AB環の合成
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/01/13 15:02 UTC 版)
「ホルトンのタキソール全合成」の記事における「AB環の合成」の解説
まず転位反応を連続して行い、パチョレンオキシド 1 から6員環と8員環が縮環しているAB環を作る(式1)。t-ブチルリチウムが 1 の酸性な α-エポキシドプロトンを引き抜けば、エポキシドの開環脱離が起こり、アリルアルコール 2 が生成する (a)。同時に生成するアルケン部分を過酸化 t-ブチルとテトライソプロピルスズで酸化し、エポキシド 3 とする (b)。続く反応で、ルイス酸三フッ化ホウ素触媒によりエポキシ環を開き、イソプロピル部位の骨格転移と脱離を起こしてジオール 4 を得る (c)。新たに作られたヒドロキシ基は、クロロトリエチルシラン、ジメチルアミノピリジン (DMAP)、ピリジンとの反応でトリエチルシリルエーテル 5 として保護する (d)。再び生成したアルケン部分は MCPBA でエポキシ化する (e)。エポキシド 6 は不安定で、アルコール部分のケトンへの酸化に伴って C−C 結合の開裂が起こり、AB環を持つ 1.7 が出来る (f)。次の段階では、生成したケトン基を利用してC環に必要な炭素の追加を行う。7 のヒドロキシ基は t-ブチルジメチルシリル (TBS) エーテルとして保護しておく。リチウムジイソプロピルアミド (LDA) と臭素化メチルマグネシウムとの反応で 7 のケトン基を臭化マグネシウムエノラート 8 とし (g)、これをアルドール反応で 4-ペンタナールに付加させ、2級アルコール 9 とする (h)。この2級アルコールは、まずジクロロメタン中ホスゲンとピリジン、次いでエタノールを作用させることにより炭酸エステル 10 として保護する (i)。11 へのアシロイン基の導入はタキソールへと導かれるエナンチオマーを得るために立体選択的に行うが、LDA でエノラートを生成させ、これを (+)-カンファースルホニルオキサジリジンで酸化することにより達成する (j)。ケトン基を Red-Al で還元してアルコールとし、塩基で後処理を行うと炭酸エステルの転移とエタノールの脱離が起こり、環状炭酸エステル 12 が得られる (k)。
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