日本近代の「教養」とは? わかりやすく解説

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日本近代の「教養」

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/25 02:44 UTC 版)

教養」の記事における「日本近代の「教養」」の解説

明治初期学制定められ近代的な教育体系創出されていったが、そこでは欧米文物(特に科学技術など)を学ぶことが最優先とされた。日本の伝統的な教養中心であった漢学軽視され欧米教養であるギリシャ・ローマ古典に対してそれほど関心寄せられなかった。 日本題名に「教養」と冠した書籍探してみると、『国民教養』(加藤咄堂1901年)が古い例で『女子教育家庭教養法』(秋山七朗ほか、1902年)、『嬰児教養』(子女教養全書下田歌子1902年)、『人格教養』(青年修養叢書大原里靖、1907年)などの例がある。20世紀始めころに、子供教え養う教育法という意味と、人格結び付いた教養という意味と、両者用法使われていたことがうかがわれる明治末から昭和戦前期旧制高校では読書による人格形成目標とする教養主義傾向がみられた。西洋哲学流行しカントの『純粋理性批判』や西田幾多郎の『善の研究』などの哲学書、文芸書当時必読であったまた、教養主義という学生文化牽引には、総合雑誌大きな役割果たした。『中央公論』『改造』『経済往来日本評論)』等の雑誌載る論文読まれた。こうした総合雑誌難解な哲学書をときには原書読み学生同士夜を徹して議論をすることもあった。全国から学生集まり、寮で共同生活を送る旧制高校においてお互いに見栄を張る要素もあったが、共通の会話成立させ、互い向上を図るものでもあった。 夏目漱石日本・中国イギリス古典文芸通じ俳句漢詩書画たしなむ教養人であった漱石周囲育った阿部次郎寺田寅彦らは個人人格重んじる立場大正教養主義呼ばれた1938年、「現代人現代的教養」を目的とした岩波新書刊行されたが、岩波書店創業者岩波茂雄漱石門下であった河合栄治郎軍部台頭する暗い世相の中で、学生教養主義生きるべく、『学生に与う』『学生叢書』を刊行した。『学生叢書』は昭和戦前期教養主義マニュアル本とされた。 第二次世界大戦後旧制高校廃止されかわりに大学教養課程教養部)ができたが、一種人格修練場であったかつての旧制高校雰囲気傾向1970年代ごろまで続いた。『世界』『中央公論』『展望』『思想の科学』『朝日ジャーナル』『潮』などの総合雑誌を読むことが、学生半数超えるわけではないが(3割程度という)、規範文化という位置持っていた。やがて大学教養課程科目は、一般教育科目中心に俗にパンキョウ呼ばれ専門課程迎え前に消極的に履修する必修科目群という扱いを受けることが多くなった。 1958-1960年に刊行され叢書現代教養全集』(筑摩書房)から当時教養観がうかがえる全集内容は、戦後社会戦争記録マスコミ日本人論友情恋愛・結婚文学日本近代日本の文化経済教育宇宙時代など諸般事物におよぶ。ここでは、日本欧米古典通じとともに現代の政治経済・社会に及ぶ諸問題一家言を持つような人(丸山真男林達夫桑原武夫など)が「教養人」と考えられていたようである。 1960年代ごろまで大学でみられたこうした教養主義は、高等教育マス段階になり大学大衆化していった変化ビジネス技術学などが導入され始めた変化ホワイトカラー人口と農漁村人口逆転した変化とともに廃れていった。それにともなって文化が持つ3つの作用適応」(適合実用性)、「超越」(理想主義)、「自省」(自身妥当性正当性正統性自問すること)のうち、適応肥大化し、超越自省衰退していったという。

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