E-B対応と E-H 対応の使い分け
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/24 18:30 UTC 版)
「E-B対応とE-H対応」の記事における「E-B対応と E-H 対応の使い分け」の解説
では、全ての磁場が電流起源であることが明らかになった現在でもなぜE-H 対応の電磁気学が生き残っているのだろうか。まず、E-H 対応は間違いかどうかを吟味しよう。現実の世界では、磁荷に相当する存在は磁電子のスピンから生じる(古典的に考えると)ループ電流である。このループ電流が周囲に張る磁場と、正負の磁荷が無限小の距離接近したと考える磁気双極子が作る磁場は全く区別が付かない。従って全ての問題においてE-B対応とE-H対応の電磁気学は同じ答を与えるため、両者は等価なものである。従って「間違いであるから」という立場でE-H対応を否定することはできない、と言うのが現在の古典電磁気学における大勢を占める意見である(これについては後述)。 E-H対応の電磁気学は、対称性の良さが特徴である。電磁気学の基本方程式であるMaxwellの方程式のうち電場、磁場の回転に関する2式は rot E = − ∂ B ∂ t rot H = j + ∂ D ∂ t {\displaystyle {\begin{aligned}\operatorname {rot} {\boldsymbol {E}}&=-{\frac {\partial {\boldsymbol {B}}}{\partial t}}\\\operatorname {rot} {\boldsymbol {H}}&={\boldsymbol {j}}+{\frac {\partial {\boldsymbol {D}}}{\partial t}}\end{aligned}}} と、EとHに対して対称である(上述のように、電流に対応する"磁流"はないものとする)。従って、静電場の理論を『電荷の存在→電場→静電ポテンシャル→電気双極子→誘電体』と展開するのと全く同じ方法論で静磁場の理論を『磁荷の存在(の仮定)→磁場→静磁ポテンシャル→磁気双極子→磁性体』と進めることができる。また、ここで登場した静磁ポテンシャルはスカラ量で、電流の存在しない、磁石と磁性体のみの系ならば磁場はスカラポテンシャルの勾配で表されることが示される。任意の系において磁荷の分布から磁場を知りたいような問題はこの考え方の方が「電流→ベクトルポテンシャル」より遙かに楽で実用的であり、磁性物性、磁気学の分野ではもっぱらE-H対応が主流である。 また、Maxwellの方程式から直接導かれる電磁波も、EとHが直接対応する量となり、例えばMKSA単位系の電場ベクトル ∼ S I {\displaystyle {\stackrel {SI}{\sim }}} V/mと磁場ベクトル ∼ S I {\displaystyle {\stackrel {SI}{\sim }}} A/mの外積は電磁波がエネルギーを運ぶ方向を向き、大きさが単位断面あたりのパワーを表すベクトル、すなわちポインティング・ベクトルとなり、次元もちょうどdim(W/m2)である。従って、E-H対応を明示的に謳っているわけではないが、電磁波物理やマイクロ波工学の教科書ではEとHを対応する二つの物理量として扱うのが普通である。
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