シファクティヌス シファクティヌスの概要

シファクティヌス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/11 03:49 UTC 版)

シファクティヌス
生息年代: 中生代白亜紀前期~末期, 112–70.6 Ma
Xiphactinus audax (生態復元想像図)
地質時代
約1億1,200万– 7,060万年前
中生代白亜紀前期~末期)
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
上綱 : 顎口上綱 Gnathostomata
: 条鰭綱 Actinopterygii
亜綱 : 新鰭亜綱 Neopterygii
階級なし : (未整理[注釈 1]真骨類 Teleostei
(未整理)骨鰾亜区 Ostarioclupeomorpha
: イクチオデクテス形目 Ichthyodectiformes
: イクチオデクテス科 Ichthyodectidae
亜科 : イクチオデクテス亜科 Ichthyodectinae
: シファクティヌス属 Xiphactinus
学名
genus Xiphactinus
Leidy1870
タイプ種
X. audax
和名
シファクティヌス
本文を参照のこと
Xiphactinus audax の骨格化石標本スペインバルセロナの博物館&アートギャラリー所蔵)
Xiphactinus audax の骨格化石標本(スイスジュネーヴ自然史博物館所蔵)
Xiphactinus audaxシノニムPortheus molossus)の頭蓋骨化石標本
1. Xiphactinus audax
同じイクチオデクテス亜科の近縁種---
2. Ichthyodectes ctenodon イクチオデクテス
イクチオデクテス科(en)の近縁種---
3. Cladocyclus gardneri クラドキクルス
4. Chirocentrites sp. キロケントリテス

呼称

学名

属名の前半は古代ギリシア語: ξιφος (xiphos) 「剣」より。後半は詳細未確認だが通常 ακτις (aktis) 「光線、輝き」由来とされる。たとえば英語版では全体を "sword-ray" と訳している。

種小名 audax はラテン語で「勇猛な」の意。

和名

日本語では「シファクティヌス」「クシファクティヌス」などと呼ばれる。本項では、比較的普及していると思われる前者を標準名(標準和名)として扱う。

生物的特徴

分類

下位分類

Xiphactinus属の下位分類としては、現在(2010年時点)、下記の2が知られている。

表記内容は左から順に、学名仮名転写形、特記事項。

分布

西部内陸海路と呼ばれる当時浅海であった、アメリカ合衆国カンザス州アラバマ州ジョージア州地層から多数の化石が発見されており、また、ヨーロッパオーストラリアからも発見されている。ヨーロッパのものは、学生 Michal Matejka が2002年チェコのボローラデク(en)にて発見した、本種の新種である可能性を指摘される不完全な頭蓋骨化石がある。

彼らを含むイクチオデクテス科(en)は、海退により北アメリカ地域から Western Interior Seaway が閉じて陸地に変わっていく時代に、当地域でも他地域でも、棲息環境であった浅海を失うことで絶滅に追いやられたと推測されている。本種は白亜紀末期のマーストリヒシアンからは発見されず、イクチオデクテス科の全てもまた、中生代を終わらせた大絶滅を境(K-T境界)として完全に姿を消した。

形態・生態

体長[注釈 2]は約4.57- 6.10m (約15- 20 ft)[注釈 3]に達する大魚である。口腔に夥しい数の細かく鋭利なを有し、歯列は不規則である。イクチオデクテス亜科の特徴として、口は非常に大きく開くことが可能であった。その顔貌から「ブルドッグ・フィッシュ」と形容されることがあるが、これもイクチオデクテス亜科に共通する特徴である。

また、流線形の体と幅広の尾の相乗効果により、遊泳速度は最高時速60kmに達し、水面から飛び跳ねることも可能であったと考えられている。従って成魚のシファクティヌスはほとんど捕食されなかったと考えられる。大型のサメに攻撃されたとしても、十分に逃げ切るあるいは反撃することもできたと考えられる。

極めて捕食性が高く、俗な表現ながら、「海のギャング」という点において獰猛な肉食性のサメ[注釈 4]類に比肩したほとんど唯一の硬骨魚類である。

体内の魚

シファクティヌスは保存状態が極めて良好な複数の化石が出土している。なかには、シファクティヌスの半分ほどの目方がありそうな大きな魚(本種の個体の体長5mに対して獲物の魚が体長2m強、など)が胃の内容物として納まったまま、ともに化石となって出土した例も少なくない。これらは通常、獲物を呑み込んで間も無く何らかのアクシデントで命を落とし、その後すぐに埋没したものと考えられている。

こうした出土例の有名なものとして、化石発掘家ジョージ・スタンバーグ(en)が1982年アメリカ合衆国カンザス州の後期白亜紀層にて発見した化石、通称 "fish-within-a-fish (フィッシュ・ウィズイン・ア・フィッシュ)" がある。これは、体長3.96m (13 ft) の X. audax の胃の内容物として、同じイクチオデクテス亜科に属する体長1.83m (6 ft) のギリクス・アルクアトゥス (Gillicus arcuatus) がほぼ原形をとどめたままで発見されたというものである。なおこの標本は、カンザス州のヘイズにあるスタンバーグ自然史博物館 (Sternberg Museum of Natural History) に展示されている。★画像への直接外部リンクXiphactinus audax - Sternberg Museum of Natural History.

その一方で、当時の大型サメ類であるクレトキシリナ(またはクレトクシリナ)とスクアリコラックス(またはスクアリコラクス)の胃の内容物としても本種は多く発見されてもいて、これは衰弱したか、死んだものが食い荒らされた結果と考えられている[注釈 5]。これらの標本はカンザス大学自然史博物館(en)に展示されている。


出典

  1. ^ 分類学上、未整理の階級。階級未定の分類群。以下、同様。
  2. ^ 体長 (length) の数値が「標準体長(standard length。端- 尾柄部椎骨末端)」「全長(吻端- 尾鰭末端[自然伸張時])」「尾叉長(吻端- 尾鰭中央の最も窪んだ部分)」のいずれであるかについて、資料に記述無し。通常は標準体長が採用されるが、ここでの確証は無い。
  3. ^ 複数の資料で示されている数値の食い違いを正す目的で、米国が主な研究拠点であると考え、フィートを基準としてメートル換算。メートル基準であれば(矛盾するが)約4.5- 5m、最大6m。
  4. ^ 例えば、ジンベイザメは性質が大人しいことや小動物のみを食べる(濾過摂食)ことから、俗な表現で“草食系のサメ”と呼ばれることがある。しかし、広義ではシファクティヌスと同じく肉食動物に含まれる。
  5. ^ 大型のサメであっても、健康なシファクティヌスの成魚を捕食することは難しいと考えられるため。
  1. ^ Sepkoski, Jack (2002). “A compendium of fossil marine animal genera”. Bulletins of American Paleontology 364: 560. http://strata.ummp.lsa.umich.edu/jack/showgenera.php?taxon=611&rank=class 2009年2月27日閲覧。. 
  2. ^ Cope, E. D., 1872 - Oceansofkansas.com
  3. ^ Schwimmer, D. R., Stewart, J. D., & Williams, G.D. 1997 "Xiphactinus vetus and the Distribution of Xiphactinus Species in the Eastern United States" Journal of Vertebrate Paleontology 17(3):610-615


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