ギャンビットとは? わかりやすく解説

ギャンビット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 09:31 UTC 版)

ナビゲーションに移動 検索に移動

ギャンビット (Gambit) はチェスのオープニングにおける戦術の一つ。駒(通常はポーン1個)を先に損する代償に、駒の展開や陣形の優位を求めようとする定跡を言う。イタリア語の足(Gamba)の派生形が語源とされている。

概要

序盤でポーンを1つ(時には複数)相手にわざと取らせる事により、他の面での優位を得る。ポーンの捨て方にも種類があり、それぞれ名前が付いている。定跡化したものをギャンビットと言い、その場で考えたものは通常ギャンビットとは呼ばない。

ポーンを取らせる事で得る利点は、大まかには以下のうちの1つまたは複数である。

  • ポーンを取らせる事により、そのファイル(列)がオープンとなるため、開放度が上がり、駒の効率が上がる。例:ルークが敵陣を直接睨む事ができる。
  • そのポーンを取った駒を自然に取り返しに行く事により、駒の素早く有利な展開を図る 。
  • 相手の中央に近いポーンでより端に近いファイルの自分のポーンを取らせる事により、中央における勢力を相対的に強める。

多くの場合、ポーンを取った相手のポーンは伸びすぎているために守ることが難しく、結果として後に駒損は解消されることが多い。

カウンター・ギャンビット

白(先手)のギャンビットに対しては黒は、(1) Accepted:相手の手に乗る(ポーンを取る)、(2) Declined:あえて取らない、の2種類が考えられる。あえて取らない場合に、むしろ黒がポーンを差し出し、黒が逆にギャンビットを仕掛ける場合があり、これをカウンター・ギャンビットと言う。ただし広義には黒によるギャンビットすべてを指す。

種類

キングズ・ギャンビット

最も基本的な定跡の一つで、多くの場合は乱戦になる。fファイルをオープンにし、黒の最弱点であるf7をo-o(キング・サイド・キャスリング)なども利用して狙うのが古典的な指し方だったが、e4+d4で中央を固めて長期的な優位を狙う指し方もある。

1.e4 e5 2.f4

ここで黒がf4のポーンを取ると、激しい乱戦になる。2.... exf4 3.Nf3 Be7 4.Bc4 Nf6 5.e5 Ng4 6.o-o Nc6などが例の一つ。

2.... Bc5 3.Nf3 d6 4.Nc3 Nf6などと黒がポーンを取らないと(ディクラインド)、比較的穏やかな展開となる。

2.... d5 3.exd5 e4と逆に黒がdファイルのポーンを差し出すと、ファルクビア・カウンター・ギャンビットとなる。又、3.f×e5??は...Qh4+とされて白負けとなる。

4.Nc3 Nf6 5.Bc4 Bc5 6.Nge2 o-oなどが一例で、黒のみがキャスリングを行っており、白は現状では黒のビショップの利きでキャスリングできない。

クイーンズ・ギャンビット

比較的穏やかなギャンビット。c4で失ったポーンを白がビショップで手順に取り返すと、o-o(キング・サイド・キャスリング)につながり、損失が少ない。

1.d4 d5 2.c4が基本形で、非常に派生型が多い。いくつかは別の名前が付いている。

2.... dxc4 3.Nf3 Nf6がクイーンズ・ギャンビット・アクセプテッドの基本的な形。

2.... e6とポーンを取らないのがクイーンズ・ギャンビット・ディクラインド

2.... e5 3.dxe5 d4は対抗策の一つアルビン・カウンター・ギャンビット。黒がeファイルのポーンを差し出し、d4を得る。黒は0-0-0(クイーンサイド・キャスリング)を行ってから攻撃をかけたりするのが狙いであるが、現在では無理筋とされている。

2.... e6 3.Nc3 c5 4.cxd5 exd5 5.e4 dxe4 6.d5はマーシャル・ギャンビット。黒の対策の1つタラシュ・ディフェンスからの変化の一つ。黒がさらにeファイルでポーンを捨てることにより、d5を得る。

ダニッシュ・ギャンビット

ポーンを2個損した代償に素早い展開を狙う、非常にギャンビットらしい手。

1.e4 e5 2.d4 exd4 3.c3 dxc3 4.Bc4 cxb2 5.Bxb2

d、c、bファイルのポーンを連続して捨て、2ポーン損であるが、代償として3つのオープンファイルと駒の素早い展開を得ている。黒が初手からeファイルのポーンが無くなっただけで何も動いていないのに対し、白は中央にポーンを進め、早くもビショップが2つとも展開を完了している。所謂ブリッツ早指し)で使われることが多い。

スコッチ・ギャンビット

スコッチ・ゲームの1変化で[1]、ダニッシュ・ギャンビットに似た形。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.d4 exd4 4.Bc4

4.c3とする手もあり、そうなるとダニッシュ・ギャンビットにナイトを一手ずつ動かした形になる。

スミスモラ・ギャンビット

シシリアン・ディフェンスに対するギャンビットの一つ。

1.e4 c5 2.d4 cxd4 3.c3 dxc3 4.Nxc3

1ポーン損ながら、中央にポーンを進めナイトが展開し、他の駒も容易に展開できる白に対し、黒はcファイルを開いただけでまだ展開ができない。

ウィング・ギャンビット

シシリアン・ディフェンスに対するギャンビットの一つ。

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.b4 cxb4 4.d4

黒のcファイルのポーンをbファイルにそらし、その代償に中央を理想的なd4+e4の態勢で固める。中央を制した結果、白はよりピース(駒)の展開の速度や駒の効率が得られやすい。

エヴァンス・ギャンビット

非常に美しい典型的なギャンビット。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5

黒のビショップに一度bファイルのポーンを犠牲にして手を稼ぐのが目的。本来はここでo-oとしていたが、現在では先に4.b4が普通。以下、黒が取る場合は

4.... Bxb4 5.c3

ここで黒のビショップはBe7、Bc5、古い手ではBa5などがあるが、いずれにしろ6.d4として中央を制圧し、o-oの後、クイーンとビショップで黒の序盤の最弱点f7を狙う、Ba3などで黒のキングサイドをさらに狙う、Qb3からQxb7を狙う、などがある。

ラトヴィアン・ギャンビット

黒が主導権を握りにかかる、激しいギャンビット。

1.e4 e5 2.Nf3 f5

黒がfファイルのポーンを捨て、その代償に攻撃権を得る。

ブダペスト・ギャンビット

別名ブダペスト・ディフェンス。比較的マイナーなオープニング。黒は基本的にポーン損を取り返せる。

1.d4 Nf6 2.c4 e5 3.dxe5 Ng4

ここで白がポーンを守りに行くと

4.Bf4 Nc6 5.Nf3 Bb4+ 6.Nbd2 Qe7

などで黒が取り返すことができる。そこで守れないならば差し出す手もある。

4.e6として黒に応手を聞くのも有力な手。

エーニッシュ・ギャンビット

ルイ・ロペスの黒からの一変化。別名シュリーマン・ディフェンス[2]

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 f5

黒が一気に仕掛けることになる激しい変化が多い。特に4.e×f5 d5として黒はビショップの展開と センターの制圧を図る。

マーシャル・ギャンビット

ルイ・ロペスの黒からの一変化[3]。クイーンズ・ギャンビットの一変化である同名のオープニングとは別の定跡。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.o-o Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 o-o 8.c3 d5

同じくルイ・ロペスから変化してギャンビットするエーニッシュ・ギャンビットよりは穏やかな展開となる。

センター・カウンター・ギャンビット

別名センター・カウンター・ディフェンス

1.e4 d5

ギャンビットしたポーンを白が取らないで2.e5と指すとフレンチ・ディフェンスに変化することが多い。スコッチ・ゲームに似た展開にも派生しやすい[4]

チャイニーズ・ギャンビット

別名フレッド・ディフェンス。

1.e4 f5

対局者の間に棋力の差があり、なおかつ白番が弱いときに黒が仕掛けるギャンビット。所謂「遊び手」であり、実際は悪手とされている[5]

ベンコー・ギャンビット

別名ボルガ・ギャンビット。黒はポーンを1個損した代償にオープン・ファイルを作るギャンビット。比較的新しい定跡で、d4に対する有効手として研究されている。

1.d4 Nf6 2.c4 c5 3.d5 b5

黒はオープン・ファイルにルークを配置して白の攻撃に反撃する。

ブリュメンフェルト・ギャンビット

ベンコー・ギャンビットに似た形。

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nc3 c5 4.d5 b5

関連項目

参考文献

脚注・出典

[脚注の使い方]
  1. ^ 『定跡と戦い方』、41頁。
  2. ^ 『定跡と戦い方』、62頁。
  3. ^ 『定跡と戦い方』、67-68頁。
  4. ^ 『定跡と戦い方』、74頁。
  5. ^ 『ヒガシコウヘイのチェス入門』、161頁。
  6. ^ ISBNコードは新装版のもの。

ギャンビット (GAMBIT)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/09 16:46 UTC 版)

暗号名はBF」の記事における「ギャンビット (GAMBIT)」の解説

クリプト王家・王国頂点とするスパイ組織。団たちはここの極東支部要員であり「特務養成課エンブリオ / EMBRYO)」に所属する幹部スパイ候補生

※この「ギャンビット (GAMBIT)」の解説は、「暗号名はBF」の解説の一部です。
「ギャンビット (GAMBIT)」を含む「暗号名はBF」の記事については、「暗号名はBF」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「ギャンビット」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ギャンビット」の関連用語

ギャンビットのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ギャンビットのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのギャンビット (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの暗号名はBF (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS