事件の真相を明らかにし、エグバートの失踪とD&Dとの間の関連性を否定した。エグバートの問題には、TRPGへの関心よりも支配的な母親の方が強い影響を与えたとされた。 大学生活を皮肉に描いたニール・スティーヴンスンによる1984年の小説『ザ・ビッグU』(The Big U)では、ライブRPGのプレイヤーが蒸気トンネルで死亡する事故が起き、そのために別のプレイヤーが精神的に不安定になってゲームと現実を区別できなくなるという、現実を模した一連の事件が扱われた。
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