IPアドレス枯渇問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/21 04:34 UTC 版)
APNICとJPNICの見解
APNICおよびJPNICは、以下の見解を公表している[35][36][37]。
- IPv4のIPアドレスの枯渇
- APNICが持つIPv4アドレス在庫が2011年4月15日に/8ブロック換算で1ブロック未満になったため、従来のポリシーによるIPv4アドレスの割り振りは終了した。最後の1ブロックは、新規参入者によるIPv4の利用と、既存ネットワークの安定運用、IPv6への移行のために割り振りを行う。今後の割り振りは、最大「1会員(新規および既存)につき、/22を1ブロック」という非常に限定された割り振りを行う。
- インターネットサービスの継続性
- 新規のIPv4アドレス分配は原則としてできないことを前提に、IPv6の利用を拡大することが唯一の長期的な対策である。
注 : JPNICは、独自にはIPv4アドレスを持たず、APNICからの割り振りを仲介している。そのため、JPNICの管理下におけるIPアドレスの移転を除けば、APNICと同様に、「1会員(新規および既存)につき、/22を1ブロック」という非常に限定された割り振りしかできなくなる。
IPv6の採用
現在、アドレス空間の桁数を増大させたIPv6が普及しつつある。詳細はIPv6の項を参照。
しかしながら、移行する方式によって、問題点がいくつかある。なお、IPv6の導入方式は、プロバイダおよびネットワークの接続経路に依存するため、エンドユーザが自由に選択することはできない(一部の例外を除く)。
IPv4アドレス移転制度
休眠中のIPv4アドレスの有効活用を目的として、事業者間のIPv4アドレスの使用権の譲渡に関するポリシーの見直しが行われ、2011年8月1日からIPv4アドレス移転制度を施行した[38][39]。
JPNICで、実施されている内容は、以下のとおりである。
- 移転できるアドレスの種類
- JPNICが管理するIPv4アドレス
- IPアドレス管理指定事業者(以下、指定事業者)へ割り振られているPAアドレス(プロバイダ集成可能アドレス)
- 特殊用途用プロバイダ非依存アドレス(以下、特殊用途用PIアドレス)
- 歴史的経緯を持つプロバイダ非依存アドレス(以下、歴史的PIアドレス)
- JPNICが管理するIPv4アドレス
- 移転元の資格
- JPNICと契約締結している組織(指定事業者、特殊用途用PIアドレス割り当て先組織、歴史的PIアドレス割り当て先組織)
- 移転先の資格
- JPNICと契約締結している組織、または新たにJPNICと契約予定の組織(JPNICと契約締結していない組織でも、移転手続きと併せて、新たにJPNICと契約締結することにより、移転を受けることができる)
- 移転できるアドレスの最小単位
- /24(/24より小さいサイズのブロックを移転することはできない)
しかしながら、これまでの経緯からすると、日本国内における該当するIPv4アドレスの使用権の保持者は、未使用のIPv4アドレス空間を提供する意思がほとんどない[40]。IPv4アドレスが枯渇し、必要になった時に追加取得することが困難になった現在では、この傾向はより強くなっている。JPNICが、2004年から2006年にかけてInterNICやJNICから割り振られた歴史的PI (Provider Independent) アドレスの割り振り先組織の明確化を行った際に、既に休眠中のIPv4アドレスの回収を行っている[10]。(105組織319,488個のIPv4アドレスを回収)[41]。その後、日本国内でIPv4アドレスの使用権の保持するためには、JPNICが認定した指定事業者(プロバイダ)から有償で借り受けるのが一般的であり、IPv4アドレスを保持し続けるとコストがかかるようになった。そのため、使用計画のない休眠中のIPv4アドレスは、ほとんどない状態になっている。
JPNICの管轄外からのIPv4アドレスの供給元として、歴史的背景から休眠中のIPv4アドレス空間を多く抱えているARIN(北米地域担当の地域インターネットレジストリ)が期待されるが、ARINは、地域インターネットレジストリ間でのIPv4アドレス空間の移転に否定的であった[42]。しかし、2013年6月3日以降は、JPNICだけでなくAPNICやARINの管理下にあるIPv4アドレスも移転可能となり[43]、2014年4月30日には世界初のRIR間のIPv4アドレス移転がARIN内の利用者からAPNIC配下のJPNIC管理下の利用者に行われた。
実績としては、IPv4アドレス移転制度が開始された2011年8月1日 - 2012年6月末までの11か月で、移転されたIPアドレスはたった30件しかない。傾向としては資本関係があるグループ企業間の移転か、エンドユーザからそこが利用しているISPやホスティング業者への移転が多い[44]。
脚注
- ^ IANA IPv4 Address Space Registry
- ^ “IPv4アドレスの中央在庫が完全に枯渇”. ITmedia (2011年2月4日). 2011年2月7日閲覧。
- ^ APNICにおけるIPv4アドレス在庫枯渇のお知らせ、および枯渇後のJPNICにおけるアドレス管理ポリシーのご案内
- ^ RIPE NCC Begins to Allocate IPv4 Address Space From the Last /8
- ^ a b c “欧州のIPv4アドレスがついに完全枯渇、6億個弱を使い切った”. 日経テクノロジーオンライン. (2019年11月25日) 2019年11月25日閲覧。
- ^ 北米地域レジストリにおけるIPv4アドレス在庫枯渇のお知らせ 日本ネットワークインフォメーションセンター、2015年9月25日(2015年9月29日閲覧)。
- ^ ARIN IPV4 FREE POOL REACHES ZERO ARIN、2015年9月24日(2015年9月29日閲覧)。
- ^ IPv4アドレス枯渇対応アクションプラン2010.06版 (PDF)
- ^ Chiappa, N., "The IP Addressing Issue",
- ^ a b 歴史的経緯を持つプロバイダ非依存アドレス(歴史的PIアドレス)について
- ^ 報告書「IPv4アドレス枯渇に向けた提言」公開のお知らせ - 社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター (JPNIC) 2006.4
- ^ IPv4割り振り状況と 予測との比較〜2006冬〜 (PDF) - JPNIC番号資源利用状況調査研究家チーム 近藤邦昭
- ^ JPNIC「IPv4アドレスの在庫枯渇状況とJPNICの取り組みについて」、2007年6月19日。
- ^ “広がらぬ次世代アドレス 現行v4、2年後にも在庫切れ”. 朝日新聞 (2009年8月28日). 2010年2月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年8月21日閲覧。
- ^ JPNIC「IPv4アドレスIANA在庫が10%を切るも、JPNICのIPv4分配に変化なし」、2010年1月20日
- ^ ARINとRIPE NCCへ、「/8ブロック」が割り振られました | IPv4アドレス枯渇対応タスクフォース 2010年12月1日
- ^ IPv4アドレスのIANA在庫、あと/8を2ブロック残すのみ | JPNIC 2010年12月1日
- ^ IPv4アドレスの枯渇がいよいよ目前、在庫が実質2ブロックに | ITPro 2010年12月1日
- ^ IANAからAPNICへ、二つの/8ブロックが割り振られました | JPNIC 2011年2月1日
- ^ IANAからAPNICに申請で分配可能な最後のアドレスが割り振られました | IPv4アドレス枯渇対応タスクフォース 2011年2月1日
- ^ Two /8s allocated to APNIC from IANA | APNIC 2011年2月1日
- ^ IANAにおけるIPv4アドレス在庫枯渇、およびJPNICの今後のアドレス分配について | JPNIC 2011年2月4日
- ^ IANAのIPv4アドレス在庫、ついに枯渇 | IPv4アドレス枯渇対応タスクフォース 2011年2月4日
- ^ Free Pool of IPv4 Address Space Depleted | NRO February 3, 2011
- ^ APNIC's IPv4 pool usage
- ^ APNIC地域におけるIPv4アドレスの通常割り振り終了(在庫枯渇)の時期について | JPNIC 2011年3月25日
- ^ “【速報】ヨーロッパ地域レジストリにおけるIPv4アドレス在庫枯渇のお知らせ”. JPNIC (2012年9月14日). 2013年1月4日閲覧。
- ^ “ARIN Enters Phase Four of the IPv4 Countdown Plan”. ARIN (2014年4月23日). 2014年4月29日閲覧。
- ^ “北米地域レジストリにおけるIPv4アドレスの在庫状況について”. JPNIC (2014年4月24日). 2014年4月29日閲覧。
- ^ “IANAに返却済みIPv4アドレスの再割り振りについて”. JPNIC (2014年5月21日). 2014年6月11日閲覧。
- ^ “LACNIC Announces the Start of the Final Phase of IPv4 Exhaustion”. LACNIC (2017年2月15日). 2017年2月22日閲覧。
- ^ JANOGメーリングリストのログ。 (2005.2) ※閲覧にはパスワードが必要。詳細はJANOGメーリングリストのサイトを参照。
- ^ 山田剛良「ソフトバンクBBへの「/8」の割り振りは妥当:JPNIC前村昌紀IPアドレス担当理事に聞く」日経BP、2005年3月9日。
- ^ JPNICが管理するIPアドレスに関する統計(2005年1〜12月)
- ^ APNIC IPv4 Address Pool Reaches Final /8 APNIC
- ^ 日本におけるIPv4アドレス在庫、枯渇 2011年4月15日 IPアドレス枯渇対応タスクフォース
- ^ APNICにおけるIPv4アドレス在庫枯渇のお知らせおよび枯渇後のJPNICにおけるアドレス管理ポリシーのご案内 2011年4月15日 社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター (JPNIC)
- ^ JPNIC News & Views vol.869【臨時号、2010年8月1日。
- ^ IPv4アドレス移転履歴
- ^ 分配済みIPv4アドレスの再分配の可能性と、それらの使い回しが在庫枯渇時期に与える影響
- ^ 歴史的PIアドレス割り当て先組織明確化完了のお知らせ
- ^ ITPro、2010年1月12日。
- ^ “JPNICにおけるIPv4アドレス移転の対象範囲拡張のお知らせ”. JPNIC (2013年4月1日). 2013年4月29日閲覧。
- ^ | JPNIC News & Views vol.986【臨時号】2012.7.12
- 1 IPアドレス枯渇問題とは
- 2 IPアドレス枯渇問題の概要
- 3 問題の発生
- 4 問題の影響
- 5 日本での対応
- 6 APNICとJPNICの見解
- 7 関連項目
- IPアドレス枯渇問題のページへのリンク