げんしわくせいけい‐えんばん〔‐ヱンバン〕【原始惑星系円盤】
原始惑星系円盤
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/16 20:59 UTC 版)
原始惑星系円盤(げんしわくせいけいえんばん、英: protoplanetary disk)[3] は、新しく形成された恒星、おうし座T型星やハービッグAe/Be型星を取り囲む濃いガスと塵からなる回転する星周円盤である。ガスやその他の物質は円盤の内縁から恒星の表面へ向かって落下しているため、原始惑星系円盤は恒星自身への降着円盤と捉えることもできる。この過程は、惑星が形成される際に起きていると考えられる降着過程とは異なるものである。外部から照らされて光蒸発を起こしている原始惑星系円盤は proplyd と呼ばれる。
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原始惑星系円盤
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/04 23:22 UTC 版)
三重連星を取り囲んで巨大な原始惑星系円盤が存在するという珍しい構造を持ち、連続スペクトルの観測結果から塵円盤は半径400 au、ガスは半径1300 auに亘って広がっているとされている。 2020年9月、カナダのビクトリア大学のジャーチン・ビー、工学院大学の武藤恭之らの研究チームは、アルマ望遠鏡を用いた観測から、原始惑星系円盤の中に軌道傾斜角の異なる3つの塵のリングが存在するとした研究結果をアストロフィジカルジャーナル誌に発表した。リングの半径は、内側から46 au、188 au、338 auで、最も外側のリングは既知の塵のリングとしては最大の半径を持つ。3つのリングはいずれも3連星の軌道面に対して大きく傾いており、中でも最も内側のリングは他の2つのリングに対しても大きく傾いていることが判明した。また同年同月、イギリスのエクセター大学のステファン・クラウスらのチームも、アルマ望遠鏡と超大型望遠鏡 (VLT) を使ったサブミリ波と近赤外線による観測から、内側のリングが外側の領域に影を落としていることを明らかにし、内側のリングが連星の軌道面や外側のリングに対して傾いているとする研究結果をサイエンス誌に発表した。惑星の有無に関しては、ビーのグループが3連星の影響だけではこのような構造は形成できないとして肯定的な見解であるのに対して、クラウスのグループは必ずしも惑星を必要としないとするシミュレーション結果を示しており、見解が分かれている。
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原始惑星系円盤
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/12 16:48 UTC 版)
原始惑星系円盤は、恒星風、および入射する電磁放射による加熱によって散逸しうる。輻射は円盤中の物質と相互作用して外向きに加速する。この影響は、近傍にO型星やB型星があったり、円盤の中心にある原始星が核融合反応を開始するなどして、十分な輻射強度がある場合のみ顕著となる。 円盤はガスと塵からできている。水素やヘリウムのような軽い元素が大部分を占めるガス成分が主に光蒸発の影響を受けて散逸し、円盤における塵とガスの存在比率が上昇する。光蒸発は、原始惑星系円盤の進化に影響を及ぼす過程の一つである。 中心の恒星からの輻射は降着円盤の粒子を励起する。円盤の照射は、重力半径 ( r g {\displaystyle r_{g}} ) として知られている安定性の長さスケールを生じさせる。重力半径の外側では、粒子は円盤の重力から脱出するのに十分な程に励起され、円盤から蒸発する。106 – 107 年経過すると、重力半径における粘性降着率は光蒸発による質量損失率を下回る。そうなると重力半径の周辺で円盤にギャップが形成され、内側円盤は中心星へと降着するか、もしくは重力半径へと拡散して蒸発する。こうして、重力半径まで広がる円盤内側の空洞が形成される。一度円盤内側の空洞が形成されると、外側円盤は非常に急速に消失する。 円盤の重力半径は以下の式で表される。 r g = ( γ − 1 ) 2 γ G M μ k B T ≈ 2.15 ( M / M ⊙ ) ( T / 10 4 K ) a u {\displaystyle r_{g}={\frac {\left(\gamma -1\right)}{2\gamma }}{\frac {GM\mu }{k_{B}T}}\approx 2.15{\frac {\left(M/M_{\odot }\right)}{\left(T/10^{4}\ {\rm {K}}\right)}}\ {\rm {au}}\!} ここで、 γ {\displaystyle \gamma } は比熱比 (単原子分子ガスの場合 5/3)、 G {\displaystyle G} は万有引力定数、 M {\displaystyle M} は中心星の質量、 M ⊙ {\displaystyle M_{\odot }} は太陽質量、 μ {\displaystyle \mu } はガスの平均分子量、 k B {\displaystyle k_{B}} はボルツマン定数、 T {\displaystyle T} はガスの温度、au は天文単位である。 この効果のため、星形成領域における大質量星の存在は若い星状天体の周りの円盤における惑星形成に大きな影響を及ぼすと考えられるが、これが惑星形成の効率を減速するものなのか、あるいは加速するものなのかははっきりとしていない。
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原始惑星系円盤
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/23 20:57 UTC 版)
おうし座HL星が原始惑星系円盤を持つことは、1975年の波長 2〜4 マイクロメートルの赤外線での分光観測から示唆されていた。この観測はアンチモン化インジウムを使用した光起電性の検出器の開発によって可能となったものであった。この観測では29個の非常に若い恒星の観測が行われ、そのうちおうし座HL星のみが氷粒子の 3.07 µm での吸収が期待される位置に強い吸収の特徴を示した。この吸収は、水分子中の酸素と水素の結合の振動周波数に起因するものである。1982年のサーベイ観測では、おうし座HL星はおうし座DG星とみずがめ座V536星と並んで、最も大きく偏光したおうし座T型星のひとつである事が明らかにされた。 おうし座HL星の周りのガス円盤は、1986年に一酸化炭素 (CO) の干渉計を用いた観測によって発見された。1985年と1986年にオーエンスバレー電波天文台(英語版)のミリ波干渉計を用いて行われた観測に基づき、星周円盤の質量の範囲は太陽質量の 0.01〜0.5 倍で、最も可能性が高い値は 0.1 太陽質量、また円盤の半径は 200 au と推定された。円盤内のガスとダストの温度はおそらくは数十 K 程度であると考えられる。このガスは、およそ1太陽質量の恒星に重力的に束縛されており、周囲をケプラー回転していることが発見された。一酸化炭素と水素分子などの分子の双極分子流(英語版)も観測された。さらに双極流の中には鉄も第一鉄 (Fe2+ あるいは Fe(II)) として知られる形態で存在しているのが発見された。 2014年には、アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計 (ALMA) によるサブミリ波の波長での原始惑星系円盤の画像が公開され、円盤内に複数の溝で区切られた同心円状の明るい環が存在することが明らかになった。この円盤はおうし座HL星の年齢から予想されるよりもずっと進化が進んでいるように思われ、惑星形成過程はこれまでに考えられていたよりも速く進行している可能性があることを示唆している。ALMA の長基線試験観測キャンペーンのプログラムサイエンティストであるキャサリン・ヴラハキスは、「最初にこの画像を目にしたときには、私たちはそのあまりの高精細さに言葉を失うほど驚きました。おうし座HL星は100万歳に満たない若い星ですが、この画像を見るとこの星のまわりでは明らかに惑星ができているように見えます。このたった1枚の画像が、惑星形成の研究に革命をもたらすでしょう。」と述べている。 同年の研究では、原始惑星系円盤の複雑な磁場が大きな降着率を引き起こしている可能性があることが示唆されている。
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原始惑星系円盤
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/23 20:52 UTC 版)
うみへび座TW星は誕生から800万年とかなり若い天体である。そのため、うみへび座TW星の周辺には木星の約50倍の質量に相当する原始惑星系円盤がある。これは年齢を考えるとかなり大量に惑星の材料となりうる塵が残っている事になる。最低でも約60億km (40au) の距離から広がり、その半径は約330億km (220au) に達する。2013年のハッブル宇宙望遠鏡による0.5から2.22μmの波長領域における観測では、中心から約120億km (80au) の距離に幅約30億km (20au) の隙間がある事が分かった。これは、この軌道において形成されつつある惑星の重力的影響によるものと考えられている。軽い恒星でこれほど離れた距離においての円盤の隙間が発見されたのは初めてである。 しかし、この観測結果は従来の惑星形成理論とは矛盾が生ずる事になる。典型的な理論では惑星の形成に1000万年がかかり、これは恒星から距離が離れるほどより長くなる。この事は、うみへび座TW星の年齢に対して矛盾が生ずる。またアタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計の観測によれば、恒星から約88億km (59au) の距離までは砂粒より大きな粒子が存在するが、それより外側では見つかっていない。特に外縁は円盤の隙間の内縁に程近く、惑星が形成されつつあるのにその外側の領域では砂粒より大きな粒子が無い事は、従来の理論と相容れない事になっている。なお、これとは別に円盤の一部における重力的不安定から一気に収縮が進む事によって惑星が形成されるという理論がある。この場合、惑星形成には数千年しかかからないが、これで誕生するのは地球の数百倍の質量を持つ惑星であり、これは太陽系の惑星で言えば木星や土星に相当する木星型惑星である。しかし、隙間から推定される惑星の質量は地球の6倍から28倍であり、これは地球型惑星から天王星型惑星に相当する質量であり、これについても矛盾が生じている。現在のところ、この矛盾を解消する説明や観測結果は存在しない。 なお、2007年にはマックスプランク研究所のチームが、約610万km (0.041au) のところを3.56日の公転周期で公転する、木星の1.2倍の質量を持つ惑星が視線速度法によって発見したと発表された。しかし、2008年にスペインの研究チームは、視線速度の変化は惑星の公転によるものではなく、うみへび座TW星の自転とおうし座T型星によく見られる巨大な黒点によるものであり、したがって惑星は存在しないという研究成果が出されている。 2013年には、アルマ望遠鏡が世界で初めて原始惑星系円盤でのスノーラインの直接撮影に成功した。捉えたのは一酸化炭素のスノーラインで、N2H+ 分子から放出されるミリ波を観測する事によって間接的に導き出された。N2H+ は一酸化炭素と反応しやすいため、N2H+ がある場所は一酸化炭素が凍り付いている事が分かる。観測の結果、約6.8億km (4.5au) から約45億km (30au) の範囲には水の氷が、それより外側には一酸化炭素の氷が存在する事が分かった。通常、原始惑星系円盤のスノーラインは赤道面の狭い範囲にしか存在せず、円盤の上下に存在する高温のガスが円盤の物質からの電磁波を遮断する事で観測が難しくなっているが、アルマ望遠鏡は N2H+ が放出するミリ波に強い感度を持っていることから観測が可能になった。 2016年に、1つの太陽系外惑星が発見された。海王星よりもやや大きい質量を持ち、恒星からは22au離れている。 うみへび座TW星の惑星名称(恒星に近い順)質量軌道長半径(天文単位)公転周期(日)軌道離心率軌道傾斜角半径b 23.72 M⊕ 22 — — — ~4.25 R⊕ (内円盤) 40—70 au — — (外円盤) 90—220 au — — 2019年には国立天文台特任助教の塚越崇らの研究チームによって、原始惑星系円盤の中心から52 auの位置に長さ4 au、幅1 auほどの小さな電波源が発見された。これは、既に形成されつつある海王星サイズの惑星を取り巻く「周惑星円盤」、あるいは円盤内で生まれたガスの渦に溜まった塵で今後惑星になりうる構造のいずれかであると考えられている。
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