ツツジ ツツジの概要

ツツジ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/23 01:28 UTC 版)

ツツジ
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : キク類 asterids
: ツツジ目 Ericales
: ツツジ科 Ericaceae
: ツツジ属 Rhododendron
学名
Rhododendron L.
タイプ種
Rhododendron ferrugineum L. [1]
和名
ツツジ(躑躅) - ツツジ属(躑躅属)
英名
Azalea
亜属

本文参照

主にアジアに広く分布し、ネパールでは国花となっている。また、練馬区など一部の市区町村でもシンボルにされている場所もある。日本ではツツジ属の中に含まれるツツジやサツキシャクナゲを分けて呼ぶ慣習があるが、学術的な分類とは異なる。最も樹齢の古い古木は、800年を超え1,000年に及ぶと推定される。季語は春。サツキは夏。

特徴

ネパールのツツジの森
米国ワシントン州のツツジ
米国ブルーリッジ山脈のツツジ
ミヤマキリシマ

ツツジ属の植物は低木から高木で、常緑または落葉性互生、果実は蒴果である。4月の春先から6月の初夏にかけて漏斗型の特徴的な形の花(先端が五裂している)を数個、枝先につける。また合弁花類である。

ツツジは「躑躅」と書くが、「見る人が足を止めるほど美しい」という言われに由来する。[要検証]「躑」と「躅」はいずれも、たちどまる、たたずむ、の意である。

ツツジ属の花の花弁には斑点状の模様が多く見られる。これは蜜標(ガイドマークとも)で蜜を求める昆虫に蜜のありかを示している模様であることがよく知られている。蜜標によって花に潜り込む昆虫による受粉ができるように雄蕊がついており、雌蕊の柱頭は蜜標のある方に曲がっている。

人間でも花を上手に採ると花片の下から蜜を吸うことができるが、多くの種に致死性になりうる毒成分のグラヤノトキシンなどが含まれ、特に多く含むレンゲツツジは庭木として利用されることもあるので注意しなければならない。中毒症状としては、嘔吐、痙攣、下痢などを起こす[2]
園芸用として交雑種が多く安全な種との見分けは、専門家でもないかぎり不可能で、児童などが中毒を起こす報告がされている。交雑種が多く毒の含有量も様々であるが、ネジキの場合、牛は体重の1%の摂取で死ぬ[3]

ツツジ属 Rhododendron

白色のツツジ
ピンクのツツジ
赤色のツツジ
野生のツツジ(コバノミツバツツジ)

ツツジ属Rhododendron)はツツジ科最大の属で、800種あまりが含まれている[4]。大きくヒカゲツツジ亜属(有鱗片シャクナゲ亜属)とツツジ亜属、無鱗片シャクナゲ亜属、セイシカ亜属、エゾツツジ亜属に分類されるが、便宜上常緑性のものの一部がシャクナゲと呼ばれている。すなわち、日本で「シャクナゲ」と呼ばれるものはシホンシャクナゲの仲間(無鱗片シャクナゲ節)に限られ、常緑であってもそれ以外の殆どは「シャクナゲ」とは呼ばない。日本でツツジとシャクナゲを区別して呼ぶように、英語ではツツジを Azalea(アザレア)、シャクナゲを Rhododendron(ロードデンドロン)と呼んで区別する[4]

ツツジはごく一般的な庭木の一つで[4]、日本では古くから園芸品種として交配され美しい品種がたくさん生まれた。中でもサタツツジヤマツツジミヤマキリシマなどをかけ合わせて生まれたクルメツツジはその代表で種類も多く色とりどりの花が咲き、満開の時期はまさに圧巻である。ヒラドツツジも日本全国でよく見られる大型のツツジで、花も大きく街路樹としてもたくさん植栽されていて、ケラマツツジやモチツツジ、キシツツジなどを親としている。 サツキとマルバサツキおよびその交配種は特にサツキと呼ばれているが、クルメツツジなどと同じく常緑ツツジの仲間である。

西洋ではアジアからヨーロッパに常緑のツツジが持ち込まれて園芸化され、ベルジアン・アザレアと呼ばれ現在鉢花として大量に生産されている。トウヤマツツジを主に、ケラマツツジやサツキの品種などもその育種に用いられている。また日本のレンゲツツジや北アメリカの落葉性の原種が園芸化されてエクスバリー・アザレアあるいは匂いツツジなどと呼ばれている。北アメリカ大陸には、その地域に古くから自生する北米ツツジ(アザレア)も生息している。

自然種も多いが、栽培品種も極めて多い[4]。以下にツツジ属の日本産の種を挙げる。種名の横に併記した斜体文字は学名を示す。属名「Rhododendron」とは、rhodon(バラ)+dendron(樹木)の意である。複数の種が環境省と都道府県によりレッドリストの指定を受けている[5]

ヒカゲツツジ亜属 subg. Rhododendron

ヒカゲツツジ節 sect. Rhododendron

ゲンカイツツジ

イソツツジ節 sect. Pogonanthum

  • イソツツジ Rhododendron tomentosum
  • カラフトイソツツジ Rhododendron diversipilosum

ビレア節 sect. Vireya

東南アジアやニューギニアなどの熱帯地方に産するもので、マレーシア・シャクナゲとも言われる。日本産のものは知られていない。

ビレア節、ディスコビレア節 sect. Discovireya、シュードビレア節 sect. Pseudovireya を分けることもある。

シャクナゲ亜属 subg. Hymenanthes

シャクナゲ節 sect. Pontica

レンゲツツジ亜属 subg. Pentanthera

レンゲツツジ節 sect. Pentanthera

シロヤシオ節 sect. Sciadorhodion

アカヤシオ

オオバツツジ節 sect. Viscidula

ヨウラクツツジ節 sect. Menziesia

ツツジ亜属 subg. Tsutsusi

ヤマツツジ節 sect. Tsutsusi

コメツツジ列
ハコネコメツツジ列
  • ハコネコメツツジ Rhododendron tsusiophyllum
モチツツジ列
  • モチツツジ Rhododendron macrosepalum
  • キシツツジ Rhododendron ripense
  • チョウセンヤマツツジ Rhododendron yedoense
  • ケラマツツジ Rhododendron scabrum
  • ヤクシマヤマツツジ Rhododendron yakuinsulare
  • サキシマツツジ Rhododendron amanoi
  • ムニンツツジ Rhododendron boniense
サツキ列
  • サツキ(サツキツツジ) Rhododendron indicum
  • マルバサツキ Rhododendron eriocarpum
  • センカクツツジ Rhododendron tawadae
ウンゼンツツジ列
ヤマツツジ列
ヤマツツジ
フジツツジ
  • フジツツジ Rhododendron tosaense
  • トウヤマツツジ Rhododendron simsii
  • ミヤマキリシマ Rhododendron kiusianum
  • アシタカツツジ Rhododendron komiyamae
  • テリハヤマツツジ Rhododendron lusidusculum

ミツバツツジ節 sect. Brachycalyx

サクラツツジ列
サクラツツジ
  • サクラツツジ Rhododendron tashiroi
オンツツジ列
オンツツジ
  • オンツツジ Rhododendron weyrichii
  • アマギツツジ Rhododendron amagianum
  • ジングウツツジ Rhododendron sanctum
ミツバツツジ列
  • ミツバツツジ Rhododendron dilatatum
    • ヒダカミツバツツジ Rhododendron dilatatum var. boreale
    • トサノミツバツツジ Rhododendron dilatatum var. decandrum
    • ハヤトミツバツツジ Rhododendron dilatatum var. satsumense
タカクマミツバツツジ列
  • タカクマミツバツツジ Rhododendron viscistylum
ヒュウガミツバツツジ
  • ヒュウガミツバツツジ Rhododendron hyugaense
  • アマクサミツバツツジ Rhododendron amakusaense
  • ウラジロミツバツツジ Rhododendron osuzuyamense
サイゴクミツバツツジ列
サイゴクミツバツツジ
トウゴクツバツツジ列
トウゴクミツバツツジ
コバノミツバツツジ列
コバノミツバツツジ
(兵庫県篠山盆地雲海、盃ヶ岳)
キヨスミミツバツツジ列
キヨスミミツバツツジ

交雑種

  • コウヅシマヤマツツジ Rhododendron × koudzumontanum
  • キリシマツツジ Rhododendron × obtusum var. obtusum
  • クルメツツジ Rhododendron × obtusum var. sakamotoi
  • リュウキュウツツジ Rhododendron × mucronatum
  • ヒラドツツジ Rhododendron × pulchrum
    ケラマツツジにモチツツジ、キシツツジ、リュウキュウツツジが交雑してできた。オオムラサキが多く見られる。

トキワバイカツツジ亜属 subg. Azaleastrum

トキワバイカツツジ節 sect. Azaleastrum

  • トキワバイカツツジ Rhododendron uwaense

セイシカ節 sect. Choniastrum

バイカツツジ亜属 subg. Mumeazalea

エゾツツジ亜属 subg. Therorhodion

独立したエゾツツジ属 Therorhodion に分類される場合が多い。


  1. ^ Rhododendron Tropicos
  2. ^ 自然毒のリスクプロファイル:高等植物:シャクナゲ類厚生労働省
  3. ^ 雑草・鳥獣害防止対策農林水産省
  4. ^ a b c d 辻井達一『続・日本の樹木』中央公論新社〈中公新書〉、2006年2月25日、164頁。ISBN 4-12-101834-6 
  5. ^ 日本のレッドデータ検索システム「Rhododendron」”. (エンビジョン環境保全事務局). 2013年4月21日閲覧。
  6. ^ 静岡県の花「ツツジ」制定経緯”. 静岡県 (1965年9月21日). 2013年4月21日閲覧。
  7. ^ 福岡県のシンボル”. 福岡県 (1966年9月5日). 2013年4月21日閲覧。
  8. ^ 『泊船集』より
  9. ^ 万葉集』より


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