タラノキ タラノキの概要

タラノキ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/02 22:05 UTC 版)

タラノキ
タラノキ
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : キク類 Asterids
: セリ目 Apiales
: ウコギ科 Araliaceae
: タラノキ属 Aralia
: タラノキ A. elata
学名
Aralia elata (Miq.) Seem. (1868)[1]
シノニム
和名
タラノキ(楤木)

名称

標準和名とされているタラノキについては、名称の由来はよくわかっていない[7]

別名は数が多く、タラ(楤、桵)[8]、ウドモドキ[9]ともよばれるが、地方によってはタランボウ[9][3]オニノカナボウ[10][9]タラッペ[9]、イギノキ[9]、トゲウドノキ[3]などの様々な呼び名がある。中国名は「遼東楤木」[1]。春に萌える若芽は、タラノメ(タラの芽)とよばれている。

分布と生育環境

日本北海道本州四国九州沖縄のほか、朝鮮半島中国千島列島サハリン東アジア地域に分布する[11]

平地から標高1500メートル以上までの山地の原野、河岸、森林、林道脇など明るい日当たりの良い山野に自生する[12][9][4]。特に、野原ややぶ、崩壊地などの荒れた場所に生える[5][6]。いわゆるパイオニア的な樹木であり、森林が攪乱をうけると、たとえば伐採跡地に素早く出現し、大小の集団を作って群生する[9]。栽培もされる[4]

特徴

落葉広葉樹の低木から高木で、高さは2 - 6メートル (m) 程度になり[9]、幹、枝、葉にも鋭いトゲが密にある[3][13]。生育環境にもよるが1年で20 - 60センチメートル (cm) ほど伸び、5年で3 mに達するものも珍しくはない。幹はあまり分枝せずにまっすぐに立ち、単一または分岐する[9]。細い幹の樹皮には、幹から垂直に伸びる大小の鋭い棘が多くつくのが特徴である[11][9]。幹が太いものは樹皮が縦に裂けて、見た目の印象が変わる[6]。春に萌える芽は枝の先に出る[3]

互生し、幹や枝の先端だけに集まってつき、夏には傘のように四方に大きく葉を開く[12][9][3]葉身は奇数2回羽状複葉で、全体の長さが50 - 100 cmにも達する大きなものであり[5]、全体に草質でつやはない。葉柄は長さ15 - 30 cmで基部がふくらむ。小葉は長さ5 - 12 cmの卵形から楕円形で先が尖り、裏は白みを帯び、葉縁に粗い鋸歯がある[11][14]。葉軸にはトゲが多い[4]。葉全体に毛が多いが、次第に少なくなり、柄と脈状に粗い毛が残る。秋には赤色や橙色に紅葉するが、紅葉しはじめは紫色になりやすい[4]

花期は晩夏(8 - 9月ごろ)[5]。幹の先端の葉芯から長さ30 - 50 cmほどある総状花序を複数つけ、多数の径3ミリメートル (mm) 程度の小さな白いを咲かせる[11][12][9]花弁は三角形で5枚、雄蕊は5本で突き出ている。自家受粉を防ぐため、雄蕊が先に熟して落ちた後、5個の雌蕊が熟し、秋には黒色で直径 3 mmほどの小さな球状の果実となり、10 - 11月ごろに熟す[12][15][5]

枝先にできる冬芽の頂芽は大きく円錐形で、側芽は互生して小さい[6]。冬芽は芽鱗は3 - 4枚に包まれている[6]。葉痕は浅いV字形やU字形で、維管束痕が30 - 40個ほど見られる[6]

分類上は幹に棘が少なく、葉裏に毛が多くて白くないものをメダラ (f. subinermis) といい、栽培されるものはむしろこちらの方が普通である。

品種

タラノキが本格的に栽培されるようになったのは1980年ごろと新しく、系統はごく少ない[16]。メダラと称するとげの少ない濃緑で多収系を選抜したものを、山梨県農業試験場八ヶ岳分場が全国に先駆けて育成普及した品種に、「駒みどり」と「新駒」がある[17]。その他にも、全国各地の農業試験場や民間栽培者が、その地方の優良系を選抜育成した品種も普及している[17]

  • 野生種 - とげが多いが、栽培種に比べて格段に風味、香りがよく非常に美味。収穫後の回復力が弱く、個体数が少なく希少である。
  • 駒みどり - 山梨県農業試験場で選抜育成されて1977年(昭和52年)に命名された品種[17]。とげはごく少なく、枝の下から3分の1のところにとげが集中するが、作業上の支障がない[17]。生育は旺盛で、剪枝後の発生枝は太く、本数が多い[17]。芽はやや小さい[18]
  • 新駒 - 1979年(昭和54年)に山梨県農業試験場で発見された突然変異種を、梨農育1号の系統名で選抜を続けて命名した品種[17]。特に芽が大きく、多収が期待できるが、新芽の形状が悪く、緑色がやや淡い[17]。他の品種にない特徴として、休眠作用がほとんどない点が挙げられ、芽の発生も早く揃い年末出荷も容易なことから、促成専用種に位置づけられる[19][17]
  • 蔵王系 - 民間個人による発見や選抜によって、山形市で育成された品種[20]
  • 才谷系 - 高知県山間農業試験場で選抜されたとげなし系の品種。毛状の小さなとげがあるが、軍手で支障が無く作業でき、新芽の質がよく、側芽の発生も多い[20]

  1. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Aralia elata (Miq.) Seem. タラノキ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月31日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Aralia mandshurica Maxim. タラノキ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月31日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 金田初代 2010, p. 82.
  4. ^ a b c d e 林将之 2008, p. 69.
  5. ^ a b c d e f g 高橋秀男監修 2003, p. 134.
  6. ^ a b c d e f 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 35.
  7. ^ 近田文弘『葉・実・木のかたちで調べる 樹木の名前大事典』くもん出版、2014年、101頁。ISBN 978-4-7743-2219-3 
  8. ^ デジタル大辞泉『』 - コトバンク
  9. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 農文協編 2004, p. 215.
  10. ^ a b c 貝津好孝 1995, p. 219.
  11. ^ a b c d 菱山忠三郎 2003, p. 20.
  12. ^ a b c d e f g 馬場篤 1996, p. 72.
  13. ^ 板木利隆『図解やさしい野菜づくり』家の光協会、1996年10月、279頁。ISBN 978-4259533946 
  14. ^ 金田初代 2010, p. 83.
  15. ^ a b c 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 220.
  16. ^ 藤嶋勇 1997, p. 44.
  17. ^ a b c d e f g h 農文協編 2004, p. 217.
  18. ^ 藤嶋勇 1997, p. 48.
  19. ^ 藤嶋勇 1997, p. 46.
  20. ^ a b c d e f 農文協編 2004, p. 218.
  21. ^ a b c d 農文協編 2004, p. 216.
  22. ^ a b c d 農文協編 2004, p. 219.
  23. ^ a b 農文協編 2004, p. 220.
  24. ^ a b c d e f g 農文協編 2004, p. 221.
  25. ^ a b c d 農文協編 2004, p. 222.
  26. ^ a b c d e f 農文協編 2004, p. 223.
  27. ^ a b c d 農文協編 2004, p. 224.
  28. ^ a b c 農文協編 2004, p. 225.
  29. ^ 農文協編 2004, p. 226.
  30. ^ タラノキ・立枯疫病、日本植物病名データベース、農業生物資源ジーンバンク
  31. ^ タラノキ・そうか病、日本植物病名データベース、農業生物資源ジーンバンク
  32. ^ タラノキ:そうか病、軟腐病、島根県農業技術センター
  33. ^ 文部科学省日本食品標準成分表2015年版(七訂)
  34. ^ 厚生労働省日本人の食事摂取基準(2015年版)
  35. ^ a b c d e f 主婦の友社編 2011, p. 226.
  36. ^ a b 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 154.
  37. ^ 講談社編『からだにやさしい旬の食材 野菜の本』講談社、2013年5月13日、28頁。ISBN 978-4-06-218342-0 
  38. ^ 金田初代 2010, p. 84.
  39. ^ a b c 鄭載勳(チョン・ジェフン)「春の食卓の王様タラの芽」『Koreana』第28巻第1号、The Korea Foundation、2021年、60-63頁、ISSN 1225-4592 
  40. ^ a b c 高橋秀男監修 2003, p. 135.
  41. ^ 吉川雅之、薬用食物の糖尿病予防成分 『化学と生物』 2002年 40巻 3号 p.172-178, doi:10.1271/kagakutoseibutsu1962.40.172
  42. ^ 新村出 編『広辞苑』(第三版)岩波書店、1983年11月1日、1402頁。 


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