『ブリタニア列王史』における赤い竜と白い竜
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「赤い竜 (ウェールズの伝承)」の記事における「『ブリタニア列王史』における赤い竜と白い竜」の解説
ブリテンの大君主ヴォーティガン(ウルティゲルヌス)は、サクソン人傭兵の反乱によりウェールズ方面へ退却した後、魔術師たちの助言をうけて堅固な塔を建設しようとした。ところが塔を築こうとしても基礎が一夜にして地中に沈んでしまう。そこで王はふたたび魔術師たちに相談すると、生まれつき父親のいない少年を探し出してその血を礎石のモルタルに振りかけるがよろしいと言われる。そして夢魔を父に持つ少年マーリン(メルリヌス)が生贄として見出され、王の前に連れて来られる。王が事情を説明すると、少年は「魔術師たちを呼んできて下さい、かれらの嘘を証明致しましょう」と言った。そして王と招集された魔術師たちの前で「王様、土を掘り起こすよう工人たちに命じて下さい、そうすれば塔の基礎の地下に水たまりが見つかるでしょう、そのせいで基礎が沈んでしまうのです」と告げた。ヴォーティガンが半信半疑のまま塔の下を掘らせてみると、はたして水たまりが出てきた。マーリンは王の魔術師たちに向かって「嘘の上手なおべっか使いの方々、水たまりの下には何があるかご存じですか」と問いかけ、王には「池の水を抜き取るよう命じて下さい、すると水底には空洞になった石が二つあって、その中に竜が眠っているでしょう」と言った。ヴォーティガンが水を抜かれた池のほとりに座していると、赤い竜と白い竜が出現して戦いを始めた。一時は劣勢と見えた赤い竜は、勢いを盛り返してなんとか白い竜を退かせた。驚いているヴォーティガンに、マーリンは、赤い竜はブリトン人で白い竜はサクソン人だと説明した。さらに、「この争いはコーンウォールの猪が現れて白い竜を踏みつぶすまで終わらない」と予言した。彼の予言は、コーンウォールの猪ことアーサー王がサクソン人を破るという形で成就されることとなる。 その後、ヴォーティガンはサクソン人とともに暴政を敷く。そのため大陸に逃れていた反乱軍が次々結成され、とうとうヴォーティガンは討ち死した。ヴォーティガンの死後、ブリタニアを治めていたアンブロシウス・アウレリアヌスも殺され、無政府状態となった。アウレリアヌスの弟ユーサー・ペンドラゴンは、サクソンとの戦いの最中で軍を率いていたが、その時、突然空に明るく輝く大きな星が現れた。その星はまるで燃える火の竜のようであった。光の尾を引き、その一つはガリアを指し、もう一つはアイリッシュ海を指していた。 「一体あの彗星は何を意味するのか」ユーサーは魔術師マーリンを呼んで尋ねた。そこでマーリンは兄アウレリアヌスの死を告げ、悲しみにくれながらも、ブリトンの民がサクソンに勝たねばならぬこと、あの星の筋がユーサーに生まれるという息子が立派な王になることを示していること、子孫は皆ブリタニアを治めていくだろうということを語った。 ユーサーは兄の死を嘆きつつもサクソンに勝利した。新たなブリテンの王となったユーサーは、火の竜の星を記念して2匹の黄金の竜を作り、ペンドラゴン(Pendragon)という称号で呼ばれるようになった。この称号は、ウェールズ語(ブリトン語)で「竜の頭(あたま)」を意味する。
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