3次元的な低気圧モデル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/03 06:48 UTC 版)
「温帯低気圧」の記事における「3次元的な低気圧モデル」の解説
トラフでは等高度面において東側に暖気移流があり、西側には寒気移流がある。暖気移流の下では静水圧平衡の関係から気圧が減り、その低気圧に対しても同様のことが言えるので、上層の低気圧は西に傾くように下層に伝播し、低、トラフの東側の地上には低気圧ができる。これを傾圧不安定波という。トラフの東側やリッジの西側、ジェットストリークと呼ばれる上空の強風帯の上流の低緯度側、下流の高緯度側では傾度風と地衡風の風速の関係により気流が発散している。すなわち、気流の密度が減るので。これも低気圧の発達に寄与する。また、地表摩擦の影響を受け上昇気流が発生する。(スピンダウン効果) 有効位置エネルギーの一部は鉛直方向の循環による運動エネルギーに転化されるが、大気下層に明瞭な前線が無くても低気圧の発生によって新たに前線が発生することがよく知られているように、温帯低気圧にとってそのことは本質的ではない。温帯低気圧は有効位置エネルギーが水平の渦運動(傾圧不安定波)に転化されることにより高気圧とペアで発生し、寒冷前線や温暖前線はあくまでも摩擦収束によるフロントの強化で発生するものである。(前線強化過程を参照) 上空の気圧の谷の周りの気流と地上の低気圧の周りの気流が結びつく結果、低気圧の周りには主に3つの3次元的な空気の流れが存在する。1つ目は低気圧の南側から北東へ流れる湿った暖気の上昇気流であるウォームコンベアーベルト (Warm Conveyor Belt, WCB) である。2つ目は低気圧の北側の地上付近を東から西へ流れるコールドコンベアーベルト (CCB) である。3つ目は低気圧の西側から南東方向へ流れる乾いた寒気の下降気流であるドライイントルージョン(乾燥侵入)である。ウォームコンベアーベルトとコールドコンベアーベルトの境界面が温暖前線、ドライイントルージョンとウォームコンベアーベルトの境界面が寒冷前線にあたる。また、一般に前線を境に等圧線が折れ曲がる、これは寒気側が暖気側に比べて相対的に重く、高圧なためである。
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