トヨタ・プリウス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/09 21:43 UTC 版)
販売店
初代はトヨタ店のみであったが、2代目からはトヨペット店が加わり、2チャンネル併売となった[4]。また、販売台数も2代目からは格段に増え、発売後半年経っても、購入から納車まで数か月待ちという事態も起きた。3代目以降はカローラ店とネッツ店にも販売網を広げ、レクサス専売店を除くトヨタの全販売店で販売を開始した。トヨタの全販売店で販売する車種の登場は、トヨタが現体制になった1982年以降では2000年に限定生産されたオリジンの例があったのみで、限定生産車以外では初めてとなる。なお、2代目モデルもグレード体系などを見直し、ビジネスユーザー向け新グレード「EX」に一本化し2011年12月26日まで継続販売された(取扱いは従来どおりトヨタ店とトヨペット店)。低価格路線を打ち出しているホンダ・インサイトに対抗するため、「EX」の車両本体価格はインサイトの「G」と同じ189万円に設定。3代目モデルも205万円からの価格設定にしていた。
車名の由来
- ラテン語で「〜に先駆けて、〜に先立って」という意味[62]。
- 現在、世界93か国で販売されていて、車名はどの国においても「プリウス」(PRIUS) を名乗る[注 16]。またアクアは海外ではプリウスのブランド力を活かして「プリウスC」を名乗っている。
その他
- 2002年に週刊少年マガジンで製作したスタッフチーム等の苦悩を描いた漫画「プリウス〜21世紀への翼〜」が掲載された(作画は日和一吾)。
- 一般的にスポーツグレードを持たない実用車種にはエアロパーツやサスペンションキットなどのチューニングパーツはあまり発売されないが、2代目以降のプリウスでは空気抵抗を減らして燃費をさらにあげるためのボディキットが発売されたり、TRDやトムスなど、アフターパーツメーカーからもマフラーやホイール、サスペンションキットなどの改造部品が販売されている。
- 大阪トヨペットグループでは、レーシングドライバーの片山右京と共同開発したカスタマイズカーである「ENERGY MASTER[63]」を発売。「究極の環境性能を誇るエコカー」をテーマに、環境問題にも執心であるプロデューサーの片山の意見を取り入れて足回りの軽量化のため、専用の超軽量アルミホイールを開発した(ちなみに、17インチサイズで1本5Kgの軽量化に成功している)。タイヤには横浜ゴムのエコタイヤである「DNA Earth-1」が採用され、さらに空気抵抗を低減し燃費をさらに向上させるエアロパーツセット(オプション品)も用意されている。
- 3代目モデル(ZVW30型)の発表を2週間前に控えた2009年5月2日よりTBSラジオにて、「TOYOTA PRIUS Presents 高樹千佳子のハイブリッドな週末」というタイアップ番組を放送開始。パーソナリティには、車や音楽好きでも知られるタレントの高樹千佳子を起用し、高樹がプリウスを実際にドライブしながらゲストとのトークや開発スタッフとのプリウス開発秘話、そして高樹によるプリウスの試乗インプレッションを交えた新感覚の番組で、車内外の走行音やウインカーの作動音などもそのまま収録されている。
- 一般的に新型車が発表された際は自動車関連のニュースや一部の経済ニュースでは報道されるものの、一般紙や通常のニュース番組で報道されることはほとんどない。だがプリウスに関しては、報道発表会の模様や試乗インプレッションが一般紙やニュース番組で特集を組んで報道されている。
- ナゴヤドームのトヨタグループの電動回転広告板には2009年 - 2011年の間、「魅せろよ プリウス」という広告が掲示されていた。
- 2010年、当時北米及び世界販売最大のライバルであったゼネラルモーターズのダニエル・アカーソンCEOは「さえない車」「おたくの車 (Geek-Mobile)、私だったら絶対に乗らない」とこき下ろした[64]。一方で初代プリウス開発責任者の内山田は、これを意識してか2016年にアメリカの演説で「私はプリウスおたく(Geek)であることを誇りに思う」、「私はひとりのタフなナードである」と発言している[65]。
- 3代目で派生車種が誕生したことで英語表記での複数形が必要になったことから、米国トヨタ自動車販売ではホームページ上の投票で応募を受け付けた結果、2011年2月に複数形を「Prii(プリアイ)」とすることを発表している[注 17][66]。
- ドライビングシミュレーターゲームである、「グランツーリスモ5」(初代、二代目、三代目モデル)、「Forza Motorsport 4」(三代目の北米仕様)にプリウスが登場している。Forza Horizonにも登場しているが、こちらは一般車として走行している。
- 2010年代前半には派生車種を含めタクシーでの採用が増えていた。2代目から大手のタクシー会社がテスト運用していた[注 18]が、タクシー仕様でない一般車両にもかかわらず燃費が良好で耐久性も予想以上であった(都市部において、前輪駆動車をタクシーに用いた場合オートマチックトランスミッションが早期に故障すること、またそれに伴う修理コストと時間が嵩むことが問題とされていたが、プリウスはこの前例が当てはまらなかった稀有なケースである)ことから採用が増えていた。長距離営業でも専用LPGガススタンドでなく通常のガソリンスタンドで燃料補給できるため、走行距離が伸びる地方での採用が増えていた。トヨタはこれを受け、日本国内向けのタクシー専用車もハイブリッド専用とすることにし、LPG専燃だったクラウンコンフォート、LPG車が存在したコンフォート(XS10系)に代えて2017年(平成29年)、ジャパンタクシーを発売したことにより、タクシー用として採用されるハイブリッド車の主流はそちらへ移行していった。詳細は「トヨタ・ジャパンタクシー#メカニズム」を参照
- なお、2代目まではシステムモニターを兼ねた液晶画面が外せないことから、メーター等の業務機器を外付け設置したりインパネに穴をあけて設置する場合が多かった。3代目以降ではナビ用DINスペースが設けられたことからそのスペースに2DINナビを入れたうえで従前通り業務機器を外付け設置もしくは穴あけ設置するケースのみならず、そのスペースにメーターとラジオを入れナビの方を外付けするケースも見受けられるようになった(主に無線とナビが一体になった機器を採用する事業者がこの手法で設置している)。
- トヨタの地元である東海ラジオ等で使用され、宮崎放送やRCC中国放送[注 19]等では、新旧プリウスがラジオカーとして採用されている。
- 2010年代以降自動車教習所などでプリウスがエコカーのために高速教習に使われることも多くなってきた。しかし、プリウスはハイブリッドカー専用に開発されたATのみの設定であり、なおかつ日本の小型自動車規格の車体の寸法(全長4,700mm以下・全幅1,700mm以下)を満たさないことから、コンフォート教習車が主に役割を担ってきた教習車のハイブリッド化に当たってはプリウスをベースとすることができず、既存の2代目カローラアクシオの同型車となる『トヨタ教習車』が発売された。
- 1999年以降、それまで子供向けに工場見学の記念品として配布されていたトヨタ・2000GTのモデルカーに代わり、記念品モデルカーとなっている。このモデルカーはプリウスのモデルチェンジに対応して2003年まで初代、2010年までが2代目、2014年現在は3代目プリウスがモデルとなっている。歴代のモデルカーはトヨタ会館に展示されている。なお、原料はバンパーの廃材であるとのこと。
- 東京箱根間往復大学駅伝競走においては2011年と2014年にZVW35型プラグインハイブリッドが、2016年と2017年にZVW50型が、2018年と2019年にZVW50型プラグインハイブリッドが、2023年にはZVW60型が大会車両に用いられている。
モータースポーツ
- SUPER GT
トヨタ・プリウス SUPER GT仕様 | |
---|---|
2012年モデル | |
2016年モデル | |
2019年モデル | |
ボディ | |
駆動方式 |
MR(2012〜2018年) FR(2019年〜2022年) |
パワートレイン | |
エンジン | V型8気筒 |
最高出力 | 約300PS |
変速機 | 6速シーケンシャル |
前 | ダブルウィッシュボーン |
後 | ダブルウィッシュボーン |
車両寸法 | |
ホイールベース | 2,700mm(2016年) |
全長 | 4620mm(2016年) |
全幅 | 1950mm(2016年) |
全高 | 1190mm(2016年) |
車両重量 | 1100㎏以上(2016年) |
SUPER GTのGT300クラスでトヨタのセミワークスとして参戦しているaprが用いていた、カローラアクシオの後継マシンとして2012年にJAF-GT(現GTA-GT300)規定の下に登場した。以降2021年現在まで、10年間に渡りプリウスによる参戦が続いている。グループGT3と戦う車両としては世界的にも珍しい5ドア[注 20]のGTカーであるが、動力分割方式のハイブリッドシステムを燃費にもパワーにも活かせる点と、エコカーゆえにドラッグが少ない点が強みとされる。
2012年から2015年までは、ZVW30型プリウスをベースに3.4リッターV8自然吸気のRV8Kエンジンをミッドシップに搭載し、助手席にハイブリッドシステムが搭載されていた。二次電池はリチウムイオン電池、タイヤは2014年まではヨコハマ、2015年からブリヂストンを採用している[67]。ハイブリッドシステムはトヨタとの協力により、市販車へのフィードバックも考慮するためレース専用品ではなく、アクア用のモーター、プリウスα用のバッテリー、カムリ用のECUなど、市販車と同じパーツを使用して構成されている。そのため同じハイブリッドカーでも、レース専用に開発したハイブリッドでGT300に参戦していたホンダのCR-Zと比較して、システムの重量が倍近く重くなっている。そのため、アンダーパワーだが軽量ボディを活かしてコーナリングやタイヤへの負担の軽さで勝負する他のJAF-GT勢に比べると、ストレートスピードで勝負するFIA-GT勢に近い戦い方になる。なお、リチウムイオンバッテリーの海外への持ち出しが法律上許されていなかったため、海外戦ではハイブリッドシステムを下ろした状態で参戦していた[68]。
2013年4月29日の第2戦(富士スピードウェイ)で、SUPER GT史上初のハイブリッドカーでの優勝車両となった[69]。2015年にも2勝を挙げ年間総合3位に入った。
2016年からはZVW50型をベースにしたプリウスが2台登場、30号車はリチウムイオン電池+ヨコハマタイヤ、31号車はキャパシタ+ブリヂストンタイヤと異なる仕様で参戦。キャパシタはリチウムイオン電池と異なり海外持ち出しが可能なため、海外戦でも戦闘力を維持する事が可能となった。2016年には31号車が1勝を挙げ年間ランキング2位の好成績を収めている。
2018年からは、30号車もリチウムイオン電池からキャパシタに変更。31号車が3度の表彰台を獲得。最終戦ではLEON RACINGとのチャンピオンを決めるサイドバイサイドのバトルに敗れ、惜しくも年間3位に終わっている。
2019年はベース車両をプリウスPHV GR SPORTに切り替え、エンジン搭載位置も規則変更[注 21]に従ってフロント(FR)に変更された。またエンジンも形式自体は同じV8自然吸気だが、レース専用設計のRV8Kから市販車ベースのレクサス・RC F GT3の2UR-G(5.4リッター)に切り替えられている。ただし30号車は試験的見地から、ハイブリッドを非搭載にしてエンジンのみで戦う[70]。トヨタのハイブリッドレーシングカーは最初期以外はミッドシップ車であり、aprもミッドシップ車以外を自社開発した経験が無かったため、フロントエンジン+ハイブリッドというパッケージング特有のセットアップに悩まされた。また第6戦まではエンジンを新規定に適合させることができなかったため、特認車両としての扱いでリストリクターを大幅に絞られていたこともあり[71]、デビュー年はチーム史上初めて2台ともノーポイントという苦境を味わった。その後は熟成を遂げて、2021年序盤はBopに苦しんでいたが性能調整が入った第6戦オートポリスで31号車が念願の初優勝を挙げた。2022年は30号車がGR86にマシンチェンジしたことで1台のみの参戦となり、また翌年よりベースマシンがLC500hに変更されることから参戦するのはこの年が最後となる。
2020年からJAF-GT車両として他チームから参戦しているGRスープラはaprが設計開発に深く関わっており、FRのプリウスPHVのシャシーコンポーネントが流用されている。またエンジンも共通のものを採用している[72]。
- その他
- 米国トヨタ販売は、GT300のプリウスにインスピレーションを受けたサーキット仕様を2016年SEMAショーで公開しているが、これの販売及び参戦はなされていない[73]。
- 2002年にスウェーデン〜ヨルダンまでの8000kmを走破するラリーレイドの『ミッドナイトサン・トゥ・レッドシー』にZVW20型プリウスが参戦。FIA公認の競技としては初のハイブリッドカーとされる。トップ・ギアの元編集者がステアリングを握り、無事完走を果たしている[74]。
- 富士スピードウェイで年2回開催される、燃費走行を重視したルールの『エコカーカップ』では採用率が最も高い車種となっている[75]。
- 韓国、スーパーレースにて2024年より5代目PHEVモデルを使ったワンメイクレースを3年間開催する。韓国国内では初のPHEV車両を使ったレースで、専用の改造を施したプリウスPHEVを使う。[76]
注釈
- ^ 同月11日、第3回気候変動枠組条約締約国会議(地球温暖化防止京都会議、COP3)にて京都議定書が採択された。
- ^ 運転席と助手席の間に埋め込まれた液晶画面で、オーディオやカーナビゲーション、エアコンなどの機能を表示、制御できる。セルシオ、ソアラ、クラウンのエレクトロマルチビジョンで実用化済み。
- ^ その後のトヨタブランドのハイブリッド乗用車でも、「THS-M」搭載車以外でタコメーターが搭載された例はカローラフィールダーハイブリッド/カローラアクシオハイブリッドの発売まで無かった。ちなみにレクサスブランドのハイブリッドカーの一部(例・CT200h等)には以前から搭載されている。
- ^ a b c d トヨタ自動車のウェブサイトではセダンにカテゴライズ(ラインナップ)されている。
- ^ カムリOEMのアルティスとプリウスαOEMのメビウス。
- ^ トヨタグループ以外では、2代目アクシオをベースとしたパイクカー、光岡・リューギにこのエンブレムが装着された。
- ^ いずれも現在は搭載車種がなく、後者が搭載された車種に至ってはモデルチェンジで「THS-II」に変更されている。
- ^ 冷媒用圧縮機をインバーター制御された電動機で運転する。
- ^ どちらも2015年12月発売型。
- ^ 発電用モーターを駆動に用いる関係から駆動時のエンジンの逆転を防ぐためエンジンとプラネタリーキャリアの間にワンウェイクラッチが設けられている。
- ^ 「S」にもメーカーオプションで追加可能。また、オプションで普通充電のみにすることも可能。
- ^ 「S」のみ、メーカーオプションで非装着を選択可能。
- ^ 2023年7月現在、2代目C-HRは、主に欧州向けとしてトヨタ・モーター ・マニュファクチャリング・ターキー(TMMT)でのみ生産。
- ^ 当時ディカプリオはトヨタのいくつかのCMに出演していた。その後テスラ・ロードスターやフィスカー・カルマに乗り換えている。
- ^ 2代目と3代目では排気量が異なるため、P3クラスの2代目には(1.5L)、P4クラスの3代目には(1.8L)と表記し区別されている。
- ^ ただし言語により発音は異なることがある(例として、英語では[ˈpriːəs](プリアスもしくはプリーアスと発音するのが近いほか、頭のpriはプライと発音されることもある)である)。
- ^ ラテン語の文法では-usで終わる名詞の複数形は-iiであり、それに従えばPriiは「プリイイ」と読む。なお、英語では[ˈpriːaɪ](プリアイもしくはプリーアイ)と発音するため、間違いとも言い切れない。
- ^ 初代にも数少ないながら例がある。
- ^ 2代目を2代連続で採用し、更に次代も4代目を採用。
- ^ ドア4枚以上の車両としても、2020年以降は唯一となる。
- ^ ベース車両からエンジン搭載位置を変更することが禁止された。
出典
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