サトイモ サトイモの概要

サトイモ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/13 09:42 UTC 版)

サトイモ
サトイモの根茎
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 単子葉類 monocots
: オモダカ目 Alismatales
: サトイモ科 Araceae
: サトイモ属 Colocasia[1]
: サトイモ C. esculenta
学名
Colocasia esculenta (L.) Schott (1832)[2]
和名
サトイモ
英名
Taro[3]
Eddoe
下位分類群

品種

名称

和名サトイモの由来は、山地に自生していたヤマイモに対し、里で栽培されることから「里芋」という名が付いたとされる[7]。平安時代には「家芋 いえついも」と呼ばれており、最も身近なイモ類であった[8]

栽培の歴史が長いことから、日本各地でさまざまな別名がつけられている[9]。タロイモ[2]イエツイモ、ツルノコモ、ハスイモ[要出典]、タイモ(田芋)[7]、ハタイモ(畑芋)[7]、イエイモ(家芋)[7]、ヤツガシラ(八頭)など[10]、ハイモ[11]などのほか、ズイキイモとも呼ばれる[12]

英語では taro(ターロゥ:タロイモの意)、eddo(エドゥ:タロイモやサトイモの意)、dasheen(ダシン:サトイモ属 Colocasia を表わす同義語)などと呼ばれ[13]フランス語では colocase(コロカーズ)または taro(タロ:タロイモの意)とも呼ばれている[13]学名Colocasia は、ギリシャ語の「食物」を表す “colon” と、「装飾」を表す “casein” を合成した言葉が語源となっている。

特徴

掘り出されたサトイモ(掘る前に葉と芋茎は切り落とされている);
(1) 種イモ(親イモ)から出た芋茎の残り
(2) 種イモ(親イモ;食べるに値しない)
(3) 子イモから出た芋茎の残り
(4) 子イモ(芋の子)
(5) 孫イモ(芋の子)
1個の種イモから画像内全部が1として成長し殖えた。

大きな葉がついた葉柄が地上に生え、草丈は1.2 - 1.5メートル (m) ほどになる[14]。葉は蒸散が盛んで、表面はツルツルに見えるが実際には微細な突起のある構造をしているため、ロータス効果によって葉に落ちた雨水は表面張力によって丸い水滴となってコロコロと流れ落ちる[9]。地中部には食用にされる塊茎(芋)があり、細長いひげ根が生える。塊茎の発芽する部位の数は、通常頂点にある1か所だけである[15]。しかし他の小さな芽からも発芽することもある。日本のサトイモはを咲かせないと言われるが、実際には着花することがある。着花する確率は品種間の差が大きく、毎年開花するものから、ホルモン処理をしてもほとんど開花しないものまで様々である。着蕾したでは、その中心にではなくサヤ状の器官が生じ、次いでその脇から淡黄色の細長い仏炎苞を伸長させてくる。花は仏炎苞内で肉穂花序を形成する。

サトイモの食用になる芋は、茎が変形したもので塊茎といわれる部分である[3]。種芋から芽を出して成長するにつれ、葉柄の基部が肥大して親イモとなり、その親芋の周りを囲むように芽があり子イモを生じ、さらに子イモには孫イモがついて増えていくユニークな育ち方をする[16][17][14][3]。主に子イモを食べるもの、親イモを食べるもの、親イモと子イモの両方を食べる品種がある[18]

サトイモの栽培品種2倍体 (2n=28) および、3倍体 (2n=42) である[19][20][21]。着果はほとんど見られないが、2倍体品種ではよく着果する。種子ウラシマソウなどと比較してかなり小さい。


注釈

  1. ^ 葉に黒色や褐色の斑ができて、次第に枯れていく植物の病気。病原菌はカビ(糸状菌)の一種で、高温多雨が続くと発生しやすい特徴がある。
  2. ^ 古い文献ではムチンと称してきたが、ムチンは動物性粘液を指すもので、植物性粘液成分はムチレージである。
  3. ^ 抱えて持ち運べるほどの小型の専用の水車の中にサトイモを入れ、小川や用水路などで水の流れによって回転させ洗う場合もある。サトイモの皮は付着が緩やかでありこのようにして除けるが、サツマイモジャガイモはこのようにして皮を除くことは出来ない。

出典

  1. ^ 以上は『維管束植物分類表 = Syllabus of the Vascular Plants of Japan』(初版)北隆館、2013年4月、47-48頁。ISBN 978-4-8326-0975-4 
  2. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Colocasia esculenta (L.) Schott サトイモ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年9月3日閲覧。
  3. ^ a b c d e f 板木利隆 2020, p. 404.
  4. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Colocasia esculenta (L.) Schott 'Eguimo' エグイモ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年9月3日閲覧。
  5. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Colocasia esculenta (L.) Schott 'Rosea' ズイキ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年9月3日閲覧。
  6. ^ a b c d e f g 金子美登 2012, p. 186.
  7. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u 講談社編 2013, p. 189.
  8. ^ 『本草和名』(918年)
  9. ^ a b c d e f g 市川啓一郎 2021, p. 136.
  10. ^ 編集:佐藤一郎、浅野通有『漢字に強くなる本―これは重宝』光文書院 1978年9月
  11. ^ 胡麻を作らない話 週刊 上田
  12. ^ 『佐久市志民俗編下』(長野県佐久市、平成2年2月20日発行)1391頁
  13. ^ a b c d e f g h i j k l m 講談社編 2013, p. 188.
  14. ^ a b c d e f 藤田智監修 NHK出版編 2019, p. 113.
  15. ^ a b c d e f 市川啓一郎 2021, p. 137.
  16. ^ a b c d e f g h i j k l m 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 108.
  17. ^ a b c d 丸山亮平編 2017, p. 105.
  18. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 藤田智監修 NHK出版編 2019, p. 112.
  19. ^ 山口裕文、島本義也編著『栽培植物の自然史 : 野生植物と人類の共進化』(北海道大学図書刊行会、2001年)p.153 ISBN 9784832999312
  20. ^ 2倍体サトイモ(CoIocasia esculenta (L.) Schott)における4酵素のアイソザイムの遺伝分析」日本育種学会『Breeding science』48(3), pp.273-280, 1998年9月1日
  21. ^ 坂本寧男「イモと雑穀-作物と環境」『Tropics』1994年 3巻 1号 pp.19-32, doi:10.3759/tropics.3.19
  22. ^ a b c d e 丸山亮平編 2017, p. 104.
  23. ^ 小西達夫:世界のタロイモ -種の多様性と利用について- 有名野菜品種特性研究会 「有名野菜品種特性研究会(サトイモ)」報告
  24. ^ 佐賀県鳥栖市に自生しているサトイモについて」『佐賀大学農学部彙報』佐賀大学農学部 Vol.71 pp.113 -122
  25. ^ 平安時代初期の仏教僧侶空海(弘法大師)にちなむ伝説から、弘法芋と呼ばれる。別名「石芋」。県指定天然記念物 沓掛の野生里芋 青木村ホームページ(2018年12月7日閲覧)
  26. ^ 橋本征治「台湾蘭嶼におけるタロイモ栽培」『関西大学東西学術研究所紀要』第40輯, 2007年4月1日, pp.55-77
  27. ^ a b c d e f g h i 主婦の友社編 2011, p. 203.
  28. ^ サトイモ(里芋)|基本の育て方と本格的な栽培のコツ | AGRI PICK”. 農業・ガーデニング・園芸・家庭菜園マガジン[AGRI PICK]. 2021年3月16日閲覧。
  29. ^ “新しいサトイモの栽培方法を開発、収量が2倍に。農学部の岩井純夫教授らの研究グループ。”. 鹿児島大学. (2015年11月14日). http://www.kagoshima-u.ac.jp/topics/2014/01/post-614.html 2015年11月14日閲覧。 [リンク切れ]
  30. ^ “水田で育てたサトイモ、収穫量が畑作の2・5倍”. 読売新聞(2014年3月9日14時5分配信)のインターネットアーカイブ. https://web.archive.org/web/20140309125154/http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20140308-OYT1T00504.htm 2021年10月21日閲覧。 
  31. ^ 「転作サトイモ■たん水栽培に注目」『日本農業新聞』2021年10月5日3面
  32. ^ 横川末吉「高知縣の燒畑耕作」『人文地理』1955年 7巻 1号 pp.41-48, doi:10.4200/jjhg1948.7.41
  33. ^ 上野福男「五家荘の燒畑耕作」『地理学評論』1938年 14巻 2号 pp.93-120, doi:10.4157/grj.14.93
  34. ^ 板木利隆 2020, p. 405.
  35. ^ a b c d e f g h i j 金子美登 2012, p. 187.
  36. ^ 板木利隆 2020, p. 406.
  37. ^ サトイモ(里芋)|基本の育て方と本格的な栽培のコツ | AGRI PICK”. 農業・ガーデニング・園芸・家庭菜園マガジン[AGRI PICK]. 2021年2月10日閲覧。
  38. ^ 熊沢三郎、二井内清之、本多藤雄「本邦における里芋の品種分類 」『園芸学会雑誌』1956年 25巻 1号 pp.1-10, doi:10.2503/jjshs.25.1
  39. ^ a b c d e f g h i 主婦の友社編 2011, p. 201.
  40. ^ 吉野煕道「東アジアとオセアニアのタロ」『熱帯農業』2005年 49巻 5号 pp.317-322, doi:10.11248/jsta1957.49.317
  41. ^ a b c d e f 板木利隆 2020, p. 407.
  42. ^ a b c 講談社編『旬の食材:秋・冬の野菜』(講談社、2004年)pp. 84 - 85.
  43. ^ 【おらがぐるめ】いものこ汁 農香庵(秋田・横手市)芯から温まる家庭料理『産経新聞』朝刊2018年12月7日(東京面)
  44. ^ <食卓ものがたり>家庭で受け継ぐ郷土の味 いももち(岐阜県中津川市)東京新聞』朝刊2018年12月1日(暮らし面)2018年12月11日閲覧
  45. ^ 【ご当地 食の旅】田楽(熊本県阿蘇地域)大地の恵み 囲炉裏端で/つるの子芋・肉・魚に特製味噌『日本経済新聞』朝刊2021年11月6日別刷りNIKKEIプラス1(9面)
  46. ^ a b c d e f g h 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 109.
  47. ^ a b c 金子美登 2012, p. 189.
  48. ^ 金子美登 2012, p. 188.
  49. ^ a b c d e f g 主婦の友社編 2011, p. 200.
  50. ^ a b 月刊みんぱく編集部(編)『100問100答 世界の民族生活百科』(河出書房新社 1999年、ISBN 4-309-22351-6)pp.14-17
  51. ^ 文部科学省日本食品標準成分表2015年版(七訂)
  52. ^ 厚生労働省『 日本人の食事摂取基準(2015年版)
  53. ^ (料理メモ)里芋の豚汁 朝日新聞デジタル(2018年12月3日)2018年12月7日閲覧
  54. ^ 【継ぐメシ!つなぎたい郷土食】里芋きんとん(高知県安芸市)子孫繁栄願う縁起物『日本農業新聞』2021年12月4日8面
  55. ^ 鄭載勳(チョン・ジェフン)「トラン(里芋)の隠れた神秘」『Koreana』第28巻第3号、The Korea Foundation、2021年、63頁、ISSN 1225-4592 
  56. ^ 日本調理科学会編『料理のなんでも小事典』講談社、2008年9月20日第1版発行、ISBN 9784062576147
  57. ^ ぼうり 和歌山県”. www.maff.go.jp. うちの郷土料理:農林水産省. 農林水産省. 2024年1月2日閲覧。


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