MCCの形成
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/16 10:03 UTC 版)
「紡錘体チェックポイント」の記事における「MCCの形成」の解説
MCCはBub3と、Cdc20に結合したMad2、Mad3(BubR1)から構成される。Mad2とMad3はCdc20上の異なる部位に結合し、相乗的作用によってAPC/Cを阻害する。Bub3は、Mad3やBubR1のGLEBSモチーフと呼ばれるshort linear motifを介して結合を行う。MCCの形成のための結合の正確な順序はいまだ不明であるが、Mad2とCdc20が複合体を形成すると同時にBubR1、Bub3とCdc20も他の複合体を形成し、続いてこれら2つのサブ複合体が合体することでMCCが形成されている可能性がある。ヒト細胞では、BubR1のCdc20への結合に先立ってMad2がCdc20に結合している必要があり、そのためMad-Cdc20サブ複合体がMCC形成の開始因子として機能している可能性がある。BubR1を欠失してもMad2-Cdc20のレベルはわずかに低下するのみである一方で、Mad2はBubR1-Bub3がCdc20に結合するために必要である。しかしながら、BubR1はチェックポイントの活性化には必要である。 MCCの形成機構は明らかでなく、キネトコア依存的な形成と非依存的形成という競合する仮説が存在する。キネトコア非依存的形成を支持する証拠としては、キネトコアの組み立ての核となるタンパク質が変異した細胞やSACが不活性化された細胞でもMCCが検出されることが挙げられる。このことはMCCはキネトコアへの局在がなくとも有糸分裂期に組み立てられることを示唆している。あるモデルでは、前中期の未接着キネトコアは、機能的なSACを介してAPCをキネトコアへリクルートすることによって、APCのMCCによる阻害に対する感受性を高めているとされる。さらに、Mad2とBubR1の欠失はキネトコア非依存的に有糸分裂のタイミングに影響を与えるが、他のSACタンパク質の欠失は有糸分裂の持続期間に影響を与えることなくSACの機能不全を引き起こすことが明らかにされた。SACは、第一段階ではMad2とBubR1がキネトコア非依存的に有糸分裂の持続期間を制御し、第二段階では他のSACタンパク質と同様に未接着のキネトコアが存在する場合に延長を行うという、二段階のタイマーとして機能している可能性がある。 一方で、現在主力となっているモデルは「Mad2鋳型モデル」であり、これはMCCの形成がMad2のキネトコアでのダイナミクスに依存するモデルである。Mad1は未接着のキネトコアに局在し、Mad2と強く結合する。Mad2とBubR1のキネトコアへの局在は、オーロラBにも依存している可能性がある。オーロラBを持たない細胞は、染色体が微小管と接着していない場合でも中期での停止が起こらない。Mad2には開いたコンフォメーション(O-Mad2)と閉じたコンフォメーション(C-Mad2)が存在する。未接着のキネトコアはまず Mad1/C-Mad2/p31comet複合体を結合し、未解明の機構によってp31cometを放出する。残ったMad1/C-Mad2複合体はO-Mad2をキネトコアへリクルートする。O-Mad2はコンフォメーション変化を起こし、C-Mad2となってMad1と結合する。このMad1/C-Mad2複合体はキネトコアへのさらなるO-Mad2のリクルートを担い、O-Mad2はC-Mad2へのコンフォメーション変化を起こしてCdc20に結合するという自己増幅反応が行われる。Mad1とCdc20はどちらも類似したMad2結合モチーフを持っているため、Cdc20への結合時にはC-Mad2へのコンフォメーション変化が起こる。このポジティブフィードバックループはp31cometによって負に調節されている。p31cometはMad1やCdc20に結合したC-Mad2に対して競合的に結合し、O-Mad2がC-Mad2へさらに結合していくことを防ぐ。下等真核生物にはp31cometが存在しないことを考えると、他の制御機構も存在する可能性がある。「鋳型モデル」という名称は、Mad1/C-Mad2がC-Mad2/Cdc20の形成の鋳型として機能することに由来している。こうしたC-Mad2/Cdc20複合体形成によるCdc20の隔離がSACの維持には必要不可欠である。
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