はけ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/20 06:45 UTC 版)
地名・町丁名
「ハケ」およびその類音を含む地名は、旧地名や通称地名も含めれば全国に無数といってよいほど存在するが、一例を下に挙げる。多くの場所は崖地や河岸段丘等の近傍だが、なかにはほとんど高低差を感じられないような場所もある。他の語源によるものでないことが証明されているわけではない。
なお、以下に示す地名において「ハケ」等を含む箇所の多くは小字(こあざ。伝統的な地名の最小区分)に該当する小地名であるが、現在では小字が廃止されていたり、地番のみで到達できるため小字はほぼ無用となっているなどで、失われた地名となってしまっているケースも多い(詳細については小字を参照)。
- 青森県
- 岩手県
- 秋田県
- 山形県
- 福島県
- 茨城県
- 群馬県
- 埼玉県
県南の一部地域では、崖・崖線地形があるとも見えないなだらかな丘陵地帯に「ハケ」(〜バケ)の名が多く見られる。また、「𡋽」「坫」「岾」「屼」「山へんに爪(以下"◆"と表記)[注 6]」等の造字をあてているのも大きな特徴である。これらの字はいずれも稀少地名漢字などと通称されるもので、他で見ることはまずない。
- 川越市大字寺尾字𡋽(はけ) / 大字新宿字𡋽上・𡋽下 / 大字下赤坂字大𡋽(おおばけ)[11]
- 狭山市大字堀兼字𡋽下[11][注 7]
- 川越市大字砂久保字小坫(小岾)(こばけ)[11]
- 所沢市大字坂之下字岾(はけ) / 大字南永井字大岾(おおはけ)[11]
- 入間市大字宮寺字岾上 / 岾下 / 上岾下(かみはけした)[11]
- 所沢市大字北秋津字屼山(はけやま) / 同屼西久保 / 大字上安松字向屼(むこうはけ)[11]
- 赤ばっけ(所沢市 東所沢和田) - 柳瀬川沿いの崖地で、もとは赤土が露出していたとされる。旧地名は「所沢市大字下安松字赤◆[注 6]」[11]。通称地名としての「赤ばっけ」は今も使われることがある。
- ようばけ(秩父郡小鹿野町) - 赤平川沿いに地層が露出した崖で天然記念物に指定されている。
- ハケの坂(朝霞市浜崎) - 崖面を斜めに上る、なだらかで長い坂道。宅地化以前には坂上の眺望地に古墳があり、峡山(はけやま)古墳と呼ばれていた。
- 東京都
- 峡田領(はけたりょう) - 『新編武蔵風土記稿』等に見える広域管轄名で、その名の示すとおり荒川に沿った崖線下の農村地帯を中心として、現在の荒川区周辺および板橋区周辺の2地域に分かれて存在した。「峡田」の名は荒川区立の小学校名等に遺る。
- 北豊島郡滝野川村大字田端字峡附(はけつき)[5] - 旧地名。田端駅至近の崖面を中心とした一帯で、現在の北区東田端の一部にあたる[注 8]。なお、この崖は上野から赤羽まで直線状に連なる巨大な「日暮里崖線」の一部である。
- 八景坂(はっけいざか、大田区山王) - 大森駅西の坂道(池上通り)を指す通称地名。武蔵野台地と東の海岸低地が接する崖線にかかる位置にあり、広重の名所絵に見えるとおり、古くより崖の上下を結ぶ主要な坂道であった。なお、八景坂の名はいわゆる八景物に関連づけられることが多いが、「どう考えてみても八景一覧の地とは思われ」ず、この名はハッケまたはハケに対する「上品な当て字」であると柳田は指摘している[5]。
- 化坂(ばけざか、目黒区八雲) - 呑川駒沢支流の西岸にあたる坂道。
- バッケの坂(新宿区中落合〜中井)- 妙正寺川沿いの坂道で、現地標識に「この地域の斜面は古くからバッケと呼ばれており、この坂は坂下のバッケが原への近道であったため、バッケの坂と呼ばれていた」とある。
- 北多摩郡調布町大字布田小島分字波毛(はけ)[5][注 9] - 旧地名、現在の調布駅南西方の崖線上にあった集落名。
- 北多摩郡谷保村大字谷保字岨ノ下(はけのした)[5] - 旧地名、現在の中央道国立府中インターチェンジ西方。なお、ここから1kmほど西方の青柳崖線(立川崖線系に属する一崖線)下には「ママ下湧水」と呼ばれる湧水があり、同じ河岸段丘が「はけ」「まま」2つの名で呼ばれてきたことがうかがわれる[注 10]。
- 清瀬市大字清戸下宿字屼(はけ)[12] - 旧地名。現在のUR清瀬旭が丘団地のある崖線上の一帯[注 11]。所沢市内の屼山や赤◆[注 6]等(前述)と同じ柳瀬川沿いの一地域。
- 西多摩郡日の出町三吉野欠上 / 欠下(はけうえ / はけした) - 平井川南岸側河岸段丘の上と下。
- 赤禿(あかっぱげ、伊豆大島) - 赤みを帯びた溶岩でできたスコリア丘の残骸で、高さ20m超の海崖となっている。
- 神奈川県
以下はいずれも相模川の河岸段丘に関連している。
- 新潟県
- 長野県
- 高知県
- その他の県
注釈
- ^ ただし全てが完全に同じ意味というわけではない。たとえば「岨」は、川や湖等の水面に面してそびえる崖にのみ使われる語彙である。
- ^ 現在の盛岡市厨川(くりやがわ)。
- ^ 人名と推定される。一説に「郎」の書き落としとも。
- ^ a b 盛岡市雫石町八卦に比定し、「家」の字を補って「八卦の家」などとも訳されるが、柳田は「この頃の武家が諸処のハケを求めてこれを住宅としたと仮定すれば、その邸を直接に波気と呼んだと見ても不自然ではない」としている[5]。なお、雫石町八卦は南方を流れる雫石川に沿う河岸段丘上の地域であり、すぐ南で高さ10〜15mほどの崖を見下ろす形になっている。
- ^ 「景勝ポイントが8つある」ことによる命名とされているが、具体的な地点や名称については諸説あり判然としない。地形としては歴然たる崖線地形であり、元来「黒岩ハッケ」と呼ばれていたとしても何ら不思議ではない。
- ^ a b c やむを得ず「◆」で代用したが、漢字1字(山へんに爪)である。この字はUnicode上に定義のない稀少国字であり、PCやスマホでは画像以外の方法で表示することができない。
- ^ なお、同地にあるバス停は表記が「赫下」となっている。
- ^ また、やや上中里駅寄りには 大字中里字峡下 / 東峡上 / 西峡上 もあった。
- ^ 柳田は「峡上」として言及しているが、当時の地形図によれば「波毛」である。
- ^ もちろん同時期に両方の呼称で呼ばれていた保証はない。したがって「片方の名が廃れてのちもう一方の名が使われるようになった」といった可能性はある。
- ^ なお、区域内に架かる跨道橋は字体の異なる「岲橋」(はけばし)である。
- ^ 伝承によれば八景物にちなんだ命名とされている[14]が、「っ」の脱落や「水谷」という用字・読みは不自然。東京の「八景坂」同様、後づけで意味を求めたいわゆる民間語源の一種とみられる。今尾恵介によればこの「ハケ」は「崖下の湧水地」の意という[6]。
出典
- ^ 『広辞苑 第七版』「はけ」岩波書店。
- ^ a b 『精選版 日本国語大辞典』「はけ」小学館。
- ^ 山口、139ページ。
- ^ デジタル大辞泉『岨』 - コトバンク、2012年9月24日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i 柳田 303ページ(地名考説 42 八景坂)
- ^ a b c 今尾、61ページ。
- ^ 「「ハケ」は、「ガケ」ではない。まして「崖線」ではない」 コレジオ、2023年1月9日閲覧。
- ^ 小金井市史Ⅴ、19ページ。
- ^ 田中、160ページ。
- ^ 『縄文語の発掘』[要ページ番号]
- ^ a b c d e f g h 稀少地名漢字リスト「埼玉県」、2013年1月13日閲覧。
- ^ 稀少地名漢字リスト「東京都」。
- ^ a b このまちアーカイブス「神奈川県 相模原」 三井住友トラスト不動産、2013年1月21日閲覧。
- ^ 八景水谷公園 2022年12月27日閲覧。
- ^ まろん通信「小金井は縄文遺跡が多く有名です」 小金井市観光まちおこし協会、2023年1月16日閲覧。
- ^ a b こども府中はかせ12「府中の道」 府中市立図書館、2022年12月29日閲覧。
- ^ 「フィールドミュージアムガイド 赤塚公園」 赤塚公園サービスセンター、2023年1月29日閲覧。
はけと同じ種類の言葉
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