気象 気象と自然環境・人類

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気象

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/04 09:00 UTC 版)

気象と自然環境・人類

気象がもたらすもの

岩石浸食したり、風化を促進するなど、気象が自然の地形にもたらす効果は、地殻変動海洋による効果と並んで大きなものである。V字谷は河川の浸食、カールU字谷は氷河の浸食による典型的な谷である。河成平野は主に河川による堆積作用によってできた平野である。また大量の雨は、土砂崩れ地滑り土石流などの土砂災害洪水も引き起こす。一方で、鍾乳洞石灰岩の浸食によるカルスト地形など、美しい景観に寄与する面もある。雨は様々な経路を経て、地下水から井戸により汲みあげたり、河川から取水し水道網を経たりして、生活産業活動にも使われる重要な役割を持つ。

気象と人類

気象が人類の歴史に大きな影響を及ぼした例もある。1281年弘安の役において神風と呼ばれる嵐が軍の撤退に拍車をかけたことは日本では広く知られている。グリーンランドヴァイキングの植民地が全滅した小氷期、冷害や大雨により発生した天明の大飢饉、高潮と大雨によってニューオーリンズが水没したハリケーン・カトリーナなど、異常気象と呼ばれるような災害も歴史上で多く発生している。

気象の予測

詳細は天気予報を参照。

人間活動において、気象は生活に深く関わってきた。農耕においては雨の多い少ないが作物の出来に影響し、狩猟や漁では風向きを知ることが収獲の良し悪しや自身の安全に関わる。このような理由から、例えば「朝焼けがあれば雨が降る」といった経験に基づく伝承、現在でいう観天望気を通じて天気を「読む」ことが行われた。一方、雨乞いなどの信仰とも結びついた行為も行われてきた。

天気の伝承の中には、現在の気象学から考えても正しいものもある[9]。長い間観天望気による予測が行われたが、物理学などの諸科学の発展により、ヨーロッパにおいては中世ごろから気象現象を科学的に解明することが始まった。19世紀電報が発明されてから遠距離間で気象情報を伝達できるようになったことをきっかけに、本格的な科学的予測が始まった。20世紀初頭に数値予報が初めて考案され、当初はその計算量の多さから不可能とされていたが、1970年代の高性能コンピュータの普及によって大量計算が可能になってからは大きく科学的予測が発展した。また1960年代に登場した気象衛星は気象観測の幅を広げ、精密機械や通信機器の開発に伴って気象観測の自動化・無人化も進んでいる。

漁業においては、例えば日和山から観天望気を行い出港を判断していたものが、現代は漁業気象として提供される漁業に特化した気象情報を通じて安全が図られている。また、農業では動植物や自然の変化を季節の変化の目安として伝える、現在で言う季節学に近いことが農事暦などを通じて行われていたが、現代は天気予報に重点が移り農事暦を用いることは少なくなってきている。また、20世紀に生まれた航空の分野でも気象は非常に重要視されており、航路や離着陸地の安全のための情報などに特化した航空気象が提供されている。

気象の制御

人工降雨や台風(熱帯低気圧)を抑制するなど気象制御の試みがいくつか実行された。京都大学などの研究グループでは、工場などの地上の熱源を移転させることで積乱雲の抑制しゲリラ豪雨線状降水帯の影響を抑える研究を行っており、2040年に社会実験、2050年代に実用化を目標としている[17]

サイエンス・フィクションでは惑星規模で気象を改変するテラフォーミングがテーマとなっている作品もある。


注釈

  1. ^ 例えば、雨や風は地形の形成に大きく関与している。また、大気の温度や気圧などと海洋の温度などが影響しあう海洋大気相互作用などがある。
  2. ^ 80kmより上空では組成が変化し、約170km以上では酸素が主成分、約1,000km以上ではヘリウムが主成分、そのさらに外側では水素が主成分となる。
  3. ^ 一例として、日本の気象業務法は第2条1項で「気象」を「大気(電離層を除く。)の諸現象」と定義しているが、電離層は一般に高度80 - 500km程度とされる。
  4. ^ 緯度や季節により異なるが、中緯度では高度50kmまで気温が上昇、50 - 80kmでは再び低下していく。
  5. ^ 成層圏と中間圏ではブリューワー・ドブソン循環と呼ばれる循環構造を持つ風が吹いている。
  6. ^ 大気が存在しない場合、地球の表面温度は太陽放射と等しい黒体放射温度となると考えられている。これを平均すると-20℃となる。
  7. ^ 地球が発している放射エネルギーを地球放射という。地球放射は主に赤外線で、波長8 - 11μm付近が最も強い。
  8. ^ 太陽活動の変化や地球と太陽の距離の変化により数%の変動がある。

出典

  1. ^ a b ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』. “気象”. コトバンク. 2020年2月3日閲覧。
  2. ^ a b c d e 根本順吉、小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』. “気象”. コトバンク. 2020年2月3日閲覧。
  3. ^ a b c 小学館『デジタル大辞泉』. “気象”. コトバンク. 2020年2月3日閲覧。
  4. ^ 三省堂『大辞林』第3版. “気象”. コトバンク. 2020年2月3日閲覧。
  5. ^ 日立デジタル平凡社世界大百科事典』第2版. “気象”. コトバンク. 2020年2月3日閲覧。
  6. ^ 小学館『精選版 日本国語大辞典』. “気象”. コトバンク. 2020年2月3日閲覧。
  7. ^ a b 八耳 2008.
  8. ^ a b c 仁科 2014, p. 1.
  9. ^ a b 平塚和夫 [1]、小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』. “天気”. コトバンク. 2017年8月1日閲覧。
  10. ^ a b 小学館『デジタル大辞泉』. “天気”. コトバンク. 2020年2月3日閲覧。
  11. ^ 小学館『デジタル大辞泉』. “天候”. コトバンク. 2020年2月3日閲覧。
  12. ^ 仁科 2014, p. 2.
  13. ^ 吉野正敏、小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』. “気候”. コトバンク. 2017年8月1日閲覧。
  14. ^ 小学館『デジタル大辞泉』. “気候”. コトバンク. 2020年2月3日閲覧。
  15. ^ 地上気象観測”. 福岡管区気象台. 2020年2月3日閲覧。
  16. ^ 地上気象観測”. 金沢地方気象台. 2020年2月3日閲覧。
  17. ^ 京都大学、豪雨の発生を人工抑制 大気中の熱や気流制御”. 日本経済新聞 (2023年6月19日). 2023年6月19日閲覧。






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