2層艦
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 06:50 UTC 版)
二層甲板艦(英語: Two-decker)は3等艦に相当する。小型で操作性、経済性に秀でた2層艦は一貫して戦列艦の主流であった。 70門艦(3等) 最初期の2層艦の中では最大級の艦で、当初から多用された。しかし1680年代になるとより大きな2層80門艦が出現する。その後も寸法規定期間を通じて50門艦の次に多い戦列艦だったが、多くの艦が1740年代に改装を受けて砲を64門程度に減らし、70門艦は衰退した。 性能諸元(イギリス、1719年の寸法規定) 甲板長:151ft (46.0m) 全幅:41ft 6in (12.6m) 喫水:17ft 4in (5.3m) 武装:70門上砲列:12ポンド(5kg)砲26門 下砲列:24ポンド(11kg)砲26門 後甲板:6ポンド(3kg)砲14門 艦首楼:6ポンド(3kg)砲4門 60門艦(4等) 60門艦は50門艦と70門艦の中間的な艦種であり、両者に比べて数は少なかった。これらの艦もまた寸法規定廃止後に消滅した。 性能諸元(イギリス、1719年の寸法規定) 甲板長:144ft (43.9m) 全幅:39ft (11.9m) 喫水:16ft 5in (5.0m) 武装:60門上砲列:9ポンド(4kg)砲26門 下砲列:24ポンド(11kg)砲24門 後甲板:6ポンド(3kg)砲8門 艦首楼:6ポンド(3kg)砲2門 50門艦(4等) 50門艦は当初最も小型の戦列艦とされた艦種である。その簡便性ゆえに最も多用されていたが、18世紀後半になると大型化していく主力艦に対抗できなくなり、戦列艦として主要海軍国の海戦に参加することは少なくなった。しかしその後も戦列艦が活動できない浅海域、特にバルト海や北米沿岸での需要にこたえるために建造は続けられた。 性能諸元(イギリス、1719年の寸法規定) 甲板長:134ft 全幅:36ft (11.0m) 喫水:15ft 2in (4.6m) 武装:50門上砲列:9ポンド(4kg)砲22門 下砲列:18ポンド(8kg)砲22門 後甲板:6ポンド(3kg)砲4門 艦首楼:6ポンド(3kg)砲2門 64門艦(3等) 64門艦はより大きな2層艦の大口径化や、あるいは小型の3層艦の甲板数を減らすことで18世紀中盤に量産された艦種である。一時は74門艦とともに多用されたが、1770年代からフランス海軍が74門艦への統一を進めたため主要海軍国では建造されなくなった。なお、不要になった64門艦の一部はフリゲートに改装された。44門フリゲートとして知られているインディファティガブルも当初は64門艦であった。 性能諸元(エイジャ、イギリス、1764年) 甲板長:158ft (48m) 全幅:44ft 6in (13.6m) 喫水:18ft 10in (5.7m) 武装:64門上砲列:18ポンド(8kg)砲26門 下砲列:24ポンド(11kg)砲26門 後甲板:4ポンド(2kg)砲10門 艦首楼:9ポンド(4kg)砲2門 74門艦(3等) 詳細は「74門艦」を参照 74門艦は1740年代にフランスで生まれた艦種である。戦力と経済性のバランスが良かったため、約1世紀にわたり戦列艦の主流であった。上層に18ポンド砲を装備するのが一般的だが、24ポンド砲を配した大型74門艦も存在した。 性能諸元(コンケラン、フランス、1747年) 甲板長:55.1m 全幅:14.1m 喫水:6.8m 武装:74門上砲列:18ポンド(8kg)砲30門 下砲列:36ポンド(16kg)砲28門 その他:8ポンド(4kg)砲16門 80門艦(3等)2層80門艦はまず1680年ごろに70門艦の拡大型として生まれたが、すぐに80門艦は3層甲板が一般的になって衰退した。18世紀後半になると増加する74門艦に対抗してフランスが2層80門艦を導入したが、やはり主流とはならなかった。これはともに2層艦としては全長が大きすぎ、強度が不足するためである。しかしフランスは80門艦の建造を続け、やがて19世紀に入ると技術的な問題が解決されて80門以上の2層艦が増え始めた。 性能諸元(サン=エスプリ級戦列艦、フランス、1765年) 甲板長:59.8m 全幅:14.9m 喫水:7.5m 武装:80門上砲列:24ポンド(11kg)砲32門 下砲列:36ポンド(16kg)砲30門 その他:18ポンド(8kg)砲18門 ナポレオン戦争以降の2層艦は74門から98門まで徐々に大型化していった。
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