サトイモ
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サトイモ | |||||||||||||||||||||
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サトイモの根茎
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分類(APG III) | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Colocasia esculenta (L.) Schott (1832)[2] | |||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||
サトイモ | |||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||
Taro[3] Eddoe | |||||||||||||||||||||
下位分類群 | |||||||||||||||||||||
品種 |
名称
和名サトイモの由来は、山地に自生していたヤマイモに対し、里で栽培されることから「里芋」という名が付いたとされる[7]。平安時代には「家芋 いえついも」と呼ばれており、最も身近なイモ類であった[8]。
栽培の歴史が長いことから、日本各地でさまざまな別名がつけられている[9]。タロイモ[2]、イエツイモ、ツルノコモ、ハスイモ[要出典]、タイモ(田芋)[7]、ハタイモ(畑芋)[7]、イエイモ(家芋)[7]、ヤツガシラ(八頭)など[10]、ハイモ[11]などのほか、ズイキイモとも呼ばれる[12]。
英語では taro(ターロゥ:タロイモの意)、eddo(エドゥ:タロイモやサトイモの意)、dasheen(ダシン:サトイモ属 Colocasia を表わす同義語)などと呼ばれ[13]、フランス語では colocase(コロカーズ)または taro(タロ:タロイモの意)とも呼ばれている[13]。学名の Colocasia は、ギリシャ語の「食物」を表す “colon” と、「装飾」を表す “casein” を合成した言葉が語源となっている。
特徴
大きな葉がついた葉柄が地上に生え、草丈は1.2 - 1.5メートル (m) ほどになる[14]。葉は蒸散が盛んで、表面はツルツルに見えるが実際には微細な突起のある構造をしているため、ロータス効果によって葉に落ちた雨水は表面張力によって丸い水滴となってコロコロと流れ落ちる[9]。地中部には食用にされる塊茎(芋)があり、細長いひげ根が生える。塊茎の発芽する部位の数は、通常頂点にある1か所だけである[15]。しかし他の小さな芽からも発芽することもある。日本のサトイモは花を咲かせないと言われるが、実際には着花することがある。着花する確率は品種間の差が大きく、毎年開花するものから、ホルモン処理をしてもほとんど開花しないものまで様々である。着蕾した株では、その中心に葉ではなくサヤ状の器官が生じ、次いでその脇から淡黄色の細長い仏炎苞を伸長させてくる。花は仏炎苞内で肉穂花序を形成する。
サトイモの食用になる芋は、茎が変形したもので塊茎といわれる部分である[3]。種芋から芽を出して成長するにつれ、葉柄の基部が肥大して親イモとなり、その親芋の周りを囲むように芽があり子イモを生じ、さらに子イモには孫イモがついて増えていくユニークな育ち方をする[16][17][14][3]。主に子イモを食べるもの、親イモを食べるもの、親イモと子イモの両方を食べる品種がある[18]。
サトイモの栽培品種は2倍体 (2n=28) および、3倍体 (2n=42) である[19][20][21]。着果はほとんど見られないが、2倍体品種ではよく着果する。種子はウラシマソウなどと比較してかなり小さい。
注釈
- ^ 葉に黒色や褐色の斑ができて、次第に枯れていく植物の病気。病原菌はカビ(糸状菌)の一種で、高温多雨が続くと発生しやすい特徴がある。
- ^ 古い文献ではムチンと称してきたが、ムチンは動物性粘液を指すもので、植物性粘液成分はムチレージである。
- ^ 抱えて持ち運べるほどの小型の専用の水車の中にサトイモを入れ、小川や用水路などで水の流れによって回転させ洗う場合もある。サトイモの皮は付着が緩やかでありこのようにして除けるが、サツマイモやジャガイモはこのようにして皮を除くことは出来ない。
出典
- ^ 以上は『維管束植物分類表 = Syllabus of the Vascular Plants of Japan』(初版)北隆館、2013年4月、47-48頁。ISBN 978-4-8326-0975-4。
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- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Colocasia esculenta (L.) Schott 'Eguimo' エグイモ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年9月3日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Colocasia esculenta (L.) Schott 'Rosea' ズイキ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年9月3日閲覧。
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- ^ 『本草和名』(918年)
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- ^ 編集:佐藤一郎、浅野通有『漢字に強くなる本―これは重宝』光文書院 1978年9月
- ^ 胡麻を作らない話 週刊 上田
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- ^ a b c d e f 市川啓一郎 2021, p. 137.
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- ^ 山口裕文、島本義也編著『栽培植物の自然史 : 野生植物と人類の共進化』(北海道大学図書刊行会、2001年)p.153 ISBN 9784832999312
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- ^ 鄭載勳(チョン・ジェフン)「トラン(里芋)の隠れた神秘」『Koreana』第28巻第3号、The Korea Foundation、2021年、63頁、ISSN 1225-4592。
- ^ 日本調理科学会編『料理のなんでも小事典』講談社、2008年9月20日第1版発行、ISBN 9784062576147
- ^ “ぼうり 和歌山県”. www.maff.go.jp. うちの郷土料理:農林水産省. 農林水産省. 2024年1月2日閲覧。
サトイモと同じ種類の言葉
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