ラム酒 産地による製法の特徴

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ラム酒

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/30 07:06 UTC 版)

産地による製法の特徴

全てに当てはまるわけではないものの、植民地時代に確立した製法を受け継いでいるメーカーが多いため、旧宗主国本土で一般的であった蒸留酒(イギリスのスコッチ・ウイスキー、フランスのブランデーなど)と特徴も類似する傾向がある。一部のメーカーでは現在でも原酒を旧宗主国本土に運んで熟成させることも行われている。

主なブランド


日本でのラム生産

小笠原諸島では、開拓初期(1830年頃)の欧米系定住者が捕鯨船とラムの取引を行っていた。1876年に日本領土に確定してからは、亜熱帯の気候を生かし、サトウキビの栽培が行われた。このサトウキビを使った製糖業が盛んになり、製糖の過程で粗糖を取り出した際に生ずる副産物、つまりモラセス(廃糖蜜)を発酵させ、そうしてできた醸造酒を蒸留することで作った蒸留酒を、島民は「泡酒」や「蜜酒」などと呼び、飲むようになった。すなわち、インダストリアル・ラム(工業ラム)の製造が行われたのである。以後、太平洋戦争中に島民が強制的に本州などへ疎開させられるまで、永く愛飲されることになる。

小笠原諸島は太平洋戦争中にアメリカに占領され、戦後もそのままアメリカが統治していたが、1968年に日本に返還された。返還後、疎開先から徐々に小笠原に戻ってきた旧島民にとって、疎開前に愛飲していた地酒のラムの味は忘れがたいものであったらしい。こうした独自の歴史背景から、日本に返還後、ラムの製造も再開されるようになった。

第二次世界大戦後のラム製造としては、徳之島にある高岡醸造が1979年から作っている「ルリカケス」が国産ラムの第1号である。なお、徳之島を含む奄美群島では黒糖焼酎が作られており、戦後アメリカが占領支配していた時期(1953年本土復帰ごろまで)には、黒糖だけで蒸留酒(黒糖酒)が作られた例もあるが、オーク樽による熟成が行われることはなかった。ラムと現在の奄美黒糖焼酎の違いは、ラムには使用されない米麹が、黒糖焼酎では日本の税法上の規定のために必ず使用される点[13]と、黒糖焼酎はモラセスではなく、固形の黒砂糖を使用する点である。

続くバブル期の空前の地ビールブームの中、村おこしの一環として小笠原ラム・リキュール株式会社が設立され、小笠原の地酒としてのラムが復活し、1992年に製品化された。

21世紀に入ると製造者が多様化した。沖縄県の南大東島で生産を行っているグレイスラムは、元々酒造業とは無関係な沖縄電力のベンチャーという異色の存在である。同社の社内ベンチャーに応募した現社長・金城祐子の案が事業化され、2004年に設立。南大東村の協力を得て旧南大東空港のターミナル施設を工場として借り受けて生産を行っている。グレイスラムはサトウキビの栽培が盛んな南大東島の利点を活かし、基本的にサトウキビの産地でないと作れないアグリコール・ラム(農業ラム)の生産を行っている。

2007年には、高知県菊水酒造よりラムが発売された。同社は、1849年頃から栽培の歴史があり、1950年には日本一の生産量を誇った高知県のサトウキビ栽培を復活させるべく、黒潮町にて栽培、アグリコールラムの製造を行っている。同社のヨコスカ・ラムはサトウキビの北限とされる静岡県大須賀町(現・掛川市)で作られたサトウキビを原料に製造したアグリコール・ラム。

イエ・ラム・サンタマリアは、沖縄県の伊江島2011年7月から販売されているアグリコール・ラムである。

滋賀県ナインリーヴズ2013年に開業した本州初のラムブランドで、黒糖を原料に用いている。世界的なラム品評会RHUM FEST PARISにて2014年度のイノベーション部門銀賞を日本のラムのブランドとしては初めて獲得した。

2020年には、クラウドファンディングサイトMakuakeにて「和三盆を作るときに出てきた糖蜜を蒸留してできたラム酒」が登場した。これはその名の通り、香川県で伝統的に作られている和三盆糖の製糖過程で生じる廃糖蜜を活用したインダストリアル・ラムである[14][15]

日本ラム協会

2008年、ラム専門のバー(ラム・バー)のオーナーら5人が集まって日本ラム協会を設立した。日本におけるラムの認知、普及、定着を目標として活動を行っており、ラム・コンシェルジュ資格認定、教育、JAPAN RUM CONNECTIONなどのイベント開催を行っている。


注釈

  1. ^ 75.5%より高いアルコール度数のラムの銘柄も存在する。例えばStroh 80は80%である。

出典

  1. ^ [1]
  2. ^ 落合直文著・芳賀矢一改修 「らむ」「らむしゆ」『言泉:日本大辞典』第五巻、大倉書店、1928年、4906頁。
  3. ^ マグロンヌ・トゥーサン=サマ 著、玉村豊男 訳『世界食物百科』原書房、1998年、583頁。ISBN 4562030534 
  4. ^ [2]
  5. ^ フィリップ・ジャカン『海賊の歴史』創元社、2003年、129-130頁。 
  6. ^ a b リチャード・プラット『知のビジュアル百科 海賊事典』あすなろ書房、2006年、45頁。 
  7. ^ 洋酒物語, p. 93,97; 洋酒入門, p. 30.
  8. ^ ジョニー・デップに英ラム酒メーカー感謝?「パイレーツ」影響で消費量激増”. 映画.com (2007年12月4日). 2014年12月4日閲覧。
  9. ^ ラムの製法”. 日本ラム協会. 2017年4月12日閲覧。
  10. ^ UNESCO - Knowledge of the light rum masters” (英語). ich.unesco.org. 2022年12月3日閲覧。
  11. ^ 日本ラム協会『ラム酒大全』誠文堂新光社、2017年、27頁。 
  12. ^ 日本ラム協会『ラム酒大全』誠文堂新光社、2017年、107頁。 
  13. ^ 銘酒事典, p. 49,186.
  14. ^ “香川の和三盆、ラム酒に 美馬産業が蒸留所 廃棄の糖蜜活用、甘さ上品 観光一体型 12月稼働”. 日本経済新聞. (2022年4月21日). https://www.nikkei.com/article/DGKKZO60167080Q2A420C2LA0000/ 2022年8月30日閲覧。 
  15. ^ 和三盆ラム酒を日本酒の木おけで仕込み 「絶対良いものになる」伝統×伝統の新取り組み 香川”. 瀬戸内海放送 (2021年8月11日). 2022年8月30日閲覧。
  16. ^ ジョセフ・M・カーリン 著、甲斐理恵子 訳『カクテルの歴史』原書房、2017年、27頁。 
  17. ^ リチャード・フォス 著、内田智穂子 訳『ラム酒の歴史』原書房、2018年、35頁。 
  18. ^ 洋酒物語, p. 95.
  19. ^ a b 洋酒物語, p. 98.
  20. ^ ジョセフ・M・カーリン『カクテルの歴史』原書房、2017年、49頁。 
  21. ^ Vocabulary.com, groggy.
  22. ^ 洋酒物語, pp. 93–94.
  23. ^ ロイ・アドキンズ『トラファルガル海戦物語』 下、原書房、2005年。ISBN 978-4562039623 
  24. ^ 洋酒物語, pp. 93–94; 洋酒入門, p. 30.


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