中華人民共和国の経済 概要

中華人民共和国の経済

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/22 05:45 UTC 版)

概要

中国(中華人民共和国)は1970年代後半から2008年まで改革開放政策[6]WTOへの加盟、外国資本の導入などの手段を通し、農村部からの出稼ぎ労働者という安価かつ豊富な労働力を生かして、製造業を中心とした労働集約型産業において比較優位を獲得し、「世界の工場」として大きな成長を遂げてきた。

現在中国の経済総量は国内総生産GDP)で換算すると、アメリカに次ぐ世界2番目に大きく、2020年のGDPは14.86兆USドル[n 1]、2020年の購買力平価PPP)は23兆97億800万ドルとなり、世界最大級の経済体に分類できる[7]。1人あたり国民総所得(GNI)に基づき2019年までに、中国既に1万ドルを突破し、世界銀行(世銀)の定義にしたがうと「高所得国」入り目前である。

2017年以降、中国共産党習近平政権[8][9]積極的な戦狼外交米中貿易戦争新疆ウイグル再教育キャンプなどの事件によって、中国と西側諸国との関係は急速に悪化していく。さらに、ゼロコロナ政策などの影響を受け、外国資本の脱中国が加速し、2023年に中国経済がデフレに入り、若者の失業率過去最高の20.8%に達し、同4月に続き2カ月連続で20%を上回った。

中国経済における全体的な解説

結論から言うと、中国経済は非常に複雑的で不透明な仕組みになっており、良いか悪いかを一言で言い切ることが出来ない。

歴史から見れば、中国は1世紀から19世紀までの2000年間のほとんどの時間帯において、世界最大の経済国の一つになりつつ、産業革命以降には急速に衰退する傾向がある[10][11] 。また、台湾香港マカオの経済は中国の中に組み込まれておらず、それぞれ中国と異なって独立な経済システムを採用している。詳しくは台湾の経済香港の経済・マカオの経済などの項目を参照。

まず、中国の経済政策はソ連のように「国営化」と「五年計画」の両方を組み込み、そして独自の「中国特色社会主義」のやり方を加えて経済発展を遂げた[12]。中国の名目GDPは世界第2位と巨大なものであり、コロナ禍以前(2019年)の購買力平価(PPP)から推算してみると、2030年の時点でアメリカを超えるだろうとの見方がある[13][n 1][14]。現実での実態は一旦置いておき、中国の建前の成長数字だけをみれば綺麗に見える。

次に、中国の為替レートは非常に不安定な構造にしているため、アメリカはそれに応じて毎年自分のドルを基準として先に中国のGDPを予測し、中国の公式データが出たあとに再度GDPを調整する。2022年、中国のPPPは世界経済の約18.6%を占め[15][16]、GDPは18.0%を占めた[17]、2020年代以降、中国は世界の大多数の国々と自由貿易協定を結んでいるにもかかわらず、その不均衡な政治体制や予測不可能の習近平政権の影響で、いくつかの協定は既に失敗しており(史上最大の貿易圏であるRCEPも含む)、そもそも交渉の段階で止まってる協定も非常に多い[18]

成長のスピードを見ると、2019年以前の中国は世界最速の消費市場となり、第2位の商品輸入国にもなった[19]消費国としても世界最大級であるが、世界金属の消費量の約半分を占めていて、高度な質を有するサービス系の商品に関しては純輸入国である[20]。中国製商品の質が他の商品と比較して低いとはいえ、消費者の総数の多さだけあって、世界で最も競争力の高い金融センタートップ10のうちの4つを擁し[21]、世界最大の証券取引所(時価総額と取引量の両方で)10社のうちの3社を占める[22]

一方、現代中国経済の特徴については、公的部門の企業の利益を最優先し、国有企業(SOE)の利益を奪い、混合所有制企業民間部門外国企業利益をある程度の搾取をしながらも、ほかの共産国家と比べるとより自由、より開放的な態度で経済にとっている。外国企業による民間投資や外国への輸出品はもともと中国経済が成長における最大の動力であるが、2020年代に勃発した米中貿易戦争以来、中国政府は外国からの投資を何度も拒絶し、国内での消費だけを重視している[23]。国内向けの生産を専念した結果、中国は世界最大級の製造業を造り、最大の商品輸出国になった[24]

外国との経済関係について、コロナ禍以前の中国は外国からの直接投資を多数受け入れ、合計1630億ドルを吸収していた[25]。同国の対外直接投資は2019年の一年だけで1369億1000万米ドルに達し、世界最大の投資国である日本の2266億5000万米ドルに次いで世界で2番目に大きい[26]。3年後の2022年には、中国国内の億万長者の総数は世界で2番目の多さとなっている[27][28]。中国が2007年から2008年までの金融危機に直面できた理由は、この外貨準備の多さにあり、対外貿易が活発か停滞かは関係なく、世界最大の貿易国の立場を利用して国際貿易の中で存在感を出した[29][30]

しかし、中国経済の実態を精査すると、どの産業においても一定の貧富の差を生み出し、特に低所得者層は中国の中で最も深刻な問題となっている。中国は約3兆1000億ドル(日本円にして約458兆8000億円ほど。1ドル=148円で換算)に相当する世界最多の外貨準備金を保有しているものの、そのほとんどは中国共産党の官僚を通じて、アメリカ国内で消費されているものであり、中国の一般市民は外貨の利益から得られるものはほぼゼロに等しい。2018年にはミリオネア数は350万人で世界第2位となり、アメリカと比較すると、クレディ・スイス・グループの『2019年世界財富報告書』の資料によれば、世界人口の富の内訳は上位10%が中国人が占めており、アメリカを上回った[31][注 1]

アメリカ以外、例えば欧州と比べると、2021年の『ピュー・リサーチ・センター』の調査では約4200万の中国人中産階級に分類されている。中国の約14億の総人口と比べるとやや低いが、その多さは中流階級だけで1つの欧州国家の総人口にも相当する。中国経済の総量は欧州連合の5分の4の経済量を追い抜き[32]2022年の時点で、中国本土のトップ10の輸入相手国は欧州連合が第1位で、次いでアメリカ韓国日本台湾香港ベトナムオーストラリアマレーシアロシアの順となる[33]製造業の強国、または世界の工場として広く看做されているが[34] 、前述の通り、現在は中国の輸出の割合が小さくなり、2020年に欧米や日韓への輸出はわずか全体経済の18.5%に過ぎない。

そして、他国の知的財産の模倣については中国従来の問題であり、2022年の『グローバル・イノベーション・インデックス』のランクによると、中国が世界第11位、アジアおよびオセアニア地域で第3位、人口1億人以上の国では第2位に位置付けられている。上位30位に入っている国々の中で、唯一の中所得国であり、また唯一の新興工業国でもある[35][36]。しばしば世界で最も革新的な国の一つにも位置付けられ、模倣であっても世界の特許出願のいくつかの指標は世界でもトップクラスになっている[37][38]。そんな中でも世界トップ5の科学技術集団のうち、4つ(「深圳香港広州の都市群」と「北京」)を創り、それぞれ2位と3位に占めている。中国人がほぼ4G3Gしか使えない事実を無視して、中国政府は2022年3月の時点で、すでに5億台の最新型5G発信機、145万個の大型5G電波基地を設置していた[39][40]

2023年の時点で、金融資産から吸収した資金は国民のために一度も使ったことがなく、すべて不動産建築業など中国政府の関係機構に譲った。中国は世界で2番目に大きな金融資産を保有しており、価値に関しては17.9兆ドルに達しているものの、中国にとって最も重要なハイテクや軍事に関しては恩恵がない。中国の市民については、7億7800万人が可用の労働者となり、2020年時点では世界最大の労働力市場の中で競争をし続け、『世界競争力レポート』の中で第28位を獲得した[41]。市民を除いて、富裕層商業銀行海外企業が中国人労働者から得た収益を見ると、1980年代から2020年代までで4兆ドル近く増加した[42]

最後に、気候変動を引き起こす温室効果ガス(GHG)の分野において、中国の環境汚染排出物質量は世界一であることと同時に、中国人自身も汚染の悪影響を受けている。中国の一人当たりのグリーンエネルギーや環境保育への貢献も、アメリカや欧州などの先進国より遥かに低い[43]。また、利益を図る世界の大手企業500社のうちに145社が中国に進出した経験があるが、人間にとっての労働環境が劣悪であり、本社を中国に置く外資会社は極端に少ない。


注釈

  1. ^ 農産物は1949年以前の生産量最高の年を100として比較すると、穀物109、綿花154、サトウキビ126、豚114、魚貝類111と軒並み回復した。同様に工業生産品も薄絹147、布137、鋼146、セメント125、発電量122となっている[44]
  2. ^ 1952年の実質GDPを100とすると1957年の実質GDPは155.6となり、平均すると年率成長している[47]
  3. ^ 1989年で消費者価格指数は118.0となっている[50]
  4. ^ 1978年から1988年までの11年間でGDPは毎年平均、名目ベース11%で経済成長をしていたが、1989年は4.1%、1990年は3.8%に鈍化し、1991年に9.2%に回復した[51]
  5. ^ 1998年の経済成長率は7.8%、1999年は7.6%だったが、2003年以降は10.0%台に回復している[51]
  6. ^ 但し、各地域の合計には中国人民解放軍の現役軍人は計上されていない[61]
  7. ^ 1995年に72,919あった郷鎮が運営していた炭鉱が、2004年には23,793にまで減少している[105]
  8. ^ 2004年段階で中国工商銀行18%(5兆6705億元)、中国銀行13%(4兆2704億元)中国農業銀行12%(4兆0128億元)、中国建設銀行12%(3兆9009億元)と4行の合計で55%となる[113]
  9. ^ 中国の都市における死亡原因のうち、心臓病が占める割合が17.89%で3位、呼吸系疾患が12.57%で4位に入っている[134]
  10. ^ 中国の農村における死亡原因のうち、心臓病が占める割合が11.77%で4位、呼吸系疾患が23.45%で1位に入っている[135]

出典

  1. ^ China had a hundred million wealthy people (each owning a net wealth of over US$110,000) and the US 99 million. At US$63.8 trillion as of end of 2019, representing a 17-fold increase from US$3.7 trillion in 2001, the total amount of China's household wealth stood behind only that of the US with US$105.6 trillion.
  1. ^ a b GDP figures exclude Taiwan, and the special administrative regions of Hong Kong and Macau.





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