三省堂 大辞林 |
たんじょう ―じやう 0 【誕生】
物語要素事典 |
誕生
『瓜姫物語』(御伽草子) 子のない翁媼が、畑で美しい瓜を一つ取り、「これを我らの子としよう」と戯れて、塗桶に入れて置く。その後、翁媼は、ともに子を授かる夢を見て、塗桶を取り出して見ると、瓜は美しい姫君になっていた。
『親指姫』(アンデルセン) 子を望む女が、魔法使いからもらった大麦の粒一つを鉢に植える。チューリップのような花が生え出、めしべの上に親指ほどの女の子が見出された。
『ジャータカ』第380話 一つだけ大きくふくらんだ蓮を、苦行者が気がかりに思い、池に入って蓮の花を押し開き、少女を見つける。苦行者は少女に「気がかり」という名前をつけ、育てる→〔名前〕3c。
『竹取物語』 竹取の翁は野山に入って竹を取り、さまざまなことに使った。ある時、根もとの光る竹が一筋あったので、近寄って見ると、筒の中が光り、三寸ほどの女児がいた〔*『竹取物語』では、「竹を切った」と明記されているわけではない。『神道集』巻8−47「冨士浅間大菩薩の事」では、管竹の翁・加竹の嫗の家の後庭の竹林から、五〜六歳の幼女が現れた、とする。『海道記』では、鶯の卵から生まれる〕。
*竹の中から誕生する→〔川〕2の『後漢書』列伝第76「西南夷伝」。
ハイヌウェレの神話 アメタが夢告に従って、拾った椰子の実を土に埋めると、数日で木となり花が咲く。アメタは花から酒を造ろうとするが、指に怪我をして血が花に滴る。血と花の汁が混じり合ったところから人間の形ができはじめ、九日後には五体完全な少女になる(インドネシア・ウェマーレ族の神話)。
『変身物語』(オヴィディウス)巻10 父親キニュラスと交わり身ごもったミュラは、曠野を九ヵ月間さすらった後、神に祈って没薬の木に姿を変える。やがてその木に割れ目が生じ、中からアドニスが生まれ出る〔*『ギリシア神話』(アポロドロス)第3巻第14章では、娘の名はスミュルナ、父の名はテイアース。スミュルナが没薬の木に姿を変えてから十ヵ月後に、アドニスが誕生したと記す〕。
『ペンタメローネ』(バジーレ)第5日第9話 王子が老婆からもらったシトロンを切ると、そこから美しい乙女が生まれ出、王子はこの乙女と結婚する。
『呂氏春秋』巻14「孝行覧・本味」 妊娠中の女が、水没する村を脱出した後に、空桑(うつろのある桑の木か?)と化した。桑を摘む娘が、空桑の中に嬰児が誕生しているのを見つけた。嬰児は伊尹と名づけられ、成長後、殷の湯王に仕えた。
★2.卵から生まれる。
『三国遺事』巻1「紀異」第1 河伯の娘柳花は五升ほどの大きな卵を産み、その卵の殻を破って高句麗の始祖東明王朱蒙は誕生した。また、楊山のふもとに卵があり、白馬が跪いていた。人々が卵を割ると、端正な男児が出てきた。これが新羅の始祖王赫居世である。
*→〔卵〕3に記事。
★3.石から生まれる。
『淮南子』逸文 禹の妻は石に化したが、その石の北側が破れて啓が誕生した。
『西遊記』百回本第1回 花果山の頂上にある仙石が霊気をはらみ、中から孫悟空が誕生した。
『ギリシア神話』(アポロドロス)第1巻第3章 プロメテウスあるいはヘパイストスが、ゼウスの額を斧で撃ち、そこから、女神アテナが武装した姿で生まれ出た。
『大唐西域記』巻12「瞿薩旦那国」 瞿薩旦那国の王は、毘沙門天の神像の額の上が割れて、そこから誕生した。
『イシスとオシリスの伝説について』(プルタルコス)12 父神ゲブ(=クロノス)と母神ヌト(=レイア)との間に、セト(=テュポン)が誕生した。その誕生は異常で、胎内にあった日数も長く、産道から生まれたのでもなかった。セトは、轟音とともに母神ヌトの脇腹を突き破って、跳び出した。
『王書』(フェルドウスィー)第2部第3章「英雄ロスタム」 王女ルーダーベはザールの子を身ごもったが、難産で苦しんだ。霊鳥スィーモルグが来て、「ルーダーベを酒で眠らせよ。短剣で彼女の腹を割いて子供を取り出せ。生まれたら、傷口を縫い合わせて薬を塗れ」とザールに教え、無事に男児が誕生した。ルーダーベは「私は楽になりました(ロスタム)」と言ったので、男児は「ロスタム」と名づけられた。
『過去現在因果経』巻1 摩耶夫人がルンビニ園の無憂樹の下に到り、右手をあげて樹の枝を引こうとした時、その右脇を開いて釈迦は生まれた〔*『今昔物語集』巻1−2に類話〕。
シーザー(カエサル)の伝説 ジュリアス・シーザー(=ユリウス・カエサル)は生まれる時、母親の腹部を切り開いて取り出された。シーザーはローマの初代皇帝アウグストゥスの父で、帝王ともいうべき地位にあったので、以後この方法による出産・誕生を、「帝王切開」と呼ぶようになった。
『東海道名所記』巻3 臨月の女が親里へ行く途中、盗人に殺される。法師が憐れんで女の腹を割き、子を取り出して育てる。子は十五の時に出生の事情を知り、母親の敵を討ち出家する〔*→〔白髪〕1の頭白上人の伝説に似る〕。
*月足らずで母の腹を裂いて誕生する→〔あり得ぬこと〕2の『マクベス』(シェイクスピア)第4〜5幕。
*耳から誕生する→〔耳〕4の『ガルガンチュア物語』第一之書(ラブレー)第6章。
『ヴォルスンガ・サガ』2 レリル王の后は、身ごもって六年を経ても子を生み落とすことができず、やむなく切開して子(ヴォルスング)を取り出した。
『かるかや』(説経)「高野の巻」 三国一の醜女であるあこう御前が、日輪に申し子して産んだ男児(後の空海)は、三十三ヵ月胎内にいた後に誕生した。
『義経記』巻3「熊野の別当乱行の事」 弁慶は母の胎内に十八ヵ月いて生まれた〔*『橋弁慶』(御伽草子)は三十三ヵ月、『じぞり弁慶』『弁慶物語』は三年三ヵ月〕。
『封神演義』第12回 陳塘関総兵李靖の夫人殷氏は、妊娠三年六ヵ月になっても出産しない。ある夜彼女は、「老道士が霊珠を胎内に入れる」と夢に見て産気づき、肉毬を生み落とす。夫李靖が刀で肉毬を切ると子供が飛び出、ナタ(ナタク)と名づけられる→〔成長〕1a。
『南総里見八犬伝』第6輯巻之3第55回 武蔵国赤塚城主千葉介自胤の家老粟飯原(あいはら)胤度は、馬加大記によって謀殺された。粟飯原の妾調布(たつくり)は、身ごもって三年を経ても出産せぬまま追放され、相模国足柄郡の犬坂という山里で男児(後の犬坂毛野)を産んだ。
『イリアス』第18歌 トロイアの英雄ヘクトルと、その友プリュダマス(ポリュダマス)とは同じ夜に誕生し、互いに親しい間柄だった。ヘクトルは勇将、プリュダマスは知将として、二人は力を合わせアカイア軍と闘った。
『日本書紀』巻7成務天皇3年正月 成務天皇と大臣武内宿禰とは同日に誕生した。そのため、天皇は特に武内宿禰を寵愛した。
*→〔同日・同月〕1a。
『子捨ての話』(小泉八雲) 百姓夫婦が貧しさゆえ子供を育てられず、子供が生まれるたびに川に流して、六人の子供を殺す。そのうち暮らし向きが良くなったので、七人目に生まれた男児は、捨てずに育てる。夏の月夜、百姓は生後五ヵ月の男児を抱いて庭に出、「いい夜だ」と言う。すると男児は百姓を見上げて、「お父っつあんが最後に私を捨てたのも、こんな月夜の晩だったね」。
『三国伝記』巻7−7「阿闍世王事」 頻婆裟羅王が、召しに応ぜぬ仙人を殺す。仙人はやがて頻婆裟羅王の太子として生まれる。これが阿闍世王である。阿闍世王は父頻婆裟羅王を殺して王位を奪う。
『太平記』巻25「宮方の怨霊六本杉に会する事」 後醍醐帝側近の怨霊たちの天下騒乱の企てにより、大塔宮護良親王が足利直義の内室の腹に男子となって生まれる。ただし、この子は四歳で早世する(巻30「将軍御兄弟和睦の事」。史実は五歳)。
『日本霊異記』中−30 女が、行基に命じられて自分の子を淵に捨てると、子は「あと三年苦しめてやりたかったのに」と怒る。これは、前世で女に物を貸したままになっていたのを取り戻すために、彼女の子として生まれてきたのであった。
『二人兄弟の物語』(古代エジプト) 妻の裏切りによってバタは命を落とす。彼は、牛や木に変身し、ついには切り倒された木の切り屑となって妻の口中にとびこみ、妻は身ごもる。やがて男子(バタの化身)が誕生し、成長後、妻の悪行を人々に語る→〔魂〕1b。
『本朝二十不孝』(井原西鶴)巻3−4「当社の案内申す程をかし」 幼い頃から油を飲む奇癖のある子がいた。この子が五歳の着袴の祝いの席上、大勢の人達の前で「私の親は、五年前に油売りの商人を切り殺して八十両を奪い取って以来、裕福になった」と暴露した。
『もう半分』(落語) 老人が居酒屋で、いつも茶碗酒を「もう半分、もう半分」と注文して飲む。ある夜、居酒屋夫婦が老人の持つ五十両入りの財布を奪い(→〔身売り〕1)、老人は居酒屋を恨んで川に身を投げる。翌年、居酒屋夫婦に老人そっくりの赤ん坊が生まれ、毎晩、行燈の油を茶碗にそそいで、なめる。見咎める居酒屋亭主に、赤ん坊は茶碗を差し出して、「もう半分」。
★8a.鹿から生まれる。
大宮姫の伝説 大宮姫は鹿から生まれた(*鹿が仙人の水を飲んで姫を産んだ、閼伽の水を飲んで姫を産んだ、などの伝えがある)。そのため足先が鹿同様二つに割れていた。姫は都に出て天子様の奥方になったが、鹿の足であることがばれ、故郷へ戻った。「鹿児島」は、もとは、この大宮姫の生まれた土地の名だった。「鹿の子の国」という意味である(鹿児島県揖宿郡開聞町)。
『今昔物語集』巻5−5 仙人が身体を洗った水や小便のあとをなめた鹿が懐妊して、女児を産んだ。女児は成人して王妃となり、「鹿母夫人」と呼ばれた。
『述異記』(任�ム)巻下−275 梁の時代。鹿が女児を地面に産み落としたのを、ある人が見て、女児を拾い育てた。女児は非凡な性質で、長じて道士となり、「鹿娘(ろくじょう)」と名乗った。鹿娘の死後、武帝が祭りをするために棺を開くと、異香があり、遺骨はなくなっていた。
『オーメン』(ドナー) 悪魔の子ダミアンは、外交官ロバート夫婦の子として育てられる。ダミアンの出産に立ち会った神父が、ロバートに「ダミアンの母親は山犬だった」と教える。ロバートがカメラマンのジェニングスとともに、ダミアンの母親の墓をあばくと、山犬の白骨死体があった。
★8c.魚から生まれる。
『マハーバーラタ』第1巻「序章の巻」 アプサラス(水の精)アドリカーは、バラモンの呪いで魚にされ、河に落ちたウパリチャラ王の精液を飲んで妊娠する。魚は漁師の網にかかり、岸に打ち上げられると、腹から人間の男女の赤ん坊が誕生した。男児はマツヤ・女児はサティヤヴァティーと呼ばれた。
★9.火の中で誕生する。
『今昔物語集』巻1−15 提何長者の妻は男児を身ごもっていたが、六師外道によって毒殺される。彼女を火葬する炎の中から十三歳ほどの童が現れ、自然太子と名づけられる。母無くして生まれたからである。
『古今著聞集』巻6「管絃歌舞」第7 博雅三位が生まれた時、天に音楽の声が聞こえた。
『三宝絵詞』下−30 天台大師(=智��)が生まれた時、光が室に満ちた。また、二人の僧が来て「必ず出家すべし」と言い、消え失せた。
『河童』(芥川龍之介)4 河童の国では、お産の時、父親が母親の生殖器に口をつけ、腹の中の子供に「お前はこの世界へ生まれて来るかどうか」と問う。子供が「生まれたくない」と答えると、産婆が生殖器に注射をし、母親の腹はへこむ。
『青い鳥』(メーテルリンク)第5幕第10場 チルチルとミチルは青い鳥を探して旅に出、いろいろな所を巡って、最後に「未来の王国」を訪れる。そこには、この世の終わりまでに地上に誕生すべき大勢の子供たちがいて、生まれる順番を待っている。彼らは発明の才・技術・あるいは病気など、必ず何かを持って生まれることになっていた。
*誕生時に掌に物を握っている・掌に文字がある→〔掌〕1・2。
*土中から誕生する→〔土〕4。
ウィキペディア |
誕生
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2007/06/23 14:06 UTC 版)
誕生(たんじょう,birth)とは、生物が生まれること。出生。また、制度・組織・施設などが新しく作られる、成立することなどにも用いられる。
関連項目
固有名詞の分類
- スポニチ Sponichi Annex 芸能 誕生09年スポーツニッポン
- スポニチ Sponichi Annex 芸能 誕生10年スポーツニッポン
- 【スイス】スイス 新閣僚誕生IBTimes
関連した本
- 誕生死 流産死産新生児死で子をなくした親の会 三省堂
- 害虫の誕生―虫からみた日本史 (ちくま新書) 瀬戸口 明久 筑摩書房
- 赤ちゃんの誕生 レナルト ニルソン あすなろ書房

