ハモ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/25 13:28 UTC 版)
ハモ | |||||||||||||||||||||||||||
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ハモ
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分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Muraenesox cinereus (Forsskål, 1775) | |||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||
ハモ(鱧) | |||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||
Dagger-tooth pike conger Conger pike |
概要
沿岸部に生息する大型肉食魚で、京料理に欠かせない食材として扱われる。生鮮魚介類として流通する際には近縁種のスズハモ M. bagio (Hamilton, 1822) も一般に「ハモ」と称されており区別されていない[1]。
名称
名前の由来には、食む(はむ)に由来するとみる説、「歯持ち」に由来するとみる説、中国語の「海鰻」(ハイマン)に由来するとみる説、マムシに姿が似ていたことから蝮(ハミ)に由来するとみる説、食感が「はもはも」しているから、という説、口を張ってもがくことに由来するとみる説など諸説ある[2]。中国語由来説については、中国では海鰻と称して食されているものの可能性が低いとする説もある。
地方名にハム(広島県)、スズ(徳島県)、バッタモ(京都府丹後地方)、ウニハモ(福井県)、カマスアナゴ(長崎県)など。
他の魚
北海道・東北地域ではアナゴ類もしくはマアナゴのことをハモあるいはハモの古語であるハムと呼ぶ地域が広域に存在する[3][4]。
現代中国語でハモは「海鰻」(hǎimán)といい、「鱧」(lǐ)という漢字はライギョ類を表す。
生態
- 全長1mほどのものが多いが、最大2.2mに達する。体は他のウナギ目魚類同様に細長い円筒形で、体色は茶褐色で腹部は白く、体表に鱗がない。体側には側線がよく発達し、肛門は体の中央付近にある。ウナギ目の中では各ひれがよく発達していて、背びれは鰓蓋の直後、尻びれは体の中央付近から始まって尾びれと連続する。胸びれも比較的大きい。
- 口は目の後ろまで裂け、吻部が長く発達し、鼻先がわずかに湾曲する。顎には犬歯のような鋭い歯が並び、さらにその内側にも細かい歯が並ぶ。漁獲した際には大きな口と鋭い歯で咬みついてくるので、生体の取り扱いには充分な注意が必要である。ハモという和名も、前述のようによく咬みつくことから「食む」(はむ)が変化した呼称という説もある。
- 西太平洋とインド洋の熱帯・温帯域に広く分布し、日本でも本州中部以南で見られる。
- 水深100mまでの沿岸域に生息し、昼は砂や岩の隙間に潜って休み、夜に海底近くを泳ぎ回って獲物を探す。食性は肉食性で小魚、甲殻類、頭足類などを捕食する。
- 産卵期は夏で、浮遊卵を産卵するが、ウナギのような大規模な回遊はせず、沿岸域に留まったまま繁殖行動を行う。レプトケファルスは秋にみられ、シラス漁などで混獲されることがある。
利用
ウナギ目の他の魚同様、血液に有毒なイクシオトキシンを含むが、加熱によりそれを失活させて食べることができる。消費地域には偏りがある。
- 京都市では、生活に密着した食材で、スーパーにおいても鱧の湯引きなどは広く販売されており、安くはなくとも、季節の食材として扱われている。特に祇園祭の暑い季節に長いものを食べると精力が付くとして、鰻同様に食べる風習があり(下記)、夏の味覚の代表的なものとして珍重される。家庭で「骨切り」をすることは難しいが、鮮魚店で骨切りをして、生で売ることも普通である。
- 大阪市の天神祭でも鱧料理は欠かせない。
- 京阪以外の地域では、味は良いが骨が多く食べにくい雑魚として扱われ、蒲鉾や天ぷらの材料として使われてきた。特に大阪などの蒲鉾屋では身を使った後のハモの皮が売られていることがある。
- 一方、関東など東日本では京料理を提供する高級日本料理店以外ではあまり目にかかることはなく、生活に密着した食材とは言えない[5]。このような店で出される食材のため、高級魚というイメージもある。消費量も関東の鱧消費量は関西の十分の一程度であり、関西と関東の文化の違いが現在に至るまで如実に現れている食材の一つである。同様の食材としてはフグ・クエ、逆に東日本で人気の高い高級魚としてはアンコウやマグロなどがあげられる。
- 大分県中津市でも特産品としてよく消費されており、JR中津駅には鱧をデザインした長いベンチも置かれている。
- 京都において、何故ハモを食べる文化が発達したかについては、生命力の非常に強い数少ない魚であるため、輸送技術が発達していなかった時代でも、大阪湾や明石海峡で採れたハモを、夏に内陸の京都まで生きたまま輸送できたからだといわれている。
- また、一説には養蚕が盛んで京都へ絹糸を供給していた大分県中津市の行商人などが京都へ食文化を伝えたとも、一説には中津藩が隣接する天領日田に招聘されていた京の料理人が往来の途中に隣国中津の漁師から「骨切り」の技術共々を教えられ持ち帰ったとも言われており骨切り技術の発祥地である中津の料理人が伝え現在につながっている。
- ハモの蒲焼は、よくウナギの蒲焼と対比される。需要があるため、日本産だけでなく韓国や中国などから輸入も行われている。
- 中国ではハモは生命力が強く、薬膳的な効能としても益気作用~“気”のエネルギーを高めるとともに胃腸機能を良くする作用があるとされるほか、利尿作用もあるとされている[6]。
- ^ “魚介類の名称表示等について(別表1)”. 水産庁. 2013年7月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年5月29日閲覧。
- ^ 日本おさかな雑学研究会 『頭がよくなる おさかな雑学大事典』 p.73-74 幻冬舎文庫 2002年
- ^ 白井翔平 監修 太平洋資源開発研究所編 全国方言集覧 【動植物標準和名⇨方言名検索大辞典】 【第一期】東北/北海道編 [上巻][下巻]生物情報社(直販)2001年
- ^ 馬渕和夫 編著 古写本和名類聚抄集成 第三部 勉誠出版株式会社 2008年 635-6頁
- ^ 小津安二郎監督の1962年映画『秋刀魚の味』は川崎市の話だが、恩師の佐久間(東野英治郎)が教え子の宴会に呼ばれる。
「美味しい美味しい。こんな美味いものは、生まれてこのかた食ったことがありません。これは、なんというものですかいの?」教え子の一人が、「先生、それは、ハモです」すると先生、「ハム?」「いや、ハムじゃなくハモ」「アア、ハモ——なるほど、結構なもんですなア。ウーム、鱧か・・・。サカナ偏にユタカ・・・」…と先生、納得した様子。酔いつぶれて畳に臥している先生をみた教え子の一人が「ヒョータン(先生のあだ名)、ハモの字は知っていても、食ったことがねえんだぜ」と知識だけの教師を皮肉っている。
- ^ 食・漢方薬・健康のブログ
- ^ a b c d 岡嶋(2014)、p.70
- ^ 一般社団法人漁業情報サービスセンター. “漁港別品目別上場水揚量・卸売価格”. 産地水産物流通調査. 水産庁. 2015年11月19日閲覧。
- ^ 「祇園祭」良くある質問から
- >> 「ハモ」を含む用語の索引
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