WTI価格の変動要因と性質
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/26 14:58 UTC 版)
「ウェスト・テキサス・インターミディエイト」の記事における「WTI価格の変動要因と性質」の解説
基本的に、WTIの価格はアメリカ国内の原油現物市場を反映したものである。過去には受け渡し拠点のクシンの地理的条件から原油の流通量に限界があり、価格が偏る事態が発生していたが、パイプラインの整備や輸入原油の導入などにより、国際価格を反映できるよう改善した。しかし、アメリカの価格を大きく反映する傾向は否めず、暖房用の精製油の消費量を左右する北米の冬の天候が暖かくなると価格が低下、寒くなると上昇する。また、メキシコ湾岸にハリケーンの被害が及ぶと石油精製施設の稼働率が下がるため、価格が上昇する。 もちろん、原油市場全体に一様に見られる、原油生産国の政情不安による価格変動もみられる。また、世界全体での資金の流れの動向にも影響を受けていると見られ、近年は金融市場や株式市場の低迷や不安定化により、WTIをはじめとした原油や金などの商品市場に資金が流入する傾向にある。 NYMEXでのWTIの取引が始まった当初は、専門の投資家による取引が多かったが、一般の個人投資家やヘッジファンドによる取引、インターネットを通した取引の割合が増加してきている。通常、取引の多くはスプレッド取引やアウトライトといった手法の取り引きが多いが、価格の変動が大きいときには投機的な取引が増える。 2000年代前半から、中華人民共和国やインドといった新興国の経済成長に伴い石油製品の需要が増加し、価格が一時高騰した。また、価格が初めて70ドル/バレルを突破した2005年ごろから、投機的な取引による暴騰が指摘されるようになった。暴騰の原因としては、価格高騰によって増えたオイルマネーのさらなる流入、バイオエタノールとの関連性などが考えられている。 また2010年以後はアメリカのカナダ重質原油輸入量が増えたためWTI価格が低く抑えられるようになり、北海ブレント先物価格の方が世界の石油相場を正しく反映しているとの声もある。国際的な指標となるのは、ブレント原油価格。アメリカの原油価格の指標とされるのは、ウェスト・テキサス・インターミディエートとの位置づけである(2014年現在)。 価格変動は、世界の経済活動と原油生産量に左右されるが、2020年には新型コロナウイルス感染症の流行が各国に拡大、極端な経済活動、人的移動が減退が生じた。このためWTI原油先物価格は同年1月の50ドル/バレル近辺から同年3月には20ドル/バレル近辺へと下落、さらに4月20日には、オクラホマ州クッシングの原油受け渡し場所の貯蔵施設が近々満杯になり、原油の現物保有者が原油保管費用を追加負担することになるとの予想を受けて5月渡しの先物価格が暴落。WTI史上初のマイナスを記録した。これはWTIの取引の事情によるもので、同日の北海ブレントの先物清算値は下落はしたものの25ドル/バレル台となっている。
※この「WTI価格の変動要因と性質」の解説は、「ウェスト・テキサス・インターミディエイト」の解説の一部です。
「WTI価格の変動要因と性質」を含む「ウェスト・テキサス・インターミディエイト」の記事については、「ウェスト・テキサス・インターミディエイト」の概要を参照ください。
- WTI価格の変動要因と性質のページへのリンク