誕生
『瓜姫物語』(御伽草子) 子のない翁媼が、畑で美しい瓜を1つ取り、「これを我らの子としよう」と戯れて、塗桶に入れて置く。その後、翁媼は、ともに子を授かる夢を見て、塗桶を取り出して見ると、瓜は美しい姫君になっていた。
『親指姫』(アンデルセン) 子を望む女が、魔法使いからもらった大麦の粒1つを鉢に植える。チューリップのような花が生え出、めしべの上に親指ほどの女の子が見出された。
『ジャータカ』第380話 1つだけ大きくふくらんだ蓮を、苦行者が気がかりに思い、池に入って蓮の花を押し開き、少女を見つける。苦行者は少女に「気がかり」という名前をつけ、育てる→〔名当て〕3。
ハイヌウェレの神話 アメタが夢告に従って、拾った椰子の実を土に埋めると、数日で木となり花が咲く。アメタは花から酒を造ろうとするが、指に怪我をして血が花に滴る。血と花の汁が混じり合ったところから人間の形ができはじめ、9日後には五体完全な少女になる(インドネシア・ウェマーレ族の神話)。
『変身物語』(オヴィディウス)巻10 父親キニュラスと交わり身ごもったミュラは、曠野を9ヵ月間さすらった後、神に祈って没薬の木に姿を変える。やがてその木に割れ目が生じ、中からアドニスが生まれ出る〔*『ギリシア神話』(アポロドロス)第3巻第14章では、娘の名はスミュルナ、父の名はテイアース。スミュルナが没薬の木に姿を変えてから10ヵ月後に、アドニスが誕生したと記す〕。
『ペンタメローネ』(バジーレ)第5日第9話 王子が老婆からもらったシトロンを切ると、そこから美しい乙女が生まれ出、王子はこの乙女と結婚する。
『呂氏春秋』巻14「孝行覧・本味」 妊娠中の女が、水没する村を脱出した後に、空桑(うつろのある桑の木か?)と化した。桑を摘む娘が、空桑の中に嬰児が誕生しているのを見つけた。嬰児は伊尹と名づけられ、成長後、殷の湯王に仕えた。
*竹から誕生する→〔洗濯〕1の『異苑』巻5-4・〔竹〕1の『竹取物語』。
★2.卵から生まれる。
『三国遺事』巻1「紀異」第1・高句麗 河伯の娘柳花は5升ほどの大きな卵を産み、その卵の殻を破って高句麗の始祖東明王朱蒙は誕生した。また、楊山のふもとに卵があり、白馬が跪いていた。人々が卵を割ると、端正な男児が出てきた。これが新羅の始祖王赫居世である。
★3.石から生まれる。
『淮南子』逸文 禹の妻は石に化したが、その石の北側が破れて啓が誕生した。
『西遊記』百回本第1回 東勝神州・傲来国の花果山の頂に、高さ3丈6尺5寸の仙石があった。ある日、仙石は裂け割れて、まりほどの石の卵が生まれ、卵から1匹の石猿が誕生した。石猿は猿たちの王となり、「美猴王」と名乗った。後、石猿は西牛貨州(さいごかしゅう)へ渡り、須菩提祖師から「孫悟空」という名を与えられた。
『イシスとオシリスの伝説について』(プルタルコス)12 父神クロノス(=ゲブ)と母神レイア(=ヌト)との間に、テュポン(=セト)が誕生した。その誕生は異常で、胎内にあった日数も長く、産道から生まれたのでもなかった。テュポンは、轟音とともに母神レイアの脇腹を突き破って、跳び出した。
『過去現在因果経』巻1 産み月が近づいた摩耶夫人(まやぶにん)は(*→〔象〕7)、藍毘尼園(らんびにえん。=ルンビニ園)へ出かけた。2月8日、日の出の頃、摩耶夫人は、「無憂」という大樹が色鮮やかな花をつけているのを見た。夫人が右手をあげ、一枝を引いて取ろうとした時、釈迦がゆっくりと彼女の右脇から生まれ出た〔*釈迦の誕生日を4月8日とする伝本もある。『今昔物語集』巻1-2に類話〕。
陸地と動植物などの起源譚(北アメリカ・ヒューロン族の神話) 天上から落ちてきた女神は、双子を身ごもっていた。双子の一方は善良で、通常の生まれ方をした。もう一方は邪悪で、母女神の脇腹を破って生まれ、母女神を殺してしまった。
*赤ん坊が、母親の耳から生まれ出る→〔耳〕1の『ガルガンチュア物語』第一之書(ラブレー)第6章。
*「母神の指の間から子供がこぼれ落ちた」というのは、指の股から誕生したということであろう→〔手〕7。
『王書』(フェルドウスィー)第2部第3章「英雄ロスタム」 王女ルーダーベはザールの子を身ごもったが、難産で苦しんだ。霊鳥スィーモルグが来て、「ルーダーベを酒で眠らせよ。短剣で彼女の腹を割いて子供を取り出せ。生まれたら、傷口を縫い合わせて薬を塗れ」とザールに教え、無事に男児が誕生した。ルーダーベは「私は楽になりました(ロスタム)」と言ったので、男児は「ロスタム」と名づけられた。
シーザー(カエサル)の伝説 ジュリアス・シーザー(=ユリウス・カエサル)は生まれる時、母親の腹部を切り開いて取り出された。シーザーはローマの初代皇帝アウグストゥスの父で、帝王ともいうべき地位にあったので、以後この方法による出産・誕生を、「帝王切開」と呼ぶようになった。
『東海道名所記』巻3 臨月の女が親里へ行く途中、盗人に殺される。法師が憐れんで女の腹を割き、子を取り出して育てる。子は15歳の時に出生の事情を知り、母親の敵を討ち出家する〔*→〔白髪〕1aの頭白上人の伝説に似る〕。
*マクダフも、母親の腹を裂いて取り出された→〔あり得ぬこと〕2の『マクベス』(シェイクスピア)第4~5幕。
『イリアス』第18歌 トロイアの英雄ヘクトルと、その友プリュダマス(ポリュダマス)とは同じ夜に誕生し、互いに親しい間柄だった。ヘクトルは勇将、プリュダマスは知将として、2人は力を合わせアカイア軍と闘った。
『日本書紀』巻7成務天皇3年正月 成務天皇と大臣武内宿禰とは同日に誕生した。そのため、天皇は特に武内宿禰を寵愛した。
『三国伝記』巻7-7「阿闍世王事」 頻婆裟羅王が、召しに応ぜぬ仙人を殺す。仙人はやがて頻婆裟羅王の太子として生まれる。これが阿闍世王である。阿闍世王は父頻婆裟羅王を殺して王位を奪う。
『太平記』巻25「宮方の怨霊六本杉に会する事」 後醍醐帝側近の怨霊たちの天下騒乱の企てにより、大塔宮護良親王が足利直義の内室の腹に男子となって生まれる。ただし、この子は4歳で早世する(巻30「将軍御兄弟和睦の事」。史実は5歳)。
『二人兄弟の物語』(古代エジプト) 妻の裏切りによってバタは命を落とす。彼は、牛や木に変身し、ついには切り倒された木の切り屑となって妻の口中にとびこみ、妻は身ごもる。やがて男子(バタの化身)が誕生し、成長後、妻の悪行を人々に語る→〔魂〕1b。
『本朝二十不孝』(井原西鶴)巻3-4「当社の案内申す程をかし」 幼い頃から油を飲む奇癖のある子がいた。この子が5歳の着袴の祝いの席上、大勢の人達の前で「私の親は、5年前に油売りの商人を切り殺して80両を奪い取って以来、裕福になった」と暴露した。
『もう半分』(落語) 老人が居酒屋で、いつも茶碗酒を「もう半分、もう半分」と注文して飲む。ある夜、居酒屋夫婦が老人の持つ50両入りの財布を奪い(→〔身売り〕1)、老人は居酒屋を恨んで川に身を投げる。翌年、居酒屋夫婦に老人そっくりの赤ん坊が生まれ、毎晩、行燈の油を茶碗にそそいで、なめる。見咎める居酒屋亭主に、赤ん坊は茶碗を差し出して、「もう半分」。
*殺された男が、殺した男の子供となって生まれる→〔背中〕1aの『夢十夜』(夏目漱石)第3夜。
*前世で貸した物を取り戻そうと、借り手の子供となって生まれる→〔貸し借り〕1の『日本霊異記』中-30。
『マハーバーラタ』第1巻「序章の巻」 アプサラス(=水の精)のアドリカーは、バラモンの呪いで魚にされた。魚は、ウパリチャラ王が河に落とした精液を飲んで、妊娠する。魚は漁師の網にかかり、岸に打ち上げられると、腹から人間の男女の赤ん坊が誕生した。男児はマツヤ・女児はサティヤヴァティーと呼ばれた。
『オーメン』(ドナー) 悪魔の子ダミアンは、外交官ロバート夫婦の子として育てられる。ダミアンの出産に立ち会った神父が、ロバートに「ダミアンの母親は山犬だった」と教える。ロバートがカメラマンのジェニングスとともに、ダミアンの母親の墓をあばくと、山犬の白骨死体があった。
*鹿から生まれる→〔鹿〕1。
★9.火の中で誕生する。
『今昔物語集』巻1-15 提何長者の妻は男児を身ごもっていたが、六師外道によって毒殺される。彼女を火葬する炎の中から13歳ほどの童が現れ、自然太子と名づけられる。母無くして生まれたからである〔*→〔火〕3bの『大般涅槃経』(40巻本「師子吼菩薩品」)に類話〕。
『古今著聞集』巻6「管絃歌舞」第7・通巻244話 博雅三位は管弦の名人であった。彼が生まれた時、天から音楽が聞こえた。東山の聖心上人が天の音楽〔*笛2、笙2、筝・琵琶各1、鼓1から成っていた〕を聞いて不思議に思い、楽の声を追って、博雅の生まれる場所まで行った。生まれ終わると、楽の音も止んだ。
『三宝絵詞』下-30 天台大師(=智顗)が生まれた時、光が室に満ちた。また、2人の僧が来て「必ず出家すべし」と言い、消え失せた。
『河童』(芥川龍之介)4 河童の国では、お産の時、父親が母親の生殖器に口をつけ、腹の中の子供に「お前はこの世界へ生まれて来るかどうか」と問う。子供が「生まれたくない」と答えると、産婆が生殖器に注射をし、母親の腹はへこむ。
『青い鳥』(メーテルリンク)第5幕第10場 チルチルとミチルは青い鳥を探して旅に出、いろいろな所を巡って、最後に「未来の王国」を訪れる。そこには、この世の終わりまでに地上に誕生すべき大勢の子供たちがいて、生まれる順番を待っている。彼らは発明の才・技術・あるいは病気など、必ず何かを持って生まれることになっていた。
*誕生時に掌に物を握っている・掌に文字がある→〔掌〕1・2。
*額から誕生する→〔額〕6。
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