VMC における波動関数の最適化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/09/04 03:12 UTC 版)
「変分モンテカルロ法」の記事における「VMC における波動関数の最適化」の解説
量子モンテカルロ計算においては、試行関数の質が非常に重要となってくる。そのため、波動関数をできる限り基底状態に近くなるよう最適化することが欠かせない。数値シミュレーションの分野において、関数最適化問題は非常に重要な研究課題である。量子モンテカルロ法では、多次元関数の最小化問題にまつわる通常の困難に加えて、コスト関数(通常はエネルギー)その微分(効率的な最適化のために必要となる)の推定に統計的ノイズが乗るという問題がある。 多体試行関数の最適化には、さまざまなコスト関数とさまざまな戦略が用いられる。量子モンテカルロ最適化においてよく用いられるのはエネルギー、分散、およびそれら二つの線形結合の最適化である。分散最適化法は、波動関数の厳密解の分散が既知である場合に有用である(波動関数の厳密解はハミルトニアンの固有関数であるから、局所エネルギーの分散はゼロである)。したがって、分散最適化は下限があり、正定値で、最低値が既知であるという点で理想的である。しかし、エネルギー最適化のほうが分散最適化よりもより効率的であることを複数の研究者が見い出している。 また、変分モンテカルロ法でも拡散モンテカルロ法でも通常は最低エネルギー状態が興味の対象であって、分散最低状態ではない。さらに、分散最適化は決定的なパラメータの最適化に多数回の反復を要しかつ多数存在する局所最適に囚われてしまう「偽収束」の問題がある。加えて、エネルギー最小化された波動関数は分散最小化された波動関数と比べて、平均的には他の物理量の期待値もより精度良く計算できる。 最適化戦略は3つのカテゴリーに分けられる。1つは相関サンプリングと決定的最適化法に基くものである。このアイデアは第1周期元素については非常に精度のよい結果をもたらすものの、パラメータが波動関数の節に影響する場合は問題が引き起こされ、さらに初期試行関数と現在の試行関数との間の密度比が系の規模に対して指数関数的に増大するという問題がある。2つ目の戦略はコスト関数およびその微分の評価に使うビンを、ノイズが無視できるほど大きくとり、その上で決定的手法を使う方法である。 3つ目のアプローチでは、ノイズ関数を直接扱うために反復的手法を用いる。この種類の手法の最初の例は、確率的勾配近似法 (SGA) である。この手法は構造最適化にも用いられる。近年、確率的再配置 (SR) 法と呼ばれるより進んだ高速なアプローチが提案されている。
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