ヤハズエンドウ ヤハズエンドウの概要

ヤハズエンドウ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/16 06:28 UTC 版)

ヤハズエンドウ(カラスノエンドウ)
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
: マメ目 Fabales
: マメ科 Fabaceae
: ソラマメ属 Vicia
: オオヤハズエンドウ V. sativa
亜種 : ヤハズエンドウ
V. s. subsp. nigra
学名
Vicia sativa L. subsp. nigra (L.) Ehrh. (1780)[1]
シノニム
和名
ヤハズエンドウ
英名
Narrow-leaved Vetch

特徴

本州から四国九州沖縄に分布し、平地や山沿いの野原や道端、土手などのいたるところにごく普通に生育している[6][4]

一年草または越年草[6]。 秋に発芽し、春になると高さ60 - 150センチメートル (cm) に達する[6]。全体に軟らかい毛が生えている[4]には巻きひげがあり、近くのものに絡みつくこともあるが大体は直立する。茎は全体にがあり四角柱状[4]は8 - 16枚の小葉がついた偶数羽状複葉で茎に互生し、先は3分して巻きひげになって他物にからみつく[6][4]。巻き付く他の草がないときは、仲間どうしで絡み合うこともある[7]。小葉は細長い楕円形で、多くは先端がくぼむ[6]

花期は春から初夏(3 - 6月)で、葉腋に短い総状花序をつくり、エンドウスイートピーに似た蝶形で長さ1.2 - 1.6 cmの紅紫色の花を1 - 3個つける[6][4]。花の付け根には花外蜜腺とよばれる黒い点があり、ここから蜜を出してアリを呼び寄せ、他の害虫を追い払ってもらう役目をする[8]。花が終わると、サヤエンドウを小さくしたような平たい豆果(サヤ)がつく[4]。サヤは長さ3 - 5 cmの広線形で、熟すると黒くなり[6][4]、晴天の日に裂けて種子を激しく弾き飛ばす。

原産地はオリエントから地中海にかけての地方であり、この地方での古代の麦作農耕の開始期にはエンドウなどと同様に栽培されて作物として利用された証拠が考古学的資料によって得られている。そのため、若芽や若い豆果を食用にすることができるし、熟した豆も炒って食用にできるが、その後栽培植物としての利用はほぼ断絶して今日では雑草とみなされている。

一見するとソラマメの仲間とは思えないが、よく見ると、茎が角ばっていることと、豆のへそが長いというソラマメ属の特徴を満たしている。

史記伯夷・叔斉が山で餓死する前に食べていた「薇」(び)は、野豌豆の類ともいい、またワラビゼンマイのことともいう。

利用

春先の若い芽先や若葉、茎の先端の柔らかい部分、若いサヤは食用することができる[6][4]。採取時期は西日本が3 - 4月、関東・中部地方が4月、東北地方以北では4 - 5月ごろが適期とされる[6]灰汁は弱いほうで、さっと茹でてお浸し和え物、卵とじ、汁の実、炒め物にしたり、生のまま天ぷらにする[6][4]。熟す前の若いサヤは筋を取って、天ぷらやバター炒めなどサヤエンドウのように使う[6][4]

また、未熟な果実の両端を切り落とし、草笛にすることができる。


  1. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Vicia sativa L. subsp. nigra (L.) Ehrh. ヤハズエンドウ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年4月8日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Vicia angustifolia L. var. segetalis (Thuill.) W.D.J.Koch ヤハズエンドウ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年4月8日閲覧。
  3. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Vicia angustifolia L. ヤハズエンドウ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年4月8日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m 金田初代 2010, p. 15.
  5. ^ カラスノエンドウ|日本の季節を楽しむ暮らし 暦生活”. 日本の季節を楽しむ暮らし 暦生活. カラスノエンドウ. 新日本カレンダー. 2024年5月16日閲覧。 “さやの端をちぎり、豆を取り除きます。空になったさやを再び合わせ、一端をくわえて空気を吹き込むと、「シービービー」「ピーピー」という大きい音が響きます。少しコツが要りますが、昔の子どもたちは誰でも吹けたそうです。そのため別名は「シービービー」「ピーピー豆」。”
  6. ^ a b c d e f g h i j k 高橋秀男監修 2003, p. 35.
  7. ^ 亀田龍吉 2019, p. 12.
  8. ^ 亀田龍吉 2019, p. 13.


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