IMRTの臨床応用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/10 20:04 UTC 版)
「強度変調放射線治療」の記事における「IMRTの臨床応用」の解説
上・中・下咽頭癌をはじめ、耳鼻咽喉科(頭頸部外科)で扱われる頭頸部領域の癌では、多くの症例で両側耳下腺への被曝を免れず、放射線治療後の唾液分泌低下は必発であり、口腔内乾燥により、しゃべりにくくなったり、嚥下がしにくくなったりとと日常生活に大きな影響を及ぼすことが知られていた。以前は、癌を根治するための代償だと覚悟を決めて諦めて頂くしかなかった有害事象が、IMRTにより、相当程度回避できるようになったことは、IMRTの哲学の具現化に他ならず、救命のために重要な機能を犠牲にするという、今となっては乱暴な論理へのアンチテーゼと考えられる。具体的には、耳下腺への被曝を大幅に低減し、治療後の唾液分泌低下を避け、種々の不具合を未然に防ぐことをする。耳下腺以外でも、従来では水晶体や視神経の被曝が避けられなかった症例で、IMRTによる被曝低減により晩期有害事象の白内障を避けられ、視力の温存が期待できる場合などがあり、生活の質に大きく関わる臓器が集中する頭頸部癌でIMRTが果たす役割は大きい。 また、前立腺癌では、治療にあたって81Gyといった高線量を前立腺と神経血管束に処方しつつ、直腸の高線量領域を少なくすることが可能で、局所制御率を高めつつ、晩期の直腸出血を低下させることができる。 そのほか、全身の多くの固形腫瘍に対してIMRTが試みられているが、IMRTでは低線量被曝の領域が広がることから、小児における照射後の成長障害や若年者では二次発がんの可能性が高まる可能性があることなど、今後解明していくべき課題も多く、低線量被曝を問題とした場合、理論上は陽子線治療を用いる方が良さそうだと考えられ、臨床研究が行なわれており、小児腫瘍では実際に陽子線治療が行なわれている。 IMRTは、腫瘍に対して高い放射線量を集中させ周囲の正常組織への影響を少なくし、放射線治療による有害事象を最小限に抑えるといった特殊な放射線治療技術であることは確かであるが、IMRTが常に最良の照射法であるという根拠はなく、状況によっては様々な観点から通常照射を選択する方がよい場合もあり得る。
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