2015年ギリシャ国民投票
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/11 08:47 UTC 版)
「ギリシャのユーロ圏離脱」の記事における「2015年ギリシャ国民投票」の解説
ギリシャ政府は2015年の6月30日までに約16億ユーロのローンをIMFに返済しなければならない。IMFや欧州連合は、ギリシャ政府に190億ユーロの金融支援をする交換条件として緊縮財政プログラムをギリシャに受け入れるよう要求している。ギリシャ政府側は、緊縮財政プログラムを免除するよう要求し続け、EUとギリシャとの交渉が継続している。IMFらが求める財政緊縮プログラムは、既に過去5年にわたって苦しんできているギリシャ国民にとって屈辱的なものであるとアレクシス・ツィプラスは述べた。 2015年1月の総選挙でSyrizaが反緊縮を掲げて選挙に勝ち、政権について以来、Syrizaのリーダーであるチプラス率いるギリシャ側とEU側の間で折衷案も含め難しい交渉が続いていた。チプラス政権は、EU側が要求する財政緊縮案をギリシャ側が受け入れるかどうかについての国民投票を2015年7月5日に開くことを決定した。この国民投票でYesに投票すればEU案を受け入れ、Noに投票すればEU案を拒絶することになる。Yesを選択すればEUから約155億ユーロの金融支援が受けられ、そのうちの18億ユーロは即座に使用できる。だがYesを選択した場合はEUがギリシャに求める緊縮財政政策を施行しなければならない。チプラス自身は、明確にNoに投票する。チプラスは、EUがギリシャに課そうとする財政緊縮プログラムを屈辱的なものと形容した。今回の国民投票では、終わり無き屈辱的な緊縮財政政策を受け入れるかどうかをギリシャの主権と尊厳をもって決めるのだとチプラスは述べた。アンゲラ・メルケルは、EU案は極めて寛大なオファーであると述べた。 チプラスがEUの緊縮案を国民投票に持ち込むと宣言した後、ギリシャを除くユーロ圏各国は怒り驚き、交渉を即座に中断した。その国民投票でNo側が勝利すればチプラスの影響力が強くなるだろうとチプラスは信じていた。だがユーロ圏首脳らの予測シナリオでは、資本規制でギリシャ国民の預金引き出し額に上限が課されればギリシャ国民とりわけ年金受給者が恐怖に陥り、最終的には国民投票でYes側が勝つというものだった。実際メルケルも、国民投票の結果を待ってギリシャとの交渉を再開するという姿勢であった。フランス財務大臣ミシェル・サピンは、もし国民投票でNoが勝利すればギリシャのユーロ圏離脱への大きなきっかけとなると述べた。イタリア首相マッテオ・レンツィは、その国民投票をユーロかドラクマかの選択だと述べた。 ギリシャは以前にも類似した交渉術をとったことがある。2011年のパパンドレウ政権において、金融支援案を国民投票にかけ、それに対してニコラ・サルコジがパパンドレウを狂人と呼んだ。アンゲラ・メルケルは、ゲオルギオス・アンドレアス・パパンドレウに向かってギリシャはユーロ圏に残りたいのかそうでないのかと問い詰めた。結局パパンドレウはドイツに屈し、しばらくして首相を辞任した。 2015年7月5日の国民投票の結果、投票者の約61.3%がNo側に、約38.7%がYes側に投票した。これでEU側がギリシャに求める緊縮財政施行を拒絶したことになり、No側に票を投じた有権者らはアテネで歓喜した。チプラスは、ギリシャ国民は欧州の民主主義と協調性のために投票したのだと述べ、国民投票翌日にギリシャがEUとの交渉を再開し、ギリシャの金融安定を再構築することが最優先だと語った 。 ギリシャ議会の野党らはその国民投票の意義が不明確だと不満を述べた。ギリシャ元首相アントニス・サマラスは、国民投票でYes側に投票するよう訴えていたが、国民投票の結果をうけて新民主主義党の代表を辞任した。EU高官は、その国民投票は既にEU側との交渉のテーブルに乗っていない事案について適用されるものであったと指摘した。 ギリシャへの対応をめぐり強硬路線を崩さないドイツに対し、フランスはギリシャ国民投票の後にやや柔軟路線に切り替えた 。フランスの経済財政産業大臣をつとめるエマニュエル・マクロンは、ヴェルサイユ条約を再現するべきではないと述べ、ピケティに同調した。ギリシャ国民投票の結果をうけ、ドイツ副首相ジグマール・ガブリエルは、ツィプラスがギリシャと欧州との最後の架け橋を壊したと述べた。
※この「2015年ギリシャ国民投票」の解説は、「ギリシャのユーロ圏離脱」の解説の一部です。
「2015年ギリシャ国民投票」を含む「ギリシャのユーロ圏離脱」の記事については、「ギリシャのユーロ圏離脱」の概要を参照ください。
Weblioに収録されているすべての辞書から2015年ギリシャ国民投票を検索する場合は、下記のリンクをクリックしてください。

- 2015年ギリシャ国民投票のページへのリンク