日韓トンネル
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ユーラシア・ドライブウェイ構想における日韓トンネル
1980年に大林組が発表したユーラシア・ドライブウェイ構想では、東松浦半島から壱岐まではこの海域に点在する加部島、加唐島、名島を結ぶ吊り橋と斜張橋を連続して建設し、総延長32 kmの橋で渡る。壱岐から対馬までは青函トンネルと同様に60 kmの海底トンネルを掘削して対馬の南端に上陸する。対馬島内は地上を縦断する。対馬から釜山までの朝鮮海峡(対馬海峡西水道)は最大水深が220 mの対馬トラフと呼ばれる海底断層帯が存在する上に地盤が軟弱であるため、海底に支持架を建設して円筒形のトンネルユニットを据え付ける海中トンネルを構想していた。なお、このトンネルは水深50 mに設置するとしていた。
その後の動向
「日韓議員連盟」会長の竹下登元首相が自民党での検討を指示したり、羽田孜元首相も自著で「日本再生プログラム」の一環として日韓トンネル構想に言及している。
1990年に訪日した韓国の盧泰愚大統領や翌1991年に訪韓した海部俊樹首相なども推進の意向を示すなど、日韓双方で話し合われた。
1995年、国連ESCAP(アジア太平洋経済社会委員会)がアジアとヨーロッパを繋ぐ縦断鉄道建設を推進する見解を表明した。しかし、日韓トンネル構想については言及されなかった[17]。
2000年には韓国の金大中大統領が自治体首長会議で海底トンネル建設案について肯定的な発言をしていると報じられ[18]、同年9月の訪日の際、「日韓海底トンネル建設」の構想を日本の森喜朗首相に提唱した。
同年10月、韓国ソウルで開催された第3回アジア欧州会合(ASEM)首脳会合で、森喜朗首相が日韓トンネルの共同建設を韓国側に提案した[19]。
2002年、韓国政府は約700万円の調査費を計上し、交通開発研究院が同年4月から技術的問題点、日韓の工事費負担割合、韓国にとっての交通・物流戦略上の価値などについて分析を進めた[4]。
2003年2月25日には韓国の盧武鉉大統領が就任式の直後の小泉純一郎首相との首脳会談で、「北朝鮮問題が解決すれば経済界から取り上げられるだろう」との旨を語った。
同年、自民党では政党アクションプログラムの一つ「夢実現21世紀会議」(議長:麻生太郎)において実現に向けた政策提言を行なっていたが、2008年度の自民党の機構図にはこの会議は載っておらず、現在この会議が機能しているかは不明である。また、同年、自民党の外交調査会は「日韓トンネル研究会」の高橋彦治・濱建介からヒアリングを行ない、技術的には実現可能との見解を示した[20]。
2004年8月17日には韓国の建設交通部が約100兆ウォン(約10兆円)[21]とも見られている建設コストに見合う建設の意味はないとする報告書をまとめていたことが報じられた。同報告書について、「日韓トンネル研究会」は「経済性は十分ある」と反論している。
「日韓トンネル研究会」は同年、ソウルで開催された「第3回アジア七カ国土木会議」の会場にブースを設置し、PRビデオ上映やパンフレット配布などで海底トンネルのPR活動を行った[22]。
2008年3月、自民党九州選出議員を中心に日韓海底トンネル推進議連が発足した。
2009年12月、韓国で李明博大統領より2020年までの国土開発基本構想が発表され、日韓トンネルの研究が盛り込まれる[23]。完成は最短で2010年より30年後とされている。
2010年10月、福田康夫首相と韓国の李明博大統領が合意した「日韓新時代共同プロジェクト」(2009年1月合意)の共同研究の最終報告書「日韓新時代のための提言」が提出され、21項目のアジェンダ(行動計画)の1項目として、日韓海底トンネルの建設が提案された[24]。日韓新時代共同研究プロジェクトの報告書。
2011年1月、韓国国土海洋部は日韓海底トンネルの利便とコストを比較(B/C比)の妥当性に関する韓国交通研究院の調査を受けて、経済性がないとの結果を明らかにした[25]。
2014年7月15日には、対馬市厳原町に「日韓トンネル対馬調査斜坑」が設置され、同年9月11日にオープン式典が行われた[26]。2015年には対馬坑口の開設を受け壱岐市芦部にて芦部調査斜坑の開発に着手。
2018年3月31日、西南学院大学の野田順康教授が、日韓トンネルの収支について試算。プロジェクト・ファイナンスの可能性を示唆した[27]。
2021年、韓国釜山市長選挙を通じ、野党側から日韓トンネル構想が持ち出されて同国内で議論となった[28]。トンネル建設を問うアンケートで韓国人の6割が賛成との統計が発表された。
旧統一教会の友好団体が、日韓トンネルの実現に向け、佐賀県唐津市内に広大な用地を取得していたことが、2023年1月に毎日新聞の報道で判明。信者から集めた多額の献金が、用地取得に使われた可能性が指摘されている[29]。
賛否両論の評価
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反対論
などが主な反対理由となっている。
さらに
- 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)から中華人民共和国(中国)へのルートが確立される見通しが立たなければあまり意味が無い。
- 朝鮮半島が平和裏に統一されるか、北朝鮮の政情が安定し、中国まで陸路で至る大規模輸送ルートが確立されればそのメリットが見込めるものの、その目処が立たない現状では巨額の建設費をかけて建設したところで事実上日本と韓国一国を結ぶだけのものになってしまい、建設費に見合わないばかりでなく、韓国の現状や日本の治安を考えてもデメリットとなる。
- 日本、韓国とも首都圏の人口集中が進んでおり、現在、人的な交流が最も活発なのは日韓双方の首都圏間であり、それならば羽田空港と仁川空港(または金浦空港)の空路を充実させれば事足りるはずで、遠回りであり、高速鉄道をもってしても時間がかかりすぎるトンネルを利用してわざわざ人の移動が行われるかという疑問もある。
推進論
基本的には、物流の活性化が主な理由とされているが、下記のようなものが推進理由に挙げられている。
- 主に日韓間、ひいては朝鮮半島の統一をにらんだ日本とユーラシア大陸各地の物流の活性化。
- 大陸と繋がることにより地政学上シーレーン防衛の負担が一部軽減されることが見込まれる。
- 日帰り圏が韓国南部と九州・中国地方に形成され、新たな観光需要が期待される。
- トンネルに併設されるパイプラインや高圧送電線により、ガス・電力の多国間融通が可能になりエネルギー産業の発展が期待できる」
なお、1980年代に大林組が「ユーラシア・ドライブウェイ構想」の一環として提唱した計画では、当時の土木工事レベルでも可能であるとされているものの、自動車道には内燃機関の自動車を通す以上、換気施設として人工島が5つ必要となるため、これを建設するとしていた。しかし、そもそものところで全長300 kmにも及ぶ海底トンネルを自動車で結ぼうとする計画には無理が多く、高速道路における交通事故全般、大規模な車両火災の発生時などの安全対策等にも難点がある。このため日韓トンネルのような海峡長大トンネルとしては、青函トンネル、英仏海峡トンネルで実績のある鉄道トンネルの方が現実的と思われる。
- ^ 韓国が日中韓の海底トンネル推進を中断、「経済性ないと分かった」 サーチナ 2011年1月5日
- ^ “韓国野党幹部が言及した韓日海底トンネル…「飛行機に乗ったほうがいい」「日本は無関心」”. 中央日報 (2021年2月8日). 2021年2月9日閲覧。
- ^ 統一教会がカネ集めに使った「日韓トンネル」 騙されて3億7000万円出した人も(抜粋) デイリー新潮
- ^ a b 日韓トンネル6月調査結果 韓国 「釜山―唐津に鉄道・道路」分析 初の具体的見解、西日本新聞 九州ねっと、2003年5月8日
- ^ a b 『世界日報』 2007年5月8日(韓国語の記事)
- ^ 梶栗玄太郎. “日韓トンネル構想と世界平和実現へのビジョン”. 世界平和教授アカデミー. 2016年10月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年10月10日閲覧。
- ^ 松下正寿 (1983年). “日韓トンネル構想の意義 文鮮明師が提唱 国際ハイウェイの一環”. 日韓トンネル研究会. 2022年10月10日閲覧。
- ^ a b “国際ハイウェイ第一号巻頭言”. 日韓トンネルプロジェクトを推進する国際ハイウェイ財団. 2022年10月7日閲覧。
- ^ 有田芳生 『「神の国」の崩壊―統一教会報道全記録』(教育史料出版会、1997年9月)
- ^ “沿革”. 日韓トンネルプロジェクトを推進する国際ハイウェイ財団. 2022年10月7日閲覧。
- ^ “『世界日報』1986年10月2日、1面”. 日韓トンネル研究会. 2022年10月10日閲覧。
- ^ “日韓トンネル推進全国会議結成大会”. 日韓トンネル推進全国会議 (2017年11月28日). 2022年7月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年10月10日閲覧。
- ^ “日韓の絆強めるトンネル建設を国家プロジェクトに”. 平和大使協議会 (2017年11月29日). 2021年2月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年7月26日閲覧。
- ^ “団体概要”. 日韓トンネル推進全国会議. 2021年12月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年10月12日閲覧。
- ^ 平和統一聯合 (2020年1月17日). “世界潮流「日韓トンネルについて」佐藤博文理事長との対談”. YouTube. 2022年10月10日閲覧。
- ^ 2010年8月22日 統一教会系FPU兵庫5周年パンフレット
- ^ ガリレオが導くユーラシアの歩き方、萬晩報、2004年1月10日
- ^ 『釜山日報』2000年7月1日付
- ^ NPO法人 日韓トンネル研究会 日韓トンネルに関する質問と答え 政治・経済
- ^ 「デイリー自民」平成15年6月16日付
- ^ 「日韓トンネル研究会」も建設費を10兆円から15兆円と見積もっている。
- ^ 韓日海底トンネル? 水面下の超大型プロジェクト、中央日報、2004年8月16日
- ^ 「韓国が日韓トンネルの妥当性検討 九州と結ぶ構想」共同通信、2009年12月2日
- ^ “外務省: 日韓新時代共同研究プロジェクトの報告書発表”. www.mofa.go.jp. 2022年8月17日閲覧。
- ^ a b c 韓日・韓中海底トンネル、「経済性はなし」 聯合ニュース 2011年1月5日
- ^ 国際ハイウェイ財団 ニュースレター2014年9月号 国際ハイウェイ 現場便り - 国際ハイウェイ財団(PDF)
- ^ 「日韓トンネル」物流利益は年間2253億円 対馬・壱岐経由 利用・収支を予測 日帰り圏拡大 新たな観光需要長崎新聞2018年7月5日
- ^ “韓国の明日を占う釜山市長選挙 勝手に争点にされた「日韓海底トンネル構想」のトンデモ”. デイリー新潮 (2021年3月25日). 2021年5月3日閲覧。
- ^ 旧統一教会友好団体、九州北部に広大な土地取得 毎日新聞 2023年1月10日
- ^ “朝鮮半島平和実現の鍵握る日韓トンネル”. 平和大使協議会. 2022年8月8日閲覧。
- ^ “「地理と歴史変える」日韓トンネル 米投資家 ジム・ロジャーズ氏 | 世界日報”. 2022年8月8日閲覧。
- 1 日韓トンネルとは
- 2 日韓トンネルの概要
- 3 ユーラシア・ドライブウェイ構想における日韓トンネル
- 4 各国当局の発表
固有名詞の分類
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